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チャットモンチー 2017年3月26日 岡山CRAZYMAMA KINGDOM

チャットモンチー
2017年3月26日
岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が静かに落ち、それまでざわついていたオーディエンスが静まり返る。オープニングSEは今ツアー共通の、橋本さんが作成した音源だ。しばらくするとチャットモンチーの2人がステージへ。ギターやベースではなく、ステージ中央に向かい合うように設置されたシンセサイザーの前にそれぞれ座る。オーディエンス側から見て、橋本さんが右側、福岡さんが左側。

 1曲目は「レディナビゲーション」。僕自身は今回のツアーで何回も聴いているので慣れてきたが、音源とは全く違うサウンドとアレンジのため、オーディエンスからは緊張や戸惑いのような空気が伝わる。しかし1曲目が終わる頃には、それぞれが新しいチャットモンチーの楽しみ方を見つけ始めたのか、演奏が終わると大きな拍手。

 レディナビゲーション後には橋本さんが「皆さんこんばんは、チャットモンチーです! 岡山はねぇ、2年ぶりらしいです。こないだ2年前に来たときは、サポートメンバーと一緒に6人で来たんですけど、今日は2人だけでパソコンと一緒にやっていきたいと思います!」と挨拶。

 2曲目は「隣の女」。乙女団の編成時の楽曲で、オリジナルのアレンジでもピアノが使用されているが、シンセサイザーに置き換えられると、だいぶ印象が異なる。ピアノとシンセサイザーの違い以上に、打ち込みによるドラムが、リズム、サウンド共に質感を変えている。

 3曲目は「恋の煙」。この曲もオリジナル音源とは、印象が大きく異なる。音源では、歪んだギターと硬質な音のベース、正確なドラムが一体となった、音もアンサンブルもロックの魅力を絞り込んだような1曲だ。しかし、今ツアーのアレンジでは、打ち込みによる四つ打ちのドラムに2台のシンセサイザーが加わり、サウンドもリズムも、テクノポップと言った方が適切な仕上がり。オーディエンスからも最初は戸惑いが感じられたが、徐々に曲に合わせて緩やかに揺れ始める。

 「恋の煙」の後には、今度はトロピカルなイメージの、ノリのよいリズムが流れ始める。そのリズムをバックに、チャットモンチーの2人が話し始める。

福岡「じゃあ、ちょっとここでお祝い事をやりたいと思います。今日、誕生日当日っていう人いますか?」
(オーディエンスから、1人も手が上がらず)
福岡「いない! マジで!?」
橋本「こんなにおるのに? 650人ぐらい、おるんやて! ほんまにおらんのかな?」
福岡「ほんまかな? じゃあ、アラウンド3日以内。」
(オーディエンス数人から、手が上がる)
福岡「おぉおー、めっちゃおるやん!」
橋本「おった、おった!」
福岡「じゃあ今から誕生日の曲をやろうと思います。なので、サビのハッピーなバースデーって部分で、手を上げた人たちに拍手してもらえたらと思います。」

 以上の流れから、4曲目に披露されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。ここまで3曲のドラムはダンス・ミュージック然としたベース・ドラムが特徴的なサウンドとリズムだったが、この曲では音もリズムも軽やか。そんな打ち込みのリズムの上に、2人の弾くシンセサイザーがお互いに絡み合い、徐々にグルーヴ感が生まれる。アレンジもサウンドも音源とは違うが、やはり随所にチャットモンチーらしさがにじみ出てくる。

「バースデーケーキの上を歩いて帰った」のあとのMC。
福岡「みんな拍手のときの笑顔が素敵ですね。」
橋本(シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす。徐々に音が大きく、リズムが荒々しくなる。)
福岡「もしもーし!」
橋本「もしもし? 晃子殿?」
福岡「なんで急にアキバ系になったん?笑」
橋本「絵莉子君(えりこぎみ)ですけど。今なにしてる?」
福岡「今ねぇ、岡山で650人ぐらいと桃食べてるわ。」
橋本「えっ! そんなにいっぱい桃ある?」
福岡「あるんよ。桃太郎の桃って、1個がでかいやん? 人が入るぐらいやから。だから2個ぐらいで、650人分ぐらいあんねん。えっちゃんは何してるん?」
橋本「私は桃太郎の像の前で自撮りして、SNSにアップして、それから岡山駅のサンステのマクドナルドに並んでるんやけど。」
福岡「マジで? 私も昨日、そこ行ったわ(笑)」
橋本「暇やから、今からあっこちゃんのところ行っていい? 見せたいキジがおるんよ。」
福岡「それはちょっと見たいかも(笑) じゃあキジが来てもいいように、お菓子とか片づけとくわ。」
橋本「じゃあ、これからキジ連れて行くわ。」
(シンセサイザーで「チュンチュン」という感じの鳥の鳴き声を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣へ移動)
福岡「まだちっちゃいやつやん(笑) いらっしゃい。」
橋本「あっこちゃんの部屋は、ここにピアノがあって、ドラムがあって、またピアノがあって、ピアノの横にはパソコンがあって、見えん人もいると思うけど、すごいことになってるんよ!」
福岡「すごいやろ?笑」
橋本「音楽するか、寝るかやなぁ。」

 橋本さんが福岡さんの部屋に遊びに来たという設定で、5曲目は「ぜんぶカン」。ここまでは、ドラムが打ち込み、2人がセンセサイザーという担当だったが、この曲では福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザー。ベースラインも聞こえてきたので、これは打ち込みのようだ。イントロ部分などの一部で、橋本さんのシンセサイザーは一音を弾くと、アルペジエーターのようにフレーズが再生される設定のようだ。

「ぜんぶカン」のあとのMC。
(橋本さんが福岡さんの隣から、元の位置に戻る)
橋本「ああ、今度はあっこちゃん来んかなぁ。私の家に来んかなぁ。」
福岡 (シンセサイザーでワープ音のようなものを鳴らす)
橋本「なになにどういうこと? なんかデータだけで飛んできたってこと?」
福岡 (銃撃戦のように様々な銃声を鳴らす)
橋本「なんか悪い映画でも観てるみたい。めっちゃ撃ちあってるやん!」
福岡「めっちゃ『ウォーキング・デッド』観てんねん。今、『ウォーキング・デッド』観てて手が離せないけど、えっちゃん家いく約束してたなぁ。」
橋本「…うん、そういう流れやから。めっちゃ練習してきたやん、ここ(笑)」
福岡「じゃあ、ちょっとおしゃれして行くわ。」
(シンセサイザーで、ヒールで歩く音を鳴らし、福岡さんが橋本さんの隣に移動)
橋本「ヒールで来てる!」
福岡「えっちゃん家、意外と広いやん。」
橋本「そうやで。床は黄色ですよ!」
福岡「なんかコーヒーこぼした跡ない?」
橋本「ないよ!」
福岡「全体的に黄色いな。なんかいっつもこういう感じ(笑)」
橋本「余談が多いよな。」
福岡「言っていい? 整いました(笑)」

 6曲目は、ここまでのメカ体制とは打って変わって、アコースティックなアレンジで「余談」。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当。橋本さんはゆったりとしたストロークでコードを弾き、福岡さんはドラムも兼ねるような、ところどころアクセントの移動するベースラインを弾いていく。この曲では、打ち込みは使用されていないようだ。

 7曲目は引き続きアコースティックなアレンジで「CAT WALK」。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんは橋本さんの隣から元の位置に戻りシンセサイザー。シンセサイザーはピアノの音色に設定されている。また、ドラムとベースは打ち込んだものを同期しているようだ。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをエレキに持ち替え、福岡さんは引き続きシンセサイザー。打ち込みにより、ベースとドラムなど複数の音色の音が足されている。バスドラとベースのような低音が、沈み込むように会場内に響いていた。

