チャットモンチー 2017年4月16日 盛岡Club Change WAVE

チャットモンチー
2017年4月16日
盛岡Club Change WAVE
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 4月16日はメンバーの福岡晃子さんの誕生日のため、入場時にクラッカーが配られ、ライブ中に橋本さんの合図でクラッカーを鳴らしてください、との説明があった。

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れ始める。前日の青森公演でも言及されていたが、このSEは橋本さんが作成したとのこと。SEが終盤にさしかかると、チャットモンチーの2人がステージへ。

 今回のツアーでは、ステージ中央に2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されている。オーディエンス側から見て、右側のシンセに橋本さん、左側のシンセに福岡さんが座る。シンセサイザー以外のアンプやドラムなども、2人を囲むように所狭しとセッティングされている。

 打ち込みによる均質なドラムのビートが流れ始め、2人がシンセサイザーでコードと旋律を弾いていく。1曲目は「レディナビゲーション」。シンセのフレーズは、確かにレディナビゲーションのイントロのギターをなぞってはいるが、音質が全く異なるため、別の曲のようだ。全体のリズム感、サウンドも、ギターを前面に押し出したロックではなく、テクノに近い。それでいて、2人の弾くシンセサイザーからは、生演奏によるグルーヴも感じられ、人力テクノといった感じのアレンジだ。

 1曲目が終わると、橋本さんは「皆さんこんばんは、チャットモンチーです! 盛岡に来たのは2、3年ぶりです。前はサポートメンバーを入れて6人で来たんですけど、今日はパソコンと2人で来ました!」、福岡さんは「パソコンと2人で、メカットモンチーです。今日はこんな感じで、見たことない感じになると思いますけど、ここまで情報がないのにチケットを買ってくれた人は、のれるはず!」と挨拶。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」と、2人のシンセサイザーと打ち込みによるメカットモンチー体制でのライブが続く。いずれも、今までのチャットモンチーのようなギター・オリエンテッドなサウンドとアレンジではなく、シンセの電子音とテクノ的なビートが目立つ演奏。

 「恋の煙」の後には、ここまでの3曲とは少し変わった、軽やかなリズムが流れ始める。そのリズムをバックに、2人が話を始める。

福岡「皆さん、すごいですね! 3曲でだいぶ雰囲気つかんできてくれて、ありがとうございます。今から、誕生日の曲をやるんですけど、今日誕生日の人いますか?」
(オーディエンスから手が上がらず)
福岡「えっ? もしかして私だけ!?」(4月16日は福岡さんの誕生日)
(オーディエンスから拍手と大歓声)
橋本「ほんとにおらん?」
(オーディエンスの1人が手を上げる)
福岡「おった、おった! 一緒やん! 4月16日生まれは大体友達(笑) じゃあ、今日は私の誕生日なんで特別に、ここ1週間以内が誕生日って人?」
(オーディエンスの数人から手が上がる)
福岡「じゃあ、サビのハッピーなバースデーってところで、ここ1週間が誕生日の人たちに拍手してあげてください! 私は自分で歌うんですけどね(笑)」
橋本「(オーディエンスに向かって)じゃあ、みんなあれ最後ね。」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。ドラムの打ち込みに2人のシンセサイザーという編成は変わらないが、ここまでの3曲に比べると、シンセの音色がアコーディオンのような温かみのあるもので、全体としてテクノ色は薄く、雰囲気がだいぶ異なる演奏。

 曲の最後の部分になると、橋本さんがオーディエンスに向かって「みんな出してください。行くよ。ワン、ツー、スリー、フォー!」と声をかけ、「フォー!」のタイミングで一斉にクラッカーを鳴らす。

