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チャットモンチー 2017年3月24日 浜松窓枠

チャットモンチー
2017年3月24日
浜松 窓枠
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れ始める。たびたびメンバーがライブ中に言及しているが、このSEは橋本さん作成とのこと。メンバー2人はギターやドラムではなく、ステージ上に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーの前にそれぞれ座る。

 1曲目は「レディナビゲーション」。『YOU MORE』収録の音源では、イントロから歪んだギターのフレーズが印象的な曲だが、今回のツアーではシンセの柔らかい音色を使って、大胆にアレンジし直されている。

 「レディナビゲーション」終了後には、橋本さんが「皆さんこんばんは、チャットモンチーです。浜松に来たのは4年ぶり!…ぐらい。今日はメカで来たから、メカってパソコンと一緒に来たって意味なんですけど、メカットモンチーを楽しんでもらいたいなと思います。」と挨拶。

 2曲目は「隣の女」。音源ではピアノが大活躍している曲だが、同じ鍵盤楽器とはいえ、シンセ然としたフワッとした音色と、打ち込みによるビートを中心にアレンジが施されているため、やはり印象が大きく異なる。最初の2曲だけを聴いても感じるのは、まずサウンドを変えることで、知っている曲でも一種の異化作用が起こり、新鮮な気持ちで曲と向き合えるということだ。

 3曲目「恋の煙」。音源では鋭く歪むギターから始まるが、やはりそのフレーズもシンセサイザーに置き換えられている。ここまでの2曲と比べても、音源とのサウンドの違いを否が応でも感じる音作りだ。「恋の煙」が終わると、打ち込みによるドラムのリズムが流れ、そのリズムをバックに、チャットモンチーの2人が話し始める。

橋本「ありがとうございます。すごい、みんなノってくれてる。」
福岡「みんなすごい音楽レベル高いんちゃいますか。」
橋本「凄いよ、浜松。」
福岡「えーっと、ここ3日以内誕生日の人いますか?」
(オーディエンス数人から手が上がる。)
福岡「おー、おった! ちなみに当日の人?」
(1人のオーディエンスが手を上げる。)
福岡「おめでとう! 何歳ですか?」
手を上げたオーディエンス「24です!」
福岡「若い!」
橋本「(私たちと年齢が)10個も違う!」
福岡「じゃあ、その誕生日の人たちに向けて、今から誕生日の曲をやるので、サビのところでその人たちに向かって拍手してください。」

 この間、打ち込みのドラムは流れ続けている。そのまま2人がシンセサイザーを弾き始め、4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。ここまでの3曲と比べると、メカ要素によるサウンドの違いがそれほど気にならず、それよりもドラムの軽快で楽しげなリズムと、それに合わさるシンセサイザーが耳に残る。3曲を経て、サウンドにも慣れ、サウンド以外の要素にも注意が向き始めたということか。いずれにしても、音源と比べると、リズムやサウンドは変わっているのだが、この曲が持つハッピーな雰囲気は多分に含まれていた。

 「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後には、長めのMC。

橋本(シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす。途中から不安定なリズムと音程で鳴らす。)
福岡「なんか音程悪い電話が鳴ってる(笑) なんだろう、怖い怖い! 着信アリって出てる!」
橋本「もしもし、あっこちゃん?」
福岡「誰!?」
橋本「チャットモンチーのギターボーカルの橋本絵莉子やけど。」
福岡「ああ、えっちゃんね。ごめんごめん。」
橋本「今なにしてる?」
福岡「今ね、浜松で500人ぐらいとウナギ食べてる。」
橋本「超ウナギ必要やな。」
福岡「浜松の今日のウナギ、全部ここで食べてる(笑)」
橋本「私は浜名湖で釣りして、そのあと浜名湖パルパルに行って、マーメイドパラダイスに1人で乗ってるんやけど…」
福岡「ほとんどわからへん(笑) 浜名湖パルパルってなに?」
橋本「遊園地。1人だと暇やから、そっち行ってもいいかな?」
福岡「いいよ。」
橋本「すんごい飛ばして行くから、聞いてて。」
(シンセサイザーでスーパーカーが走る去る音を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣に移動)
福岡「おぉお~、めっちゃ低い車で来たな! エアロパーツ、バリバリのやつで来たな!」
橋本「一瞬で着いたわ。ここ、あっこちゃんの家っていう設定なんですけど。」
福岡「私の部屋どうですか?」
橋本「なんかギュッとしてる! ここしか居場所ない…」
福岡「悪口やん(笑)」
橋本「じゃあ、ちょっとラップして帰るわ。」

 橋本さんのこの言葉から、5曲目に演奏されたのは「ぜんぶカン」。福岡さんがシンセからドラムへ移動。ドラムが打ち込みではなく生演奏になり、4曲目「バースデーケーキの上を歩いて帰った」よりも生バンド感がさらに増す。