「ほとんどチョコレート」のあとのMC。
福岡「メカットモンチーどうよ?」
(オーディエンスから「最高ー!」の声)
福岡「ありがとう! ごめんな、言わしたみたいで(笑) さっきえっちゃんも言ってたけど、前に来たときは6人編成で、サボートメンバーがすごく支えてくれました。サポートメンバー迎えるのは初めてだったし、すごくいろんなことを学びまして、それからもう1回ふたりだけでやってみたらどうなるかなって、純粋に興味があって、チャットモンチーからは想像できない、まさかの機械を入れてやるっていうのは、一番興味があったんですよ。それを、機械っぽいシングルを出すこともなく、急に機械仕掛けのツアーやるけん来てな!って言って、ようこんだけ集まってくれました。ありがとう!」
橋本「ほんまありがとうございます。めっちゃ嬉しい。」
福岡「目の粗いふるいから、目の細かいふるいまで、いくつもふるいにかけられて残ったダマたちが、ここに残ってるわけですね。」
橋本「ほんまに安心感が、すごいあるんですよね。」
福岡「えっちゃん、過去最高しゃべっとるよな。」
橋本「うん、なんかもうキャラクターとかどうでもいいかなっていう(笑) 楽屋からポンって出てきたみたいな。」

 9曲目は「変身」。まず、スペーシーなSEが流れ始め、福岡さんが「このスペーシーな音、これえっちゃんが作ったんですよ。ここからは生の楽器も足しつつ、やっていきたいと思いますんで、最後まで楽しんでってください!」と言ってから、演奏がスタート。橋本さんはエレキギター、福岡さんはドラムを担当し、ベースと一部のドラムは打ち込みで同期させているようだ。福岡さんの言葉どおり、橋本さんのギターは鋭く歪み、福岡さんのドラムは荒さを残しつつ強弱のある演奏のため、一気に生バンド感が増している。

 10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」と、橋本さんがエレキギター、福岡さんがドラム、ベースが打ち込みという編成のまま演奏が続く。この2曲は、ライブ序盤のメカ全開のアレンジに比べると音源のアレンジに近く、アルバム『変身』期の2ピースを彷彿とさせるもの。橋本さんの「次の曲は、岡山からそう遠くない徳島のことを歌った曲です。」という言葉から、12曲目に演奏されたのは「majority blues」。こちらも音源とほぼ同じアレンジ。

「majority blues」後のMC。
橋本「サンキューです。」
福岡「えっ?」
橋本「サンキューですって言ったの。…ちょっと空気こわしたかな?」
福岡「大丈夫、あの感じじゃないから大丈夫。サンキューで〜す!じゃないから大丈夫(笑) ほんまに楽屋と変わらんなぁ。」
橋本「そうなの。こんなツアー初めてかもしれん。」
福岡「昔、おらおらって感じでやってたときは、そういう気持ちで臨んでましたけど、今コーヒー飲めるもんな。」
橋本「全然! お味噌汁も飲めると思う!」
福岡「ていうぐらい、リラックスした気持ちで今回のツアー、回れてます。でもメカになったばっかりのときは、めちゃくちゃ緊張してまして、初めてのメカットモンチー披露のときに、2人で胃薬で乾杯しましたね(笑)」
橋本「したなぁ、出番の直前に。」
福岡「そんなチャットモンチーなんですが、4月5日に新しいシングルを出します! なんと、新曲なのにメカっぽくない(笑) また、生音で録りましたね。」

 福岡さんの紹介どおり、13曲目は4月5日発売の新曲「Magical Fiction」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。ギターレスのため、今までのチャットモンチーとは質感が異なるが、生演奏感、グルーヴ感が溢れる演奏だった。

 14曲目は「こころとあたま」から「湯気」へのメドレー。橋本さんは引き続きシンセサイザーを弾くが、「こころとあたま」のサビが終わり間奏になったところで、楽器をエレキギターに替え、「湯気」のイントロを弾き始める。荒々しさとタイトさの共存したチャットモンチーらしい演奏。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。橋本さんはギター、福岡さんはドラムで、ベースなどいくつかの音が打ち込みによって足されている。『変身』収録の音源に近いアレンジで、このときのツアーでの演奏に近い。Aメロ部分では、橋本さんのダンスも披露された。

 アンコールでは、手品風のBGMが流れるなか、背の高いハットと白手袋でマジシャンの扮した2人が、ハットから次々と今ツアーのグッズを出していく。無言のグッズ紹介ということだ。

 橋本さんの「アンコール1曲目はカバーをしたいと思います!」という言葉から、演奏されたのはGO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。橋本さんはギター、福岡さんはシンセサイザーで、ドラムは打ち込み。シンセサイザーの音色はピアノに設定されている。打ち込みのドラムも含めて、各楽器が絡み合ってグルーズ感が生まれていく演奏だった。

 アンコール2曲目、この日のラストは「シャングリラ」。橋本さんは引き続きギター、福岡さんはベースで、ドラムは打ち込み。イントロのバスドラの四つ打ち部分が音源よりも長く、ドラム以外にキーボードの音も打ち込みで足されている。しかし、基本的には音源に近いアレンジで、2人と機械だけでさすがのグルーヴ感を作っていた。オーディエンスも非常の盛り上がり、この日のライブが終了。帰り際に福岡さんが「また帰ってくるけん、遊びに来てな。次はどんな体制かわからんけど、岡山の人は来てくれると信じています! ありがとうございました!」と挨拶。

 3月9日の新潟から始まったツアーも6本目。演奏も雰囲気も成熟してきていて、すごいものを見せてもらっている、音楽が育っていく瞬間に立ち会えている、という感覚をあります。本当にすばらしいです、チャットモンチー!


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月26日
岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月24日 浜松窓枠

チャットモンチー
2017年3月24日
浜松 窓枠
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れ始める。たびたびメンバーがライブ中に言及しているが、このSEは橋本さん作成とのこと。メンバー2人はギターやドラムではなく、ステージ上に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーの前にそれぞれ座る。

 1曲目は「レディナビゲーション」。『YOU MORE』収録の音源では、イントロから歪んだギターのフレーズが印象的な曲だが、今回のツアーではシンセの柔らかい音色を使って、大胆にアレンジし直されている。

 「レディナビゲーション」終了後には、橋本さんが「皆さんこんばんは、チャットモンチーです。浜松に来たのは4年ぶり!…ぐらい。今日はメカで来たから、メカってパソコンと一緒に来たって意味なんですけど、メカットモンチーを楽しんでもらいたいなと思います。」と挨拶。

 2曲目は「隣の女」。音源ではピアノが大活躍している曲だが、同じ鍵盤楽器とはいえ、シンセ然としたフワッとした音色と、打ち込みによるビートを中心にアレンジが施されているため、やはり印象が大きく異なる。最初の2曲だけを聴いても感じるのは、まずサウンドを変えることで、知っている曲でも一種の異化作用が起こり、新鮮な気持ちで曲と向き合えるということだ。

 3曲目「恋の煙」。音源では鋭く歪むギターから始まるが、やはりそのフレーズもシンセサイザーに置き換えられている。ここまでの2曲と比べても、音源とのサウンドの違いを否が応でも感じる音作りだ。「恋の煙」が終わると、打ち込みによるドラムのリズムが流れ、そのリズムをバックに、チャットモンチーの2人が話し始める。

橋本「ありがとうございます。すごい、みんなノってくれてる。」
福岡「みんなすごい音楽レベル高いんちゃいますか。」
橋本「凄いよ、浜松。」
福岡「えーっと、ここ3日以内誕生日の人いますか?」
(オーディエンス数人から手が上がる。)
福岡「おー、おった! ちなみに当日の人?」
(1人のオーディエンスが手を上げる。)
福岡「おめでとう! 何歳ですか?」
手を上げたオーディエンス「24です!」
福岡「若い!」
橋本「(私たちと年齢が)10個も違う!」
福岡「じゃあ、その誕生日の人たちに向けて、今から誕生日の曲をやるので、サビのところでその人たちに向かって拍手してください。」

 この間、打ち込みのドラムは流れ続けている。そのまま2人がシンセサイザーを弾き始め、4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。ここまでの3曲と比べると、メカ要素によるサウンドの違いがそれほど気にならず、それよりもドラムの軽快で楽しげなリズムと、それに合わさるシンセサイザーが耳に残る。3曲を経て、サウンドにも慣れ、サウンド以外の要素にも注意が向き始めたということか。いずれにしても、音源と比べると、リズムやサウンドは変わっているのだが、この曲が持つハッピーな雰囲気は多分に含まれていた。