橋本「おめでとう、あっこちゃん!」
(オーディエンスからも「おめでとう!」の声)
橋本「みんな、すごい良かった!」
福岡「火薬の匂いもすごい(笑) ありがとう! えっちゃんが“最後ね”って言ったとき、なに!?って思った(笑) 前にもやられたことがあって、全員が私の顔になるっていう、こわいことやられたので(笑)」
橋本「それも考えたんや。京都でそういうサプライズやって、みんなあっこちゃんの顔になったんですけど、違う人の顔でその二の舞にしようかなと思ったんよ。今あっこちゃん、めっちゃ好きやから『じゃりン子チエ』の顔とか、考えたけど、歌詞が“クラッカーの音”やから、クラッカーにしたよ。」
福岡「ありがとう、やさしい!」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「どうしよ、ここで抱負とか言うべきなんですかね(笑) えっと、びっくりしすぎて言葉が出てこないんですけど、今年も健康に、30代はほとんど厄年と言われている女性ですけれでも、そんなことを吹き飛ばすぐらい、いい曲をやっていきたいと思います! どうやって、ライブに戻ったらいいかわからない(笑)」
橋本「それとなく、戻るな。」
(シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「急な電話(笑) ガチャ! もしもーし?」
橋本「もしもし、あっこちゃん? 今なにしてたの?」
福岡「今ねぇ、盛岡でねぇ、300人に発砲されてました。すごかったよ! ハッピーな発砲だったよ(笑)」
橋本「ハッピーな発砲っていいなぁ。」
福岡「そういう発泡酒、できるかも(笑) えっちゃんは何してるの?」
橋本「岩山でねぇ、動物見てる。」
福岡「岩山ってところに動物園があるの?」
橋本「うん。」
福岡「で、なんの動物見てるの?」
橋本「最近、新しく入ったっていうカピバラ見てる。」
福岡「そうなんや…もしかして暇なの?笑」
橋本「うん、暇してるから、あっこちゃんのとこ行っていい?」
福岡「いいよ、発砲されるけど気をつけて(笑)」
橋本 (シンセサイザーで、スーパーカー的な車のエンジン音を鳴らし、福岡さんの隣へ移動)
福岡「速いにもほどがある(笑) F1やん(笑)」
橋本「めっちゃ速かったやろ。もうちょっとで通り過ぎるところやった。」
福岡「(オーディエンスを橋本さんに紹介しながら) あ、このみなさんが発砲してくれた皆さんです。」
橋本「ありがとうございます。」
福岡「えっちゃん、私の部屋どう? ちょっと発砲の残骸がいっぱいあるけど(笑)」
(ステージ上にも、クラッカーから放出された紙テープなどが随所に残っている)
橋本「色どりがそえられて、めっちゃハッピーな感じになってるやん。」
福岡「しかも、ハッピーな発砲っていう新しいラップも生み出せたところで、ちょっとラップやろか?」
橋本「そうしようか!」

 5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。ドラムが打ち込みから生音に切り替わっただけで、かなり肉体的なサウンドの感じる。橋本さんのシンセは、アルペジエーターのように一音を押すと、フレーズになって音が流れる設定になっているようだ。「ぜんぶカン」演奏後に、橋本さんが福岡さんの隣から、元々の位置に戻り、また長めのMC。

橋本「あー、楽しかった。」
福岡「帰るのも、速いね(笑)」
橋本「あー、今度はあっこちゃん来んかなぁ、私のとこに。今日、誕生にあっこちゃん…」
(福岡さんがシンセサイザーで、パトカーのサイレン音を鳴らす)
福岡「あの300人は、連行されてしまいました。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「マジで!? 危険やな、確かに。」
福岡「じゃあ、えっちゃん家、遊びに行くわ。」
(福岡さんがシンセサイザーで、電車の走る音を鳴らし、橋本さんの隣へ移動)
橋本「(オーディエンスに向かって) 岩山公園に南京錠があるって、本当ですか?」
(オーディエンスの1人が「本当」と答える)
橋本「なんか、恋愛成就みたいな…シド・アンド・ナンシーみたいな…」
(オーディエンスから笑い)
福岡「そういうことかな?」
橋本「っていう余談な。」
福岡「ちなみにご利益あるんですか?」
(オーディエンスの1人が「知らん」と答える)
福岡「知らん(笑)」
橋本「ご利益なさそうな感じですね。」
福岡「徳島にもそういうのあるよな、一緒に登ったら絶対に別れる眉山!笑」
橋本「なんなんだろうな、そういうの多いよな!笑」
福岡「そのエピソードいるんかいなって思う。岩山公園はどうなんだろうな?」
橋本「たぶん、他の公園がライバルやから、触れ回してるんよ。」
福岡「えっちゃんの観点(笑) えっちゃん家、意外と和室なんやね。フォークソングでもやる?」
橋本「やろうか、四畳半の。」