(橋本さんが、福岡さんの隣から元の位置に戻る)
橋本「あー…あっこちゃん来ないかなぁ。私の部屋に来ないかなぁ。」
福岡(シンセサイザーでヘリコプターのプロペラ音を鳴らす)
橋本「ヘリコプターで来てる…!」
福岡「今ちょっとコストコ行って、めっちゃでかいケーキ買ってきたから、持っていっていい?」
橋本「いいよ!」
福岡(シンセサイザーで、車がクラッシュしたような音を出す。)
橋本「!?…どうしたん?」
福岡「カークラッシュした(笑)」
橋本「(笑)」
福岡(シンセサイザーで、電車が走る音を鳴らし、今度は福岡さんが橋本さんの隣へ移動。)
橋本「いらっしゃい。」
福岡「お、けっこう広いやん。和室なんやね。」
橋本「和室が好きだから。やっぱ畳だよね。……畳にペンの汚れがついたときの落とし方、知ってる?」
福岡「!?…こわい、なんなん(笑) もう1回言って! こわい、今の全然予測できへん!笑」
橋本「ペンとか、ちょっとついた時の落としかた知ってる?」
福岡「知らん。どうやって、落とすの?」
橋本「歯磨き粉でこするの。」
福岡「えっ! マジで?」
(オーディエンスからも「へぇーー」の声)
福岡「意外と、えっ!ってなったけん、ちょっと悔しい(笑)」
橋本「でも、畳に歯磨き粉を出すの、めっちゃビビるやん? でも、だんだん楽しくなってくるから。」
福岡「どんだけ、汚してんねん(笑) じゃあ、えっちゃん家に掃除の話、聞きに来たについでに、フォークソングでもやるか。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、福岡さんのフォークソングでもやるか、という言葉通り、アコースティックなアレンジでの演奏。橋本さんはアコースティック・ギターを持ち、メカ要素は薄かった。それにしても、ここまで7曲のサウンドの振れ幅が広い。広いにも関わらず、違和感を感じさせずに、自分たちの音世界へオーディエンスを引き込んでいくチャットモンチーは本当に凄い。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをエレキに持ち替え、福岡さんはシンセサイザーを担当。ドラムなどいくつかの楽器は、打ち込んだものを同期しているようだ。このライブの時点ではまだ発売されていなかったが、2017年4月5日発売のシングル『Magical Fiction』に収録された音源と、ほぼ同じアレンジ。「ほとんどチョコレート」後には、ちょっと長めのMC。

橋本「どうですかメカ? 大丈夫ですか?」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「みんな、どんなライブするかも分からんのに、チケット買ってくれてほんまにありがとう!」
(オーディエンスから歓声と拍手)
橋本「すごい!」
福岡「すごいよな、嬉しいよな。チャットモンチーが機械を使うっていうのは、今までから考えると、まるっきり違うって思ってたでしょ? めっちゃ受験勉強なみに、勉強したっちゅうねん!笑」
橋本「すごいんだよ、あっこちゃん、本当に! 大学受かるだけある!」
(オーディエンスから拍手と笑い)
福岡「そう言われると、はずいな(笑) えっちゃんも、1週間ぐらい前に、command+A (コマンドA)覚えましたよ。覚えてる、command+A? 全部選択な。じゃあ、command+Cは何でしょう?」
橋本「シー!?……コピー!」
福岡「おぉーーー!!」
(オーディエンスから拍手と歓声)
福岡「去年までは、6人でやってたんですけど、またやったことない分野をやりたいという、私たちのいけない癖が出ましてね。今、こういう感じになってるんですが。えっちゃんと私とパソコン2台で、この音を作っているわけです。」
橋本「なにか踏んでみようか?」
福岡「じゃあ、踏んで!」
(橋本さんが足元のペダルを踏むと、宇宙空間を漂うようなスペーシーなSEが流れ始める。)
福岡「この音、えっちゃんが作ったんですけど、すごいよね、やっぱり宇宙と交信してるよね。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「好みが出るよな。」

 引き続き、橋本さんが作ったスペーシーなSEが流れるなか、9曲目に演奏されたのは「変身」。アルバム『変身』収録のアレンジではなく、シングル『こころとあたま/いたちごっこ』収録のgroup_inouによるGLIDER MIXをもとにしたアレンジで演奏された。担当楽器は、橋本さんがエレキギター、福岡さんがドラム。このあたりから、アルバム『変身』期の2ピースに近い、ハードなサウンドになっていく。

 10曲目「8cmのピンヒール」も、サウンド的にはメカ要素の感じられない、生々しくソリッドな音。11曲目「消えない星」は、ほぼ音源通りのアレンジとサウンドで、こちらも生バンド感の強い演奏だった。「消えない星」後には、橋本さんによる短めのMC。

橋本「今日はツアーの5ヶ所目なんですよ。だんだんツアーっぽくなってきたなって感じで。ステージにいる間が、一番元気だと思う。それがなんかツアーっぽいなぁ、と思っています。今日も4年ぶりやし、九州もまわってきたんですけど、9年ぶりの場所もあって、うそー?ってなって、こうやってまた来ることができて、嬉しいなぁと思いました。みんな、ありがとう。」