 「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後には、長めのMC。

橋本(シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす。途中から不安定なリズムと音程で鳴らす。)
福岡「なんか音程悪い電話が鳴ってる(笑) なんだろう、怖い怖い! 着信アリって出てる!」
橋本「もしもし、あっこちゃん?」
福岡「誰!?」
橋本「チャットモンチーのギターボーカルの橋本絵莉子やけど。」
福岡「ああ、えっちゃんね。ごめんごめん。」
橋本「今なにしてる?」
福岡「今ね、浜松で500人ぐらいとウナギ食べてる。」
橋本「超ウナギ必要やな。」
福岡「浜松の今日のウナギ、全部ここで食べてる(笑)」
橋本「私は浜名湖で釣りして、そのあと浜名湖パルパルに行って、マーメイドパラダイスに1人で乗ってるんやけど…」
福岡「ほとんどわからへん(笑) 浜名湖パルパルってなに?」
橋本「遊園地。1人だと暇やから、そっち行ってもいいかな?」
福岡「いいよ。」
橋本「すんごい飛ばして行くから、聞いてて。」
(シンセサイザーでスーパーカーが走る去る音を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣に移動)
福岡「おぉお~、めっちゃ低い車で来たな! エアロパーツ、バリバリのやつで来たな!」
橋本「一瞬で着いたわ。ここ、あっこちゃんの家っていう設定なんですけど。」
福岡「私の部屋どうですか?」
橋本「なんかギュッとしてる! ここしか居場所ない…」
福岡「悪口やん(笑)」
橋本「じゃあ、ちょっとラップして帰るわ。」

 橋本さんのこの言葉から、5曲目に演奏されたのは「ぜんぶカン」。福岡さんがシンセからドラムへ移動。ドラムが打ち込みではなく生演奏になり、4曲目「バースデーケーキの上を歩いて帰った」よりも生バンド感がさらに増す。

(橋本さんが、福岡さんの隣から元の位置に戻る)
橋本「あー…あっこちゃん来ないかなぁ。私の部屋に来ないかなぁ。」
福岡(シンセサイザーでヘリコプターのプロペラ音を鳴らす)
橋本「ヘリコプターで来てる…!」
福岡「今ちょっとコストコ行って、めっちゃでかいケーキ買ってきたから、持っていっていい?」
橋本「いいよ!」
福岡(シンセサイザーで、車がクラッシュしたような音を出す。)
橋本「!?…どうしたん?」
福岡「カークラッシュした(笑)」
橋本「(笑)」
福岡(シンセサイザーで、電車が走る音を鳴らし、今度は福岡さんが橋本さんの隣へ移動。)
橋本「いらっしゃい。」
福岡「お、けっこう広いやん。和室なんやね。」
橋本「和室が好きだから。やっぱ畳だよね。……畳にペンの汚れがついたときの落とし方、知ってる?」
福岡「!?…こわい、なんなん(笑) もう1回言って! こわい、今の全然予測できへん!笑」
橋本「ペンとか、ちょっとついた時の落としかた知ってる?」
福岡「知らん。どうやって、落とすの?」
橋本「歯磨き粉でこするの。」
福岡「えっ! マジで?」
(オーディエンスからも「へぇーー」の声)
福岡「意外と、えっ!ってなったけん、ちょっと悔しい(笑)」
橋本「でも、畳に歯磨き粉を出すの、めっちゃビビるやん? でも、だんだん楽しくなってくるから。」
福岡「どんだけ、汚してんねん(笑) じゃあ、えっちゃん家に掃除の話、聞きに来たについでに、フォークソングでもやるか。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、福岡さんのフォークソングでもやるか、という言葉通り、アコースティックなアレンジでの演奏。橋本さんはアコースティック・ギターを持ち、メカ要素は薄かった。それにしても、ここまで7曲のサウンドの振れ幅が広い。広いにも関わらず、違和感を感じさせずに、自分たちの音世界へオーディエンスを引き込んでいくチャットモンチーは本当に凄い。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをエレキに持ち替え、福岡さんはシンセサイザーを担当。ドラムなどいくつかの楽器は、打ち込んだものを同期しているようだ。このライブの時点ではまだ発売されていなかったが、2017年4月5日発売のシングル『Magical Fiction』に収録された音源と、ほぼ同じアレンジ。「ほとんどチョコレート」後には、ちょっと長めのMC。

橋本「どうですかメカ? 大丈夫ですか?」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「みんな、どんなライブするかも分からんのに、チケット買ってくれてほんまにありがとう!」
(オーディエンスから歓声と拍手)
橋本「すごい!」
福岡「すごいよな、嬉しいよな。チャットモンチーが機械を使うっていうのは、今までから考えると、まるっきり違うって思ってたでしょ? めっちゃ受験勉強なみに、勉強したっちゅうねん!笑」
橋本「すごいんだよ、あっこちゃん、本当に! 大学受かるだけある!」
(オーディエンスから拍手と笑い)
福岡「そう言われると、はずいな(笑) えっちゃんも、1週間ぐらい前に、command+A (コマンドA)覚えましたよ。覚えてる、command+A? 全部選択な。じゃあ、command+Cは何でしょう?」
橋本「シー!?……コピー!」
福岡「おぉーーー!!」
(オーディエンスから拍手と歓声)
福岡「去年までは、6人でやってたんですけど、またやったことない分野をやりたいという、私たちのいけない癖が出ましてね。今、こういう感じになってるんですが。えっちゃんと私とパソコン2台で、この音を作っているわけです。」
橋本「なにか踏んでみようか?」
福岡「じゃあ、踏んで!」
(橋本さんが足元のペダルを踏むと、宇宙空間を漂うようなスペーシーなSEが流れ始める。)
福岡「この音、えっちゃんが作ったんですけど、すごいよね、やっぱり宇宙と交信してるよね。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「好みが出るよな。」

 引き続き、橋本さんが作ったスペーシーなSEが流れるなか、9曲目に演奏されたのは「変身」。アルバム『変身』収録のアレンジではなく、シングル『こころとあたま/いたちごっこ』収録のgroup_inouによるGLIDER MIXをもとにしたアレンジで演奏された。担当楽器は、橋本さんがエレキギター、福岡さんがドラム。このあたりから、アルバム『変身』期の2ピースに近い、ハードなサウンドになっていく。

 10曲目「8cmのピンヒール」も、サウンド的にはメカ要素の感じられない、生々しくソリッドな音。11曲目「消えない星」は、ほぼ音源通りのアレンジとサウンドで、こちらも生バンド感の強い演奏だった。「消えない星」後には、橋本さんによる短めのMC。

橋本「今日はツアーの5ヶ所目なんですよ。だんだんツアーっぽくなってきたなって感じで。ステージにいる間が、一番元気だと思う。それがなんかツアーっぽいなぁ、と思っています。今日も4年ぶりやし、九州もまわってきたんですけど、9年ぶりの場所もあって、うそー?ってなって、こうやってまた来ることができて、嬉しいなぁと思いました。みんな、ありがとう。」

 このMCの内容から、やはりツアーを回るというのは、体力的にも大変なのだなと感じた。そして、橋本さんの誠実さも伝わり、オーディエンスも少し感傷的な雰囲気へ。そんな空気のなか12曲目に演奏されたのは「majority blues」。ほぼ音源通りのアレンジによる演奏。橋本さんのMCで、それまでの空気が少し変わったこともあり、空間に染み渡るように感じられる1曲だった。「majority blues」の後にも、少し長めのMC。

橋本「なんかタンバリンの位置が変になったみたい。」
福岡「タンバリンがくっついてきた。まさかの機械ではなく、アナログが(笑)」
(福岡さんがタンバリンを調整している間、橋本さんが話して場をつなぐ。)
橋本「浜名湖パルパルって有名?……行ってないんやけど。有名じゃないん?」
(オーディエンス数名から「有名」という声)
橋本「有名? ちょっとだけ? ちょっと、有名かぁ。」
(オーディエンスの1人から「餃子食べた?」の声)
橋本「食べてません! だって、昨日深夜0時に到着して、だからそのまま寝ましたよね。直った?」
福岡「(ハーモナイザーがかかっているのか、和音になった声で)うん、直った。声が直ってなかった(笑) これ、声も特殊なやつで、声に反応して勝手にハモってくれるっていう。凄いでしょ? 文明の利器!」
(このあと、福岡さんが簡単に機材の説明をする。)