 6曲目は「余談」。MCでの発言どおり、ここまでのメカ体制とは打って変わって、アコースティックなアレンジ。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当し、打ち込みは使用していないようだ。電子音を多用したここまでのライブとのコントラストで、非常にオーガニックなサウンドに感じる。

 7曲目は、福岡さんが橋本さんの隣から、元々のポジションに戻り「CAT WALK」。担当楽器は、橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザー。この曲では、心臓の鼓動のような音のビートが打ち込みで同期されている。

 8曲目は、橋本さんがギターをシンラインに持ち替え、「ほとんどチョコレート」。福岡さんは引き続き、シンセサイザーを担当し、リズム楽器などは打ち込み。ほぼ、音源のどおりのアレンジで、ライブ序盤の電子音を前面に押し出したサウンド・プロダクションから、徐々に耳ざわりが変わってきている。「ほとんどチョコレート」の後にはMC。

福岡「いいとこですよね、盛岡。私、おおはた雄一さんと一緒に、くもゆきってバンドやってるんですけど、おおはたさんもめっちゃ盛岡好きなんよ。常宿があるって言ってた(笑)」
橋本「なに、常宿(じょうやど)って?」
福岡「よく泊まる宿。だから、おかえりなさいって言われるって。それぐらい、盛岡好きなんやって。」
橋本「あやしい(笑) おおはたさん、あやしい!」
福岡「そんな、なんもないっす(笑) ほんまに盛岡好きなんやって!」
橋本「へぇ〜、ええことやなぁ。」

福岡「ちょっとぶりなのに、こんな様変わりしたチャットモンチーを見に来てくれて、ありがとうございます。パソコンで音を作って、足元で操作しつつ、やっているんですが、ここからは生音も混じえて、やっていきたいと思いますんで、ノッテくれよ!笑」

 9曲目は、橋本さんがエレキ・ギター、福岡さんは足でバスドラのペダルを踏みながらシンセサイザーを担当。アルバム『変身』に収録のバージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXに沿った演奏。福岡さんの言葉どおり、ギターの音は鋭く、バスドラの音は下から響き、ライブ序盤のメカットモンチーなアレンジと比較すると、格段にソリッドな音像になっている。

 10曲目は「8cmのピンヒール」。橋本さんは引き続きエレキギター、福岡さんはドラムを担当。アルバム『変身』時代を彷彿とさせる、アンサンブルが極限まで絞り込まれた、ソリッドかつパワフルなアンサンブルが展開。

 11曲目「消えない星」、12曲目「majority blues」、13曲目「Magical Fiction」と、現状の2人体制になってからレコーディングされた楽曲が続く。いずれも、音源に忠実なアレンジで、グルーヴ感抜群のチャットモンチーらしい演奏が繰り広げられる。

 14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのようにシームレスに繋いで披露。タイトな部分と、荒々しい部分が同居し、疾走感と躍動感の溢れる、これまでのチャットモンチーが得意とする演奏が展開。電子音主体の序盤から、肉体的でオルタナティヴ・ロック全開のアレンジまで、無理なく1本のライブのなかに詰め込めるセンスと幅は、本当に驚異的だと思う。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。橋本さんがエレキ・ギター、福岡さんがドラムを担当し、基本的には音源に近いアレンジだが、打ち込みによる電子音が足されており、アクセントになっている。曲中には橋本さんのダンスも披露され、本編が終了。

 アンコールでは、ここまでのツアーと同様、手品のBGMのような音楽が流れ始め、2人がステージへ。これまでのツアーでは、BGMに合わせてチャットモンチーの2人が手品の体で帽子からグッズを出し、オーディエンスに紹介していくが、この日が誕生日の福岡さんに向けて、ここでもサプライズ。