 このMCの内容から、やはりツアーを回るというのは、体力的にも大変なのだなと感じた。そして、橋本さんの誠実さも伝わり、オーディエンスも少し感傷的な雰囲気へ。そんな空気のなか12曲目に演奏されたのは「majority blues」。ほぼ音源通りのアレンジによる演奏。橋本さんのMCで、それまでの空気が少し変わったこともあり、空間に染み渡るように感じられる1曲だった。「majority blues」の後にも、少し長めのMC。

橋本「なんかタンバリンの位置が変になったみたい。」
福岡「タンバリンがくっついてきた。まさかの機械ではなく、アナログが(笑)」
(福岡さんがタンバリンを調整している間、橋本さんが話して場をつなぐ。)
橋本「浜名湖パルパルって有名?……行ってないんやけど。有名じゃないん?」
(オーディエンス数名から「有名」という声)
橋本「有名? ちょっとだけ? ちょっと、有名かぁ。」
(オーディエンスの1人から「餃子食べた?」の声)
橋本「食べてません! だって、昨日深夜0時に到着して、だからそのまま寝ましたよね。直った?」
福岡「(ハーモナイザーがかかっているのか、和音になった声で)うん、直った。声が直ってなかった(笑) これ、声も特殊なやつで、声に反応して勝手にハモってくれるっていう。凄いでしょ? 文明の利器!」
(このあと、福岡さんが簡単に機材の説明をする。)

 13曲目は「Magical Fiction」。このライブの時点では、まだ発売されていない新曲。今回のツアーを通じて、グルーヴ感が増して、演奏が向上していっているのがわかる。この曲では、福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザーを担当しているのだが、シンセサイザーもリズム楽器のように機能する演奏で、また新しい2ピースの可能性が感じられる。

 14曲目はメドレーのように「こころとあたま」と「湯気」を合わせた演奏。「こころとあたま」の間奏部分から、橋本さんがシンセからエレキ・ギターに楽器を替え「湯気」へ。その後、再び「こころとあたま」のアウトロ部分に戻るという構成。アレンジ的にもサウンド的にも、チャットモンチーのハードな部分が爆発する演奏だった。ただ単に過去のアレンジとサウンドをなぞるだけでなく、「こころとあたま」のイントロでは、シンセでギターにフランジャーをかけたような、ジェット気流のような音を出していて、音源とは違った方法でドライブ感を生んでいた。チャットモンチーには、こういうところのクリエイティビティにも本当に感心させられる。

 15曲目は「満月に吠えろ」。音源に近いアレンジで、以前と同じく橋本さんのダンスもあった。これで本編は終了。

 アンコールでは、まず手品のBGMのような曲が流れ始め、客電がつく。しばらくすると、マジシャン的なハットと白い手袋を身につけた橋本さんと福岡さんがステージへ。ハットから次々と今回のツアーグッズを出していく。これがグッズ紹介ということのようだ。

福岡「すごくない? こんな音も入ってるの! でもな、Sweet 80’sってタイトルやから、マジックの音ではないんやけど(笑)」
橋本「80年代ってこと?」
福岡「うん。ごめんな、なんか楽屋みたいな感じで(笑)」
橋本「でも、マジックがすごい流行ってたのって、わりとそのへんの時代じゃない?」
福岡「ハンドパワーの時代?」
橋本「ハンドパワーの時代。栗間太澄(くりまたすみ)です、って出てたころ! 90年代かな?」
福岡「知らない人は検索してみてください(笑)」
橋本「アンコール、ありがとうございます。」
福岡「アンコールしに来たのに、いきなり手品して、ごめんな(笑)」
橋本「じゃあ、私たちの尊敬するGO!GO!7188さんの瑠璃色という曲をやりたいと思います。」

 アンコール1曲目は、橋本さんからタイトルが告げられたとおり、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。橋本さんがギター、福岡さんがシンセサイザーで、ドラムは打ち込み。GO!GO!7188のオリジナル・バージョンはサビ前にテンポの切り替えもあり、勢いのある1曲だが、チャットモンチーのカバーは、それぞれの楽器が絡み合うようで、徐々にグルーヴ感が生まれていくアレンジ。もし音源化されたら、中毒性の高い、いわゆるスルメ曲のような1曲になるんじゃないかと思う。

 アンコール2曲目は「シャングリラ」。聴き慣れたバスドラのリズムが、打ち込みにより流れ始める。バックにバスドラの4つ打ちが流れるなか、福岡さんが「ほんまありがとう! ここに集まってくれた皆さんには、感謝してもしきれません。これからも、チャットモンチーのこと見守ってね!」と挨拶してから、ベースを弾き始める。その後、橋本さんのギターも入り、音源に比較的近いアレンジ。オーディエンスも今日一番と言っていいぐらいに盛り上がり、ライブが終了。

 ツアーも5本目。ライブでの機械との付き合い方もこなれてきて、演奏がどんどん向上していっているのが実感できるライブでした。本当にすごいライブバンドだ、チャットモンチー!


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月24日
浜松 窓枠
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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