 13曲目は「Magical Fiction」。このライブの時点では、まだ発売されていない新曲。今回のツアーを通じて、グルーヴ感が増して、演奏が向上していっているのがわかる。この曲では、福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザーを担当しているのだが、シンセサイザーもリズム楽器のように機能する演奏で、また新しい2ピースの可能性が感じられる。

 14曲目はメドレーのように「こころとあたま」と「湯気」を合わせた演奏。「こころとあたま」の間奏部分から、橋本さんがシンセからエレキ・ギターに楽器を替え「湯気」へ。その後、再び「こころとあたま」のアウトロ部分に戻るという構成。アレンジ的にもサウンド的にも、チャットモンチーのハードな部分が爆発する演奏だった。ただ単に過去のアレンジとサウンドをなぞるだけでなく、「こころとあたま」のイントロでは、シンセでギターにフランジャーをかけたような、ジェット気流のような音を出していて、音源とは違った方法でドライブ感を生んでいた。チャットモンチーには、こういうところのクリエイティビティにも本当に感心させられる。

 15曲目は「満月に吠えろ」。音源に近いアレンジで、以前と同じく橋本さんのダンスもあった。これで本編は終了。

 アンコールでは、まず手品のBGMのような曲が流れ始め、客電がつく。しばらくすると、マジシャン的なハットと白い手袋を身につけた橋本さんと福岡さんがステージへ。ハットから次々と今回のツアーグッズを出していく。これがグッズ紹介ということのようだ。

福岡「すごくない? こんな音も入ってるの! でもな、Sweet 80’sってタイトルやから、マジックの音ではないんやけど(笑)」
橋本「80年代ってこと?」
福岡「うん。ごめんな、なんか楽屋みたいな感じで(笑)」
橋本「でも、マジックがすごい流行ってたのって、わりとそのへんの時代じゃない?」
福岡「ハンドパワーの時代?」
橋本「ハンドパワーの時代。栗間太澄(くりまたすみ)です、って出てたころ! 90年代かな?」
福岡「知らない人は検索してみてください(笑)」
橋本「アンコール、ありがとうございます。」
福岡「アンコールしに来たのに、いきなり手品して、ごめんな(笑)」
橋本「じゃあ、私たちの尊敬するGO!GO!7188さんの瑠璃色という曲をやりたいと思います。」

 アンコール1曲目は、橋本さんからタイトルが告げられたとおり、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。橋本さんがギター、福岡さんがシンセサイザーで、ドラムは打ち込み。GO!GO!7188のオリジナル・バージョンはサビ前にテンポの切り替えもあり、勢いのある1曲だが、チャットモンチーのカバーは、それぞれの楽器が絡み合うようで、徐々にグルーヴ感が生まれていくアレンジ。もし音源化されたら、中毒性の高い、いわゆるスルメ曲のような1曲になるんじゃないかと思う。

 アンコール2曲目は「シャングリラ」。聴き慣れたバスドラのリズムが、打ち込みにより流れ始める。バックにバスドラの4つ打ちが流れるなか、福岡さんが「ほんまありがとう! ここに集まってくれた皆さんには、感謝してもしきれません。これからも、チャットモンチーのこと見守ってね!」と挨拶してから、ベースを弾き始める。その後、橋本さんのギターも入り、音源に比較的近いアレンジ。オーディエンスも今日一番と言っていいぐらいに盛り上がり、ライブが終了。

 ツアーも5本目。ライブでの機械との付き合い方もこなれてきて、演奏がどんどん向上していっているのが実感できるライブでした。本当にすごいライブバンドだ、チャットモンチー!


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月24日
浜松 窓枠
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月20日 鹿児島Caparvo Hall

チャットモンチー
2017年3月20日
鹿児島Caparvo Hall (キャパルボ・ホール)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻を少し過ぎると客電が落ち、今回のツアー共通のオープニングSEが流れ始める。ベースの音の上を、様々な効果音が飛び交うSEだ。しばらくすると照明がつき、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、今回のツアータイトルにある「秘密基地」を連想させるようなオブジェや造草が飾り付けられており、その中に2人組のバンドには多すぎるぐらいの楽器や機材がセッティングされている。ステージ中央付近には2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されており、オーディエンスから見て右側に橋本さん、左側に福岡さんが座り、ライブがスタート。

 1曲目は「レディナビゲーション」。前述のとおり、2人ともギターとベースではなく、シンセサイザーを演奏。しかも、シンセサイザー然とした、いかにも電子音らしい音色が選択されている。現代的な「バキバキ」と形容されるような音ではなく、どちらかというと「ピコピコ」と言った方がよさそうな音だ。ドラムは、シーケンサーに打ち込んだものをPCから流しているようで、こちらの音質も生音らしい音ではなく、電子音らしい音が選択されている。CDに収録されている音源とは、音の耳障りが大幅に異なるため、オーディエンスも少なからず困惑しているように感じる。曲が終わると、橋本さんが「かごんまの皆さんこんばんは、チャットモンチーでごわす! ごわす、ごわす!」と挨拶。場の空気が一気に和む。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」と、その後の2曲も元々のアレンジからは一変して、シンセサイザーをフューチャーしたアレンジになっている。特に「恋の煙」は、イントロの鋭いサウンドのギターを、シンセサイザーでなぞっているため、元のアレンジとの違いが特に際立っていた。

 4曲目「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の前には、福岡さんが「ここ3日以内が誕生日の人いますか?」とオーディエンスに問いかけ、数人の手が上がる。サビのところで、その人たちに向かって拍手をしてください、という説明をしてから、演奏がスタート。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後にはちょっと長めのMC。

橋本(シンセで何種類かの電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「もしもし、福岡です。」
橋本「(なまった感じで) もしもし、あっこちゃん?」
福岡「(笑) (橋本さんと同じくなまった感じで) えっちゃん、どしたの?」
橋本「今、なにしてる?」
福岡「薩摩剣士隼人、観てる。」
(オーディエンスから拍手と笑い)
橋本「たぎってる?…たぎってる?」
福岡「たぎってる(笑) たぎる薩摩の風が吹く! えっちゃんは今どこ?」
橋本「鹿児島水族館でね、ピラルク……ピラルク、見てる…」
福岡「なに、ピラルクって?笑」
橋本「世界最大の淡水魚…を見たあとに、ザビエル公園にいる。キャパルボのすぐ隣。」
福岡「じゃあ、来なよ! キャパルボの上の方が家やから。今、500人ぐらいと一緒にお茶してるから。」
橋本(シンセで電車の走る音を鳴らす)
橋本さんが、ステージ左側の福岡さんの隣に移動。

 5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、福岡さんはドラムを叩き、徐々にメカな音質とアレンジから、今までのチャットモンチーのマッシヴな要素が増えていく。「ぜんぶカン」の後には、2人が元々橋本さんのいたステージ右側へ移動。橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを持ち、6曲目は「余談」。打ち込みの使用も無く、2人の生演奏のみでアコースティックなアレンジでの演奏だった。7曲目の「CAT WALK」では、福岡さんがシンセサイザーへ移動。今度は打ち込みのリズムを使用している。8曲目「ほとんどチョコレート」では、橋本さんがエレキ・ギターに持ち替え、また全体の音の印象が変わっていく。「ほとんどチョコレート」の後にはMC。

福岡「どっち喋ろうかな。鹿児島の話とチャットモンチーの話、どっちがいい?」
(オーディエンスから「チャットモンチー!」の声)
福岡「えっ!? そっか、鹿児島の話は聞き飽きてるか。でも鹿児島の話、したいねんけど(笑) ちょっと鹿児島の話していい? 今回のツアー、九州のなかで一番、鹿児島を堪能したと思います。昨日、天文館通りの九州パンケーキのお店に入ったら、目の前に蜂楽饅頭(ホウラクマンジュウ)のお店があって、あとで買ってこうと思ったら、パンケーキ食べてる間に20人ぐらい並んで、だから明日にしようと思って。今日は山形屋に行きました。地方のデパート好きなんやけど、徳島にはそごうがあるんですけど、鹿児島は山形屋なんですね。で、納屋通りってところを通って帰ってきた。めっちゃ堪能したよっていう話。」
(福岡さんが話をしている間、橋本さんが「うん」「えぇ?」などと反応している)