 手品のBGMが、途中から『ウォーキング・デッド』のテーマ曲に切り替わり、さらに「Happy Birthday to You」へ。オーディエンスからは自然と歌声が起こり、曲中にスタッフによってケーキが運ばれてくる。曲は終わると、いたるところから「おめでとう!」の声と大歓声。このあと、橋本さんから福岡さんへのプレゼント、スタッフによる記念撮影があり、改めて2人のMCへ。

福岡「ほんとはね、ここで手品のコーナーがあるんですけど、いきなり『ウォーキング・デッド』のテーマが流れてきたから、サプライズでみんながゾンビになるんじゃないかと思って、すごいドキドキした!笑」
橋本「そっか、お客さんからなんかやられると思って!笑」
福岡「そう、ウォ〜〜とか言って。ありがとうございます。私の為に、こんなに時間を割いていただいて。なんか、達成感がすごい、達成感っていうか満足感がすごい(笑) じゃあ、アンコールやりますか?」
オーディエンスから大きな拍手。
福岡「アンコールも申し訳ないことにね、私の好きな曲なんですよ。」
橋本「そうなの。申し訳なくないよ!」
福岡「ほんま? さらに申し訳ないことに、完成度がめっちゃ低いんですよ(笑) 昨日、青森で。完成度低いんですけど、新しいカバーやってもいいですかって聞いたら、みんながいいよって言ったから、やらしてもらったんですけど、1000点中2点の演奏でした。」
橋本「超低いやん!」
福岡「今日は12点を目指して頑張る! いいかな、それでも? いっか、誕生日やけん!」
オーディエンスから拍手と歓声。
福岡「いけるかなー?」
橋本「うん、行ける!」
福岡「ちなみにタイトル言っても、わかる人半分もいない気がするんですけど、チャゲアスやるんですよ。チャゲアス大好きで、ラジオのレギュラーやってた時に、かけたかったんですけど、規制がかかってかけれなかったんですよ(笑) だから、自分のライブでやるっていうね。えっちゃんにASKAやってもらって。だから、まだ完成度が低くて、私Chageまで行けてないんですよ。」
橋本「じゃあ、お互い目指そう! ChageとASKAを。」

 アンコール1曲目に演奏されたのは、CHAGE and ASKAの「モーニングムーン」。担当楽器は、橋本さんがボーカルとシェイカー、福岡さんがキーボード。

 キーボードの演奏は確かにテクニカルで、流れるようなフレーズと、リズムのキープも兼ねたパーカッシヴなフレーズが共存し、なかなか難易度が高そう。しかし、前日の青森公演での演奏も、本人が「2点」と評価するほどの完成度ではなく、キーボートと橋本さんの声が絡み合い、グルーブ感を持った良い演奏。この日は前日からさら演奏の精度が向上し、楽器数は少ないながらバンド感の増した演奏となっていた。

福岡「2点ではなかった気がする。」
橋本「2点より上がった!」
福岡「4点ぐらい行ってたかな?」
橋本「4点ぐらい行ってた!」
橋本・福岡「ありがとうございます!」
福岡「それでは皆さん、最後にこの曲で一緒に盛り上がってください!」

 福岡さんの上記の言葉に導かれ、チャットモンチーのファンにはお馴染みのバスドラのリズムが響き始める。アンコール2曲目、この日ラストに演奏されたのは「シャングリラ」。

 ドラムは打ち込み、福岡さんはベース、橋本さんはギターを担当。ドラム以外にも、打ち込みによる電子的なサウンドが足されているが、リズムと楽曲の構造はオリジナル通り。しかし、イントロ部分で従来には無かったギターのフレーズを弾いたりと、随所に隠し味のようにアレンジが施されている。サウンドやリズム構造に、大胆なアレンジを施してきたこの日のメカットモンチー体制でのライブの中では、ノリ方がわかるアレンジであったため、オーディエンスも非常に盛り上がりライブは終了。