 9曲目は「変身」。アルバム「変身」に収録されているバージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXをもとにした演奏。続いて、10曲目に「8cmのピンヒール」、11曲目に「消えない星」。この2曲で、ますますメカ要素を薄めていく。「消えない星」は、ほぼ音源どおりのアレンジ。12曲目は、橋本さんの「徳島から東京に出てきたころの思い出を書いた曲です。」という曲紹介から「majority blues」。こちらも、もともと2人でレコーディングされた曲ということもあり、ほぼ音源通りのアレンジで演奏された。

福岡「次にやる曲はMagical Fictionって曲なんですけど、もうすぐPVができるんで、でき上がったら絶対見てほしいです。えっちゃんが大ファンの人が出ています。」
橋本「言っちゃダメだもんね、まだ? めっちゃ言いたい(笑)」
福岡「私もめっちゃ言いたい。でも、言ったらすぐ広まるやん(笑) ヒントはねぇ…2人組。」

 以上の曲紹介から、13曲目は「Magical Fiction」。この曲は2017年4月5日発売なので、この時点では未発売。シンセの音色にメカット要素もありつつ、生楽器感のある演奏で、音源に忠実なアレンジで披露された。

 14曲目「こころとあたま」では、橋本さんがシンセを弾く。イントロでフランジャーをかけたような、ジェット機のような音で旋律を弾いているが、ここまでのツアーの公演と比べると音の運び方が大胆になっていた。さらに、この曲はメドレーになっていて、間奏部分でドラムのみになってから、橋本さんが楽器をギターに持ち替えてリフを弾き始め「湯気」へ。リズム、音色ともにメカット要素はほぼ無く、チャットがもともと得意にしていた荒々しいハードな音とアレンジ。続く15曲目に「満月に吠えろ」を披露し、本編が終了。

 アンコールでは、まずチャットモンチーの2人がマジシャンを連想させる背の高いハットと真っ白い手袋を着用してステージに登場。シンセで手品のBGM風の曲を流し、帽子から手品の体で次々と今回のツアーグッズを出していく。最後には鹿児島銘菓のかるかんも出てきて、オーディエンスが大いに沸く。物販紹介後のMC。

福岡「ちょっとこれ(かるかん)食べていい?」
橋本「えっ、ステージでかるかん食べるん!?」
福岡「めっちゃおいしい! これは元気が出るかるかんなの。GO!GO!7188のあっこさんが差し入れでくれたやつ。」
(オーディエンスから拍手)
橋本「元気が出まくるなー!」
福岡「ベース上手くなる! ベースあんまり弾いてないけどな(笑)」
橋本「アンコールの1曲目はカバーをやってるんですけど、なんとGO!GO!7188の瑠璃色って曲をやります。鹿児島でやるのめっちゃ緊張するなぁ。」
福岡「ぶっちゃけ、めっちゃ緊張してます(笑) この曲が一番緊張してます。今までミスらなかったところでミスりそう。GO!GO!7188さんにはアマチュアの時から憧れてて、今カバーするのどう?ってえっちゃんが言ってくれて。」
橋本「10代の終わりにMONSTER baSHってフェスにGO!GO!7188が出たときに、あっこちゃんと2人でお客さんとして見に行って、あまりの良さに涙を流し、そのときに瑠璃色もやってて、なんてええ曲なんやと思って、その曲を時を経て今日カバーしたいと思います!」

 以上のエモいエピソードを紹介したあとで、アンコール1曲目に演奏されたのは「瑠璃色」。橋本さんがギター、福岡さんがシンセサイザーで、ドラムは打ち込んだものを流しているようだ。GO!GO!7188のオリジナル音源では、サビでテンポが上がる、1曲のなかのダイナミズムが大きい曲だが、チャットモンチーはゆったりしたテンポで、2人のグルーヴを重視したアレンジを施していた。

 アンコール2曲目、ラストは福岡さんの「それでは最後の曲になりました。みんな来てよかったなって思う曲やるよ!」という言葉から、「シャングリラ」がスタート。橋本さんはギター、福岡さんはベース、ドラムは打ち込み。ドラム以外にも打ち込みによる電子音が足されていて、イントロが音源よりも長めだった。ギターとベース、基本のリズムは音源とほぼ変わらないため、オーディエンスも大いに盛り上がり、この日のライブが終了。

 この日の鹿児島公演で、今ツアー4本目。グルーヴがどんどん磨き込まれていくのが、実感できるライブでした。そして、2人もライブ中に何度か口にしていたけど、この日に限らずお客さんが本当に暖かい。今回のツアーは久しぶりに訪れる場所も多く、ここ鹿児島も2012年12月の変身ツアー以来4年3ヶ月ぶりのライブだったようです。(ライブ中に橋本さんご本人も「鹿児島に来るのは4年ぶりぐらい」と発言)


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月20日
鹿児島Caparvo Hall
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月17日 長崎DRUM Be-7

チャットモンチー
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 ツアー2本目の金沢公演からちょうど1週間後、今ツアー3本目の長崎公演。今ツアー共通のオープニング用のSEから、ライブが始まる。チャットモンチーの2人は、ギターとベースではなく、2人ともステージ上に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーの前にそれぞれ着席。オーディエンス側から見て、橋本さんが右側、福岡さんが左側に座る。

 1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源では、ギターもベースも歪んだハードな音色だが、今回のツアーではそれぞれシンセサイザーに置き換えられている。歌い出しから、先の2公演よりも橋本さんのボーカルに少しディレイかリバーブのようなエフェクトがかかっているように聞こえたが、これは会場の音響のせいかもしれない。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源化されているアレンジとは違い、ドラムは打ち込み、ギターとベースはそれぞれシンセサイザーに置き換えられ、耳触りがだいぶ異なっている。ここまでの3曲とも、シンセサイザー特有の柔らかく広がりのある音色を選択しているため、原曲との差が際立つ。オーディエンスにも、やや困惑した空気が感じられる。3曲目「恋の煙」後には、少し長めのMC。

橋本「なんと、チャットモンチーが長崎でライブするの…6、7年ぶり!」
福岡「ちなみに7年ぶりです、って人いますか?」
(オーディエンスから手が上がる)
橋本・福岡「おおおぉぉーーーーー!!!」
福岡「じゃあ、お互い7歳、年とったんですね。」
橋本・福岡「キャーーーーー!!!」
橋本「すごーい、7歳ってすごいよ!」
福岡「13歳が20歳になってますから。」
橋本「ほんまや、すごい思春期やな。」
福岡「思春期よ、ドンズバよ。」
橋本「13歳から20歳って、一番ヤバイな。」
福岡「えっ、その話、広げる?(笑) じゃあ、7年分の誕生日を祝えなかったというわけで、今から誕生日の曲やるんで、7年分の思いをサビのところで拍手してください。」

 以上のMCから4曲目に演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。打ち込みによるトロピカルな印象のドラムが流れ始め、この曲でもチャットモンチーの2人は元々はギターとベースで演奏されていた部分を、シンセサイザーで演奏。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」後には、またMC。

橋本(シンセで嵐のような風の音を鳴らす)
福岡「こんな風、強かったっけ? えっちゃん、風を操ってます?笑」
橋本(雨と雷の音を鳴らす)
福岡「えっ、嵐!? さっき、眼鏡橋行ったとき晴れてたよ。」
橋本(電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「もしもし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?今、なにしてる?」
福岡「長崎のDRUM Be-7ってところで、500人といろいろ悪いことしてます(笑)」
橋本「私はめっちゃ風が強いグラバー園にいるんやけど…」
福岡「えっ、そんな局地的にグラバー園、風吹いてんの?」
橋本「局地的な強風らしくて、すごい風なんで、そっち行ってもいいかな?」
福岡「どうぞどうぞ!」
橋本(シンセで車のエンジン音と急ブレーキの音を鳴らし、福岡さんの隣へ移動)
福岡「ごつい車で来たな(笑) ハマーや、ハマーで来たな! グラバー園、楽しかった?」
橋本「楽しかった。1人で弾き語りしてたんや。」
福岡「それ、誰にも気づかれんやつでしょ(笑) 昔、サラリーマン1人に向かってサムライソウル歌ったっていう。」
橋本「それも最後までは聴かれんかった(笑)」

 橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラム。「ぜんぶカン」の後には長めのMC。福岡さんが「今度はそっち行きます」と言って、今度は2人とも橋本さんが元々いたステージの右側へ移動。

福岡「昨日、中華街に行ったんよ。お腹すき過ぎて、どこ入る?って感じになって、いろんな看板見て、いっぱい並んでるお店ありますよね? 並んではいないけど、お客さんいっぱい入ってるところに決めて、めっちゃお腹いっぱいになって、出てきたら、行きにも絶対通ったはずなのに、帰りにいきなり現れた謎の甲羅屋さんがあったの! 甲羅って、べっこうのこと。で、そこに”最大運”って書いてあったんよ。最大運が手に入る、しかも半額で! 2000円の最大運が、1000円になってたの(笑) これにしようと思って、パッと横見たら3000円の絶大運が1500円になってたの(笑) 3000円の絶大運が1500円やって!って、えっちゃん見たら、今つけてるバレッタ2000円で買ってました! えっちゃんが一番、運すごいやつや。」
橋本「べっこうって凄い運がいいって、日本一を謳ってるお店だったの。(オーディエンスに問いかける感じで)知ってる? 知ってる人もいる…」
福岡「見えないんじゃない普通の人には(笑) だって行きは全然気づかんかったよな?」
橋本「看板が反対向いとったんちゃう?」
福岡「それはえっちゃん独特の発想やわ(笑) 多分、お腹が空きすぎて、食べ物の看板しか見てなかったってことに落ち着いたよな。なんでバレッタ買おうと思ったの?」
橋本「なんか最近、バレッタがアツいんかなと思って…」
(オーディエンスと福岡さん爆笑)
福岡「なに情報!?笑」
橋本「なんも情報得てないけど(笑) なんか、そういうのが降りてきて…」
福岡「どうですか今日、上がってる?」
橋本「めっちゃ上がってるよ! めっちゃ、バレッタ来てると思う。」
福岡「やっぱバレッタ来てるんやな(笑) じゃあ、そういうタイトルの曲やりますか。」
橋本「あっ、そうですね、そういうなんでもない話を書いた”余談”って曲を聴いてください。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当。「CAT WALK」では、橋本さんは変わらずアコースティック・ギター、福岡さんは元々いたステージ左側に戻ってシンセサイザーを担当。リズムは打ち込みの音源を使用しているが、生演奏らしいドラムの音ではなく、深くリバーブのかかった鼓動のような音だ。「CAT WALK」後のMC。

福岡「いつも余談って曲の前は、しっとりした感じで行こうって話してるのに、面白い感じになってしまうな。”グッとくる曲やるんで、聴いてください”とか言ってみたいけどな(笑) “次のナンバー聴いてください!”とかやりたいけど。」
橋本「ナンバーって言う?(笑) ラジオだったら、お気に入りのナンバーとか言うけどな。」
福岡「じゃあ、最初から声、入れとく!? クリス・ペプラーさんとか小籔さんに入れてもらう?」
橋本「でも、それも照れ隠しやもん。」
福岡「そうか。なんか照れることできないんですよね。」

福岡「次の曲は、5年前にライブで1回だけやった曲で、そのライブだけで終わらせるつもりだったんですけど、うちのディレクターのきくりんが覚えてくれていて、ぜひ音源化したいと言ってくれて、今回リアレンジしました。」
橋本「…ナンバーって言わないよ。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「じゃあ、そのナンバーを…」
橋本「言うんかい(笑)」
福岡「それでは、”ほとんどチョコレート”という曲を聴いてください。」

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。この曲では、橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんがシンセサイザー。前述のとおり、この曲は2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、アレンジが大幅に異なっている。当時も2人体制だったが、今ツアーとは違いPCとシンセサイザーによる打ち込みや同期を導入していなかったため、ギターとドラムによるソリッドな演奏だった。そして、僕の記憶が確かならば、イントロと間奏では橋本さんがハーモニカを吹いていたはず。

 9曲目「変身」、10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」と続く。この3曲では、橋本さんは引き続きエレキ・ギター、福岡さんは「変身」では足でバスドラを踏みつつシンセサイザー、「8cmのピンヒール」と「消えない星」ではシンセサイザーを担当している。序盤のシンセサイザー2台体制のアレンジから、ギターが入ることで、徐々に以前のチャットモンチーに近い音になってくる。「消えない星」後のMC。

橋本「なんかすごい、満遍なく顔が見えます。なんていうのか、盛大に微笑んでくれると、こっちもニコニコしてしまって…本当にありがとうございます。」
福岡「確かに笑顔率が高い。ライブしながら、嬉しくなっちゃった。」
橋本「笑顔率すごいよな! すごいニコニコしてくれてて。」

 上記のような内容のこと(僕の記憶によるものなので、細かい言い回しなどは実際と違う部分もあろうかと思います)を話していたが、確かにこの日のオーディエンスからは、序盤は困惑が感じられる雰囲気だったが、途中から「音楽って楽しい」「チャットモンチーって楽しい」という空気が溢れ出ていた。

 12曲目は「majority blues」。現在の2人体制になってからリリースされた曲なので、音源化されているアレンジとほぼ変わらない演奏。橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはシンセサイザー、それに加えてベースなどがPCで同期されているようだ。「majority blues」後にもMC。

橋本「今回はセットがすごいの。タイトルが、チャットモンチーの秘密基地ツアー2017だから…」
福岡「なんか抜けてない?笑」
橋本「あっ、”機械仕掛け”が抜けてる(笑) 機械仕掛けの秘密基地ツアーだから、秘密基地感を出したいっていう2人の要望に応えてくれて。」
福岡「今、マイクの位置を直してくれたハギさんがこのセットを作ってくれました。」
(オーディエンスから拍手)
福岡「いつもは優しいけど、怒ったらめっちゃ恐いよ! 怒ったら、どちゃくそ恐いですよ。どちゃくそって意味わかります? 私もよく分からないんですけど、”すごい”っていう感じの意味だって徳島で聞いたんで、みんな使ってくださいね。どちゃくそええライブだったって、呟いてください。なんかモッシュとか起こってそう、どちゃくそなライブって(笑)」
橋本「確かに(笑)」
福岡「(ステージ中央後ろの「CM」という電飾を指しながら)この電飾もハギさんが作ってくれたんですよ。」
(オーディエンスから拍手と「へぇーー」という声)
橋本「(2人の頭上あたりにそれぞれ上から垂れ下がる大きめの電球を指しながら)あと、このイカ釣りの電球も。」
福岡「そう、イカ釣り漁船の電球らしいよ。」
(オーディエンスから再び拍手と「へぇーー」という声)

 13曲目は「Magical Fiction」。橋本さんはこの曲ではシンセサイザー、福岡さんはドラム。ベースは、おそらくPCを使っての同期。14曲目は、「こころとあたま」と「湯気」をメドレーのように繋げて演奏。橋本さんは「こころとあたま」ではシンセサイザー、「湯気」から黒のシンラインに楽器を替える。橋本さんがギターを持ってからの「湯気」は、今までのチャットモンチーが得意としていた無駄を削ぎ落としたハードでソリッドな演奏で、非常に盛り上がった。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。アルバム「変身」に収録の音源に近いアレンジだが、ベースを同期で流したり、イントロのギターソロを2回繰り返すなど、いくつか変更が加えられている。

 本編終了後、オーディエンスから沸き起こるのはアンコールではなく、「もってこーい」コール。以前、チャットモンチーが長崎市民会館でライブをしたときも同様のコールだったが、長崎特有のコールらしい。こういった各地の文化に触れられるのも、遠征および地方公演の楽しみだ。

 アンコールでは、手品風のBGMに乗せて、帽子と白い手袋を着用したチャットモンチーの2人がステージへ。それぞれ帽子から、手品をやっている風に、次々と今回のツアーグッズを出していく。