 最後の「シャングリラ」は前述のとおり、リズム構造は共通しているアレンジだったため、オーディエンスも従来通りのノリ方をしていましたが、一部の楽曲は、解体・再構築していると言っても良いぐらい、大きなアレンジを加えられており、2人の音楽的な引き出しの多さを、改めて感じるライブでした。

 例えば、激しく歪んだソリッドなギターが主軸だった曲を、ソフトなシンセサイザーの音色で組み立て直し、全く別の曲のように響かせる場面も多々。このような大胆なアレンジには、メロディーを前景化させたり、あるいは既存のアレンジとは違ったグルーヴ感が溢れていたりと、楽曲の別の魅力を引き出す効果があります。少なくとも僕は、「この曲にはまだこんな魅力があったか」「この曲のリズムの気持ちよさは、ドラムと歌の関係性にあったか」など、多くの気づきがあるライブでしたね。

 リズム、メロディー、ハーモニー、そしてサウンド。音楽を形作る要素を、既存の楽曲のなかで変幻自在に操り、全く別の一面を見せるチャットモンチーの手腕は、本当に見事! 改めて、すごいバンドだと思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年4月16日
盛岡Club Change WAVE
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. モーニングムーン (チャゲ&飛鳥カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年4月15日 青森Quarter

チャットモンチー
2017年4月15日
青森Quarter
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れる。ベースラインがリズムを刻むなか、様々な効果音が飛び交うこの曲。SEが終盤に差し掛かると、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されており、オーディエンス側から見て右側に橋本さん、左側に福岡さんが座る。オーディエンスからは、盛大な拍手と歓声。

 モニター用のヘッドホンも装着し、1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込み然とした均質な音のドラムの上に、2人がシンセサイザーでコードやベースラインを弾いていく。アルバム『YOU MORE』収録の音源とは、明らかに耳触りが異なるサウンドとアレンジで、オーディエンスからは戸惑いも感じられる。しかし、1曲が終わる頃には、みんな曲に合わせて緩やかに揺れていた。演奏が終わると、大きな拍手。

 橋本さんが「皆さん、こんばんはチャットモンチーです! 青森に来たのは…たぶん4年ぶり!…ぐらいです!」、福岡さんが「4年前も2人だったと思うんですけど、またこんなにも変わってしまいました(笑) でも、見捨てずに来てくれてありがとうございます。」と挨拶。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源とは異なるシンセサイザーの電子音感が目立つアレンジ。特に「恋の煙」は、イントロの歪んだギターがシンセサイザーに置き換えられ、サウンドの違いが際立っていた。打ち込みによるドラムのビートも、打ち込み感を強調するような均質なもの。

 3曲目「恋の煙」が終わると、打ち込みによるドラムが流れ始める。そのドラムをバックに、2人が話を始める。

福岡「いきなりですが、今日誕生日って人いますか?」
(オーディエンス数人から手が上がる)
福岡「おー、めっちゃおる! ちなみにアラウンド3日以内って人はいますか?」
(また、数人から手が上がる)
橋本「あっこちゃんもやん!」
福岡「そう、私も! 私と同じ誕生日の人おる? おらんか。今から「バースデーケーキの上を歩いて帰った」という曲をやるので、サビのところで誕生日の人に向かって、うわーって拍手してあげてください!」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。この曲もドラムは打ち込み、2人がそれぞれシンセサイザーを弾くのだが、それまでの3曲に比べれと、ドラムのリズムが軽やかで、バンド感を感じさせるアレンジ。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後にはMC。

橋本 (シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「ガチャ! もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?」
福岡「なんなん? 携帯じゃなくて、自宅の電話にしてきて。」
橋本「今なにしてる?」
福岡「今、青森でね、300人と一緒にホタテ食べてるわ。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「マジで? 300個もホタテ?」
福岡「うん、余裕余裕。ホタテが売るほどあるけん、青森は! ほたてソフトクリームまである! えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ワ・ラッセにいるんだけど。食べ放題で、めっちゃチラシ寿司食べてるんやけど。食べ終わったんで、あっこちゃん家にいってもいいかな?」
福岡「いいよ、青森の私の別荘ね。ペンソンにね(笑)」
橋本「じゃあ、青い森鉄道に乗っていくわ。」
(シンセサイザーで電車が走る音を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣へ移動)
福岡「じゃあ、うちに来たからには、ラップやってってもらうから。」