橋本「皆さん、もってこいコールありがとうございます。」
福岡「めっちゃ地元ならではのコールしてもらってるのに、こんなエセ手品を見せていいのか、ちょっとためらいました(笑) 言葉を発さずに物販の紹介する方法を考えたらこうなりました。」

橋本「アンコールでは、カバーを1曲やりたいと思います。九州出身のアーティストの方っていろいろいると思うんですけど、GO!GO!7188さんの曲をやります。」
福岡「私とえっちゃんが18ぐらいからバンドやり始めて、19の夏に四国のMONSTER baSHっていうフェスに一緒に行ったんですよ。当時もドラムが抜けて、2人だったんですよ。ドラムが決まらなくて、ドラム貧乏だったんです。そんな時に、GO!GO!7188さんを見て、めちゃくちゃカッコよくて、”なんでこんなに私たちはうまくいかないんだろう”って2人で泣きました。オーディション受けても”お前らみたいなのは、ごまんとおる”って言われて、当時は意味を取り違えて”ああ、5万もおるんや”って思ってたんですけど(笑) そんなGO!GO!先輩の曲を九州でやる日が来るなんて!」

 アンコール1曲目は、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。福岡さんがシンセサイザー、橋本さんがエレキ・ギター、ドラムは打ち込みのようだ。福岡さんのシンセはピアノの音色に設定されている。GO!GO!7188のオリジナルの音源では、サビからテンポが速くなるが、今回のチャットモンチーのアレンジは、イントロのミドルテンポのまま最後まで進行していく。

 アンコール2曲目、この日のラストは「シャングリラ」。橋本さんはサンバーストのテレキャス、福岡さんはベース、ドラムは打ち込んだ音源を同期している。耳慣れたバスドラのリズムが流れ始め、オーディエンスから歓声と手拍子が起こる。ベースが入るまでのイントロ部分で、福岡さんが「今日はほんまにありがとうございました。皆さんの笑顔で、明日からも頑張れそうです。みんなもまた会う日まで元気でな、ありがとう!」と挨拶してから、ベースを弾き始める。ドラムは打ち込みで、CD音源には入っていない音も足されているものの、各楽器とも基本的には音源に忠実なアレンジ。暖かい雰囲気のまま、ライブは終わった。

 MCでチャットモンチーの2人も言っていたとおり、笑顔に溢れ、非常に暖かい雰囲気のライブでした。どこまでニュアンスが伝わるか分かりませんが、シャングリラのイントロでの福岡さんの言葉からも誠実さがにじんでいて、グッときました。チャットモンチーが長崎でライブをやるのは、2011年のYOU MORE 前線以来6年ぶりのようですが、6年前にライブに来ていた人が、変わらずにチャットモンチーが好きで6年後に6年ぶりにライブに来るというのは、シンプルだけど感動的な状況だなと思います。僕は好きなバンドやグループのためなら、積極的に遠征もしますが、ライブに行った回数が多いからライブに1回しか行ったことがない人よりそのバンドが好きか、というと必ずしもそうではありません。6年間変わらずにチャットモンチーが好きで、地元に来たときにまたライブに行く、その人の心情と感動を想像すると、それも本当に素晴らしい体験なんだろうなと思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月10日 金沢Eight Hall

チャットモンチー
2017年3月10日
金沢Eight Hall (エイトホール)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 ツアー2日目の金沢公演。前日と同じく定刻を少し過ぎると、客電が落ちオリジナルのSEが流れる。ライトがつき、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、中央に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーをはじめ、ドラムやアンプやMacBookなどが所狭しとセッティングされている。前日と同じく、橋本さんがオーディエンス側から見て右側、福岡さんが左側のシンセサイザーの前へ着席。

 1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源から、ギターとベースはシンセサイザーに置き換えられ、ドラムも打ち込みになっている。元々の音源のイントロでは、ギターは歪み、単音でありながら糸を引くような、重厚感のある音とリズムだが、シンセサイザーの輪郭の柔らかい音に置き換えられ、同じメロディーを弾きながらも、かなり印象が異なる。ベースも、音源では、硬い音で8分音符を基本にリズムを刻んでいくが、今回のツアーではシンセサイザーでのコード弾きになっている。

 「レディナビゲーション」の後には、橋本さんが「今日は私たちの秘密基地へようこそ!」、福岡さんが「1曲目、みんながあんぐりしてる感じがわかりました(笑) 今日は秘密基地に来てもらったからには、新しいチャットモンチーをどうぞ楽しんでいってください!」と挨拶。

 「レディナビゲーション」と同様に、2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源で聴ける音とは、全く異なる耳障りの音質に仕上がっている。「恋の煙」後には少し長めのMC。

橋本「どうですか皆さん、理解してくれてますか? 私たちの想い、届いてますか?」
(オーディエンスから拍手と歓声)
橋本「わかる! すごい気持ちわかるよ!…だけど、許して。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「めっちゃわかるよ! 絶対、私がお客さんだったらそうなってるもん! あぁ、おぉ、えぇえ~~!?」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうなんだよねぇ。これがね、需要と供給のバランスのね、悪さっていうか(笑) でも、いい意味で驚いてくれて良かったです!」
福岡「今日はこんな感じで私たちの秘密基地に来てもらって、秘密基地の定義ってなに?って話なんですけど…」
橋本「(ちょっと得意げに) 調べたよ。」
福岡「え、えぇー? うそぉー!? でもそういうとこあるよな、えっちゃん(笑) ちなみになんなんですか、秘密基地って。」
橋本「えっと…たぶん…」
福岡「たぶん!(笑) 調べたんでしょ?」
橋本「調べたんだけど(笑)、なんだったっけ、とにかく…軍事基地で、人に知られてはならない、場所!」
福岡「ここ、めっちゃ知られてますよ(笑) 本当は知られたらいかん場所だけど、お金払ったら見れるってことやね。」
橋本「そう!」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。まず打ち込みのドラムが流れ始め、福岡さんが「今から、この陽気なリズムに合わせて、誕生日の曲をやりたいんですけど、今日誕生日の人いますか? 今日はおらん? じゃあ、アラウンド3日以内!」と、3日以内が誕生日の人を確認すると、数名の手が上がる。福岡さんがオーディエンスに、サビの部分で今日誕生日の人をガン見して拍手してください、という説明をしてから、曲がスタート。この曲のイントロも、オリジナルの音源ではギターとベースが弾いている部分を、2台のシンセサイザーが代わりとなり、演奏していく。

 「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後に長めのMC。

橋本(シンセで数種類の犬の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんだろう? 犬の声がする。」
橋本(シンセで「チュンチュン」という感じの鳥の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんか鳥の声が、ここってムツゴロウ王国だっけ?笑」
橋本(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。前日の新潟公演では黒電話を思わせる音だったが、この日は「プルルルルル…」という音)
福岡「もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん? 今、金沢に来てて。」
福岡「私もおるよ! 500人ぐらいにガン見されてる(笑) えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ポツンと兼六園の真ん中にいるから、そっちに行ってもいいかな?」
福岡「いいよ、寂しそうやから、こっちおいで。」
橋本「じゃあ、行くね!」
(シンセで馬が走る音を流す)
福岡「来た! 兼六園から馬で(笑) 犬と鳥は置いてきたの?」
橋本「いや、後ろついてきてる!」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
橋本「なかなか、馬の音探せんかった、ごめんごめん(笑)」
福岡「これ(シンセサイザー)、いろんな音が入ってて、でも犬が吠えると思わんかった(笑)」

 上記のやりとりから、橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。この曲での橋本さんのシンセは、一音押すと、アルペジエーターのように、いくつかの音から成るフレーズが演奏される設定のようだ。「ぜんぶカン」の後には、また長めのMC。