 チャットモンチーでラップが入る曲といえば「ぜんぶカン」。この曲では、福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザーを担当。橋本さんが弾くシンセサイザーは、一音を弾くと、その音からフレーズが続くように設定されているようだ。まず橋本さんがシンセサイザーを弾くが、弾く音を間違ったのか、不安定なフレーズが演奏される。

橋本「ちょっと待って!」
福岡「ヤバい(笑) なに今の不穏な音?」
橋本「ごめん、もう1回いきます!」

 あらためて5曲目「ぜんぶカン」がスタート。ベースの音も聞こえたので、ベースは打ち込んだものを再生させているようだ。ドラムが生演奏に切り替わったため、ここまでのメカットモンチー体制のアレンジに比べると、生バンド感が増している。「ぜんぶカン」の後には、またMC。

橋本 (福岡さん側から、元々いたステージ右側へ戻る)
福岡 (シンセサイザーで雨が降る音を鳴らす)
橋本「雨?」
福岡 (カミナリの音を鳴らす)
橋本「カミナリやん。」
福岡 (吹雪の音を鳴らす)
橋本「どこ? 急に荒れたん、天気が?」
福岡 (鳥のさえずりの音を出す)
橋本「晴れたん? 森? やっぱり青い森?」
福岡 (馬が走る音を出す)
橋本「馬? なんのヒントもなかったけど、来るんやな私の家に。」
福岡「馬に乗って行こうと思ったんやけど、馬の距離じゃなかったみたい、えっちゃん家。」
(シンセサイザーでヘリのプロペラ音を鳴らし、福岡さんが橋本さんの隣へ移動)
橋本「ヘリや。」
福岡「えっちゃん家は、白を基調としてるんやね。」
橋本「そうなの、でも床だけ黄色いの。たまごを意識してるの。目玉焼き。」
福岡「なるほどね(笑) いっつもここそうなんですけど、面白いこと言うたらいかんコーナーなんですよ。これからいい曲やろうとしてるのに。そういう歌か。」
橋本「そういう歌。」
福岡「余談という曲をやりたいと思います。」

 6曲目は「余談」。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当。この曲は打ち込み音源も使用していないようで、ここまでのライブとは一変して、アコースティックでしっとりと聴かせるアレンジ。

 福岡さんが、橋本さんの隣から元の位置に戻り、7曲目は「CAT WALK」。橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。心臓の鼓動を思わせるような深くエコーのかかったバスドラのような音も鳴っていた。この音は、打ち込みのようだ。橋本さんは弾き語りのようにゆったりしたコード・ストローク、福岡さんはシンセサイザーでピアノの音色を使い、隙間を埋めるように音を紡いでいく。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをアコースティックからエレキに持ち替え、福岡さんは引き続きシンセサイザーを担当。ドラムは打ち込んだものを同期しているようだ。「ほとんどチョコレート」の後にはMCで、今回の機材の説明。