福岡(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。しばらく鳴らしても橋本さんが反応せず)
橋本「あっ、あー、ごめん! ちょっとぼーっとしてた(笑) ごめん、ごめん! もしもし…」
福岡「もしもし?」
橋本「どちら様ですか?」
福岡「今、あなたの近くにいます…」
橋本「こわい(笑) あっこちゃんやな?」
福岡「そう、今、兼六園の東側でヒマしてるんや。えっちゃんの別荘、このへんにあったよな?」
橋本「そうだよ、兼六園より広いやつ。」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
福岡「じゃあ遊びに行ってもいいかな?」
橋本「いいよ!」
(福岡さんが橋本さんの近くに移動)
福岡「えっちゃんの別荘、めっちゃ狭いやん!」
橋本「ばれたかぁ(笑) ちょっとここ、笑うコーナーにせんとこって言ってたのに(笑)」
福岡「これから、ぐっとくる曲やるから、みんな切り替えてよ(笑) メカもやりつつ、こういうアコースティックな気持ちも忘れてへんでっていう感じです。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は、橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当し、打ち込みは使用せず。橋本さんの「いち、にい、さん、はい」というゆったりしたテンポのカウントから始まり、橋本さんのコード・ストロークと、福岡さんの長めの音符を使ったベースラインによる、言葉とメロディーが際立つようなアレンジ。

 7曲目「CAT WALK」では、橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。この曲では打ち込みも使用されており、イントロは心臓の鼓動を思わせる弾んだリズムで、バスドラのような低い打楽器の音が響く。しばらくすると、そのリズムに合わせて、橋本さんがコードを弾き始め、さらに歌も入る。アルバム「告白」に収録の音源では、歌い出しは「私がいなくなったとしても」だが、今回のアレンジでは、歌い出しが「あぁ 今日もこの目で 街を見られるよ」からになっている。福岡さんのシンセの音色は、ここまでの電子音然としたシンセらしい音色ではなく、ピアノの音が選択されている。途中、ピアノとは別の音色のシンセサイザーらしき音が鳴っているところもあったが、打ち込みなのか、福岡さんによる生演奏なのかは確認できなかった。「CAT WALK」後には、またMC。

福岡「次の曲は、5年前ぐらいに作って、ライブで1回やったっきり、ずっとやってなかったんですよ。そのとき、2ピースになって初めてのCOUNTDOWN JAPANで、やっただけなんですけど。この曲、えっちゃん、めっちゃ怒っとったよな?」
橋本「怒りが凄くて…あの、勢い任せに作った曲です。でも、5年経って、そういう謎の怒りも消え、新たにリアレンジしました!」

 上記のエピソードを披露したあとに演奏された8曲目は「ほとんどチョコレート」。前述のとおり、2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、当時とはかなりアレンジが異なっている。

 9曲目は「変身 (GLIDER MIX)」。この曲の前には、宇宙を感じさせるような音の、インタールード的なSEが足されている。アンビエント・ミュージックやエレクトロニカに近く、個人的にはBoards of Canadaを連想させる音作りだと感じた。この音源をバックに、福岡さんが少し話をする。

福岡「みなさんを今から、洗脳したいと思います…」
(オーディエンスから笑いが漏れる)
福岡「チャットモンチーは、何回変身してもいい! 人によっては、今5期とか言われてますけど、もう何期なのか自分たちではわかりません! だから、もう何回変身してもいいやろ。」
(オーディエンスから拍手)

 福岡さんの話のあと、SEが流れ続けるなか、橋本さんがイントロのギターを弾き始める。この曲では橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんは、足でバスドラのペダルを踏みながら、シンセサイザーを弾いているようだ。10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」では、橋本さんは引き続きシンライン、福岡さんはドラムを担当。徐々にサウンドもアレンジも、ハードな方向にシフトしていく。

 「消えない星」の演奏が終わると、橋本さんが「大丈夫ですか、みなさん、聴きたい曲、聴けてますか?」とオーディエンスに問いかける。オーディエンスからは拍手と歓声。福岡さんの「次の曲、聴きたいはず。私は個人的に聴きたい。」という言葉から、12曲目に披露されたのは「majority blues」。この曲も橋本さんがギター、福岡さんがドラム。2人体制になってから発売された曲のため、ほぼCD音源通りのアレンジによる演奏だ。「majority blues」には長めのMC。

福岡「今日のお客さんはめっちゃ真剣に聴いてくれますね。真剣タイプですよね。相談にのってくれそうなタイプ。相談していいですか? どうですか、チャットモンチーこのままで大丈夫でしょうか?笑」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「めちゃくちゃ悩んだんですよ、ここに来るまで。また、飽きてしまった、みたいな(笑) 10周年の時に6人になって、めっちゃいろいろやって、すごい達成感があって、このままではあかんのちゃうかなって感じになったんですよ。もっとやったことない事したいし、(サポートメンバーが)頼んだら何でもやってくれるから、甘えたらあかんってなって。」
橋本「それですごい悩んで、去年の春の終わりぐらいには、こんな感じでやっていこうっていうのを見つけて、っていう感じです。」

(打ち込みと生演奏の違い、打ち込みの難しさについて、色々と語ってくれてから)
福岡「えっちゃんもこの体制になって、ちょっとずつパソコンを覚えて…じゃあちょっとテストしようかな。command + Z(コマンドゼット)はなにか?」
橋本「…1個、戻る。」
福岡「正解!!」
(オーディエンスから「おおぉーー!」という声と拍手)
福岡「じゃあ、command + A(コマンドエー)はなにか?」
橋本「なんか…”あ”が付く?」
福岡「うん、”あ”が付くよ! あ、っていうか、A。コマンドAですよ!」
橋本「お、オール! オール!」
福岡「そうそう! オール、なに?」
橋本「全部! 全部まとめる!」
(オーディエンスから「ああぁーーー」という残念そうな声)
福岡「正解は、全部選択!」

福岡「4月に新曲が出ます。2人でやったんですけど、いまいちメカっぽくなくて、生演奏して録ったっていう(笑) この前、PV撮ったんですけど、ヤバい人に出てもらいました。まだ言えないんですけど。」
橋本「言いそうで怖い(笑)」

 13曲目は、4月5日に発売される新曲「Magical Fiction」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。それ以外に、ギターとベースの生演奏をレコーディングした音源を同期しているようだ。

 14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのように繋げて演奏。「こころとあたま」では、橋本さんが前曲から引き続きシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。「こころとあたま」の1回目のサビが終わった間奏で、橋本さんが楽器をシンセからシンラインに替え、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。曲の繋ぎの部分も含めて、非常に荒々しく、新しいことに挑戦しつつ、デビュー以来チャットモンチーが得意としている部分もしっかりと見せてくれた。

 本編ラストの15曲目「満月に吠えろ」。この曲の前にも、インタールード的に軽やかにシャッフルしたドラムの音を流していた。担当楽器は変わらず、橋本さんがギター、福岡さんがドラム。流していたドラムの音が止まると、すぐに福岡さんがカウントを取り、曲がスタート。前日の新潟公演と同様、間奏とアウトロのギターソロは、途中から音源よりも旋律が上昇していく部分があり、今回のツアーを通してアレンジし直された部分のようだ。本編はこの曲で終了。



 アンコールを受けて、手品のBGM風の音源が流れ始め、ステージ上に戻ってくるチャットモンチーの2人。2人ともシルクハットのような背の高い帽子と、真っ白い手袋を着用している。帽子から次々と今回のツアーグッズが出され、オーディエンスに向かって紹介していく。橋本さんの帽子からは、最後に白い鳩のぬいぐるみのような物が出てくる。

福岡「以上、無言の物販紹介でした。えっちゃん、めっちゃ入ってたな(笑)」
橋本「もう、ぎゅうぎゅうに押し込んで! 最後に鳩、出てきたやん? 鳩を最後に出さなあかんから、鳩こんな(ぎゅうぎゅうになっている仕草をしながら)、こんな、なってたやろな(笑)」
福岡「えっちゃんが、めっちゃプレスしてるの見てましたけど、あんなに入ってると思わんかった(笑)」

 アンコールでは、前日と同じくGO!GO!7188のカバー「瑠璃色」と、「シャングリラ」を演奏して、この日のライブは終了となった。

 最後にライブ全体の感想を一言。個人的に最も心に残ったのは、あっこびんが「個人的に聴きたい曲」と言って「majority blues」を演奏したところ。こういう一言に、あっこびんがどれほどチャットモンチーのことを好きか、大切に思っているか、が表れていますよね。えっちゃんが作詞作曲したこの曲を、自分がお客さんだったら聴きたい曲だって、自然に口から出てくるというのは、高校生の時にチャットモンチーのライブを見て受けた感動を、今でも忘れずに持ち続けているのだな、と思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月10日
金沢Eight Hall
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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