福岡「(プライバシー保護のようなエフェクトのかかった声で)ハロー!」
(オーディエンスの一部から「ハロー」という返事)
福岡「マジか、ありがとう! ハローで返してくれるなんて。今、声が変でしょ? メカになってから導入したんですけど、別に犯罪者なわけじゃないです(笑) 今回のメカットモンチーは、メカの力を最大限に駆使してやっておりまして、パソコン君しかり、メカはもうメンバーみたいなものなんです。」
橋本「…はい。」
福岡「ここに理解者が1人いました(笑) そうなんよ。見てるだけじゃいまいちわからんという方のために、いつも説明しようとするんですが、説明の仕方が難しいんですけど(笑) さっきの声が変わるやつは、私とえっちゃんの音を感知して、勝手にハモってくれる機械なんですよ! 皆さんもお金払えば明日からハモってもらえますよ(笑) 文明はお金で買えるんです! あと、曲の合間の音とか、オープニングの音はえっちゃんが作ったんですよ。」
(オーディエンスから「へぇー」という感嘆の声)
福岡「すごいでしょ?」
(オーディエンスから「すごーい!」の声)
橋本「違うんよ、今のなんて氷山の一角。一角以外の部分は、全部あっこちゃんが担って、パソコン使いの女王となって、ここに君臨しています!」
福岡「そうなんや、わたし女王なんや(笑)」
橋本「うん、すごい操ってる!」
福岡「えっちゃんも私も足元で操ってて、なるべく心まではメカにならないようにと(笑) だから、わりとフィジカルですよね。」
橋本「4年前に2ピースで来たときの考え方とはガラリと変わって、当時はもうクリックすら嫌ってて、アイツに支配されたくないっていうぐらい、電子的なものがイヤだった時期で。」
福岡「クリックの野郎!みたいな(笑)」
橋本「そう、絶対合わせません!みたいな感じで、もうズレて行こう!みたいな感じで、やってたんですけど、4年も経つと、もう頼って頼って(笑) 変わるもんですねぇ。」
福岡「でも、チャットがメカをやるのはこういうことになるんだっていう、なるべくメカだけど肉体的になりたいから、足でリズムを切り替えてたんですよ、最初の2回ぐらい。あんまりそういうことするから、パソコン止まったりして。やっぱりメンバー同士の争いはありますよね(笑)」
橋本「もう、出世魚みたいな感じですよね。」
福岡「今どのへんなんやろ? 出世魚でいうと(笑) もう一番デカいかなぁ?」
橋本「鮭?」
福岡「戻り鮭かなぁ? もう、みんなついてきてないよ(笑) じゃあ、えっちゃんが作った音を聴いてもらおうかな。」

 9曲目は「変身」。福岡さんの言葉どおり、まず橋本さんが作ったという、宇宙空間を漂うようなスペーシーなSEが流れ始める。この曲では橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラム。それ以外にもベースや効果音も聞こえるが、これらは全て打ち込んだものを同期させているようだ。オリジナル・バージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXに準拠したアレンジでの演奏だが、ライブ序盤の楽曲に比べると、生バンド感はますます増してきていた。

 10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」も、引き続き橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラムを担当。この2曲は変身TOUR期に近いアレンジとサウンドで、これまでのチャットモンチーが得意としていたグルーブ感があふれていた。

 橋本さんの「東京と徳島のことを思って書いた曲です」という紹介から、12曲目は「majority blues」。現状の2ピースになってからの楽曲なので、ほぼ音源どおりのアレンジ。

 出たばかりの新曲ということで、収録曲とPVの紹介をしてから、13曲目に披露されたのは「Magical Fiction」。橋本さんはシンセサイザー、福岡さんはドラムを担当。この曲も現状の2ピース体制になってからの楽曲なので、音源どおりのアレンジでの演奏。ベースは打ち込みのようだ。

 14曲目は「こころとあたま」から「湯気」のメドレー。担当楽器は引き続き、橋本さんがシンセ、福岡さんがドラム。ギターレスの編成だが「こころとあたま」のイントロでは、橋本さんがラフなリズムで、フランジャーのかかったような音色でシンセを引き、バンド感は強い。

 「こころとあたま」のサビ後の間奏部分で、橋本さんがシンセからエレキ・ギターへ。福岡さんがドラムを叩き続けるなか、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。非常に荒々しく、今までのチャットモンチーらしい音とグルーヴ感のある演奏だった。

 本編ラスト15曲目は「満月に吠えろ」。音源に近いアレンジだが、イントロ部分のギターが、音源だとドラムのカウントのあと最初の8小節はコード弾きのみ、その後8小節にギター・ソロが入ってくるが、今回のツアーでは最初からギター・ソロが入ってくる。また、橋本さんのギターと福岡さんのドラム以外にも、いくつかの電子音が打ち込みで同期されているようだ。

 アンコールでは、まず手品風のBGMが流れ始め、しばらくするとチャットモンチーの2人がステージへ。背の高い帽子と、白い手袋を着用しており、マジシャンに扮しているということのようだ。帽子の中から2人が次々に今回のツアーグッズを出していく。

福岡「なんやねんって感じでしょ(笑) これが私たちが編み出した、喋らない物販紹介です。まぁ、アンコールなんでね、おまけー!みたいな。」
橋本「今回のツアーでは、アンコールの1曲目はカバーしようって決めてて、この4月クール、新しい曲を用意…し始めています! 今の語尾の意味は?」
福岡「あのな、練習したんですよ新しい曲を。そしたら、なかなかの低い完成度で(笑) でも、どうしてもやりたいんですよ。これから徐々にうまくなっていくと思うんですけど…とりあえず聴く?笑」
(オーディエンスからは拍手と歓声)
橋本「ごめんな。先に謝っとこうか。」
福岡「先にめっちゃ謝っとく!」
橋本「でも、どうしてもやりたくって、今日もギリギリまで練習してたんですけど、やっぱり100%までいってない状態なんやけど、どうしてもやりたいから、やらせてください!」
(オーディエンスからは大きな拍手)
福岡「(シンセを弾きながら)ほんま自信ないけん、間違えたらやり直させてな。」
橋本「あっこちゃんが愛してやまない人のカバー。」
福岡「えっちゃんが一緒にやってくれるって言うから。世代的に知らん人おるかもしれんけど、手拍子してのってればいけると思います。」
橋本「じゃあ、エリandアキで、CHAGE and ASKAのモーニングムーンやります。」

 アンコール1曲目はCHAGE and ASKA(チャゲ・アンド・アスカ)のカバーで「モーニングムーン」。福岡さんがピアノの音色に設定されたシンセサイザー、橋本さんがボーカルとシェイカーとタンバリンを担当。この曲では、打ち込みは使用していない。

 橋本さんの「いっせーのーで」という声から曲がスタート。ピアノは難易度が高いらしく、1回目はイントロ部分で福岡さんが「ごめん、もう1回やらして!」と言って、仕切り直し。少しテンポを落としてから、今度は「ワン、ツー、さん、はい!」という声からスタート。福岡さんのピアノと橋本さんのボーカルとパーカッションのみの編成だが、2人の間でしっかりとグルーブ感が生まれていて、やっぱりチャットモンチーはバンドだなと感じる演奏。

福岡「もう、2点! 2点のできやったけど、無事完奏できました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「チャゲアス大好きなんですよ、私。もちろん飛鳥も大好きで…」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうだよ、チャゲだけ好きなんてな。両方でCHAGE and ASKAやから。」
福岡「そう、両方好きで、ラジオでかけたかったけど、かけたらあかんって言われて(笑) 今、ちょっと世の中的にあかんって言われたから、ツアーでやりました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
橋本「よかったな。」
福岡「ちょっと、えっちゃんに飛鳥を見たよ。一瞬しか見れんかったけど、飛鳥や!って。」
橋本「ほんま? ありがとう!」
福岡「こちらこそ、ありがとう!笑」

 アンコール2曲目は「シャングリラ」。橋本さんがギター、福岡さんがベース、それ以外のドラムと電子音は打ち込み。まず、聞き慣れたバスドラのリズムが流れ始める。福岡さんが「最後はこの曲で盛り上がっていただきたいと思います!」と言ってから、スネアが入り、橋本さんはスライド・ギターを思わせるようなフレーズを弾き始める。

 ところどころアレンジは変わっているが、ドラムのリズムやベースラインなど基本的な構成は音源どおり。オーディエンスも非常に盛り上がり、この日のライブは終了!

 月が変わって、4月1本目のライブ。アンコールでのカバー曲にもあらわれていますが、今回のツアーは試行錯誤の過程も見せてくれているようで、メンバーのMCも今までになくリラックスしているように感じます。「試行錯誤」と書きましたが、決してライブのクオリティが低いということではありませんよ。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年4月15日
青森クォーター (Quarter)
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. モーニングムーン (チャゲ&飛鳥カバー)
EN2. シャングリラ




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