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チャットモンチー 2018年7月21日 こなそんフェス2018

チャットモンチー
2018年7月21日
アスティとくしま
「チャットモンチーのこなそんフェス2018」

 チャットモンチーの地元徳島で、7月21日と22日の2日間にわたって開催された、通称「こなそんフェス」こと「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 〜みな、おいでなしてよ!〜」。かねてより発表されていたとおり、2日目の22日のライヴをもって、チャットモンチーは「完結」となりました。

 そのため1日目の7月21日は、本人たち曰く「プレ完結」となる公演。2daysの1日目ということで、位置付けの難しいところもあるライブですが、結論から申し上げると、とても価値のあるライブとなりました。その理由は、2011年に脱退したドラムの高橋久美子さんが、チャットモンチーのライブ中にステージに上がり、しかもドラムを叩いたため。

 多くのバンドや芸人が出演する「こなそんフェス」ですが、ここではチャットモンチーにまつわることを中心に、前半に当日のライブ・レポート、後半に僕の雑感を記述します。

12:50〜 前説

 開演予定時間は13時。10分前の12:50頃になると、この日のMCを務める小籔千豊さんとチャットモンチーの2人がステージへ。いわゆる「前説」を始めます。

 「ライブ中の撮影・録音は禁止だけど、提灯タワーや顔はめパネルなどは、どんどん撮ってSNSにアップしてね!」「会場内は飲食OKだけど、ラーメンなどの汁物だけはNG!」など、注意事項を伝えていきます。

 終始にこやかに、思いっきり楽しんでほしいことをアピールするチャットモンチーに対し、小籔さんは終始テンション低め。ご本人いわく「大好きだった幼稚園の先生が、やめてしまうような気持ちです。皆さん盛り上がってくださいよ! 僕だけ悲しんでますんで。」

13:00〜 ライヴ本編スタート

 前説に続いて、ライヴの本編がスタート。1組目は、シュノーケル。チャットモンチーのファンにはご周知のとおり、2006年から2008年まで3年連続で、チャットモンチーとBase Ball Bearと共に「若若男女サマーツアー」を開催したバンドです。

 MCでも、ボーカルの西村さんが「僕らシュノーケルの音楽人生にとって、一番楽しかった思い出が、チャットモンチーとBase Ball Bearと3組で回った若若男女サマーツアーです。その最後の開催から、ちょうど10年経ちまして、3組とも色々なことがあったんですけど、今日またこの3組が同じステージを踏める日を、チャットモンチーが用意してくれたました。ありがとう!」と発言。

※ 下の画像は、こなそんフェスの公式Twitter(@konason_staff)より
https://twitter.com/konason_staff/status/1020530701102342144

 その後、2組目の「yonige」、転換中の芸人枠で「野性爆弾とガリットチュウ福島」を挟み、15:05からはBase Ball Bear。前述のとおり、こちらも若若男女サマーツアーを共に回り、チャットモンチーとはつながりの深いバンド。

 ボーカルの小出さんはMCで「どういう気持ちで今日が来るのかなというのが、想像できてなくて、昨日までずっと”明日どんな感じなんだろう?”って、1日に何回か頭の中をよぎるんですよね。正直、泣くのかなと思ってたんですよ。そうしたら、楽屋入ってテーブルに、チャットモンチーからのメッセージがあったんですけど、そこに”Base Ball Bearへ 泣かないでね”って書いてあったの。これで泣いたら、相当みっともないなと思って(笑) 今日はチャットモンチーが地元でやるお祭りですから、皆さんと一緒に楽しんでいきたい、と思っております!」と発言。

※ 下の画像は、こなそんフェスの公式Twitter(@konason_staff)より
https://twitter.com/konason_staff/status/1020562465011068928

 Base Ball Bearの後は、南海キャンディーズ、EGO-WRAPPIN’、奥田民生、ミキと続き、ついに最後のチャットモンチーへ。13時から開演した長丁場のイベントですが、体感的にはあっという間です。

19:30〜 チャットモンチー

 2005年に、3ピース編成でデビューしたチャットモンチー。2011年にドラムの高橋さん脱退後は、時にサポートメンバーを加えながら、フレキシブルに姿を変えながら活動を続け、ラスト・ワンマンとなった先日の日本武道館公演でも、2人にPCを加えた編成、ドラムに恒岡章さんを迎えた3ピース編成、ストリングス隊との共演と、ひとつのライブの中で次々と編成を変えていました。

 では、ラスト・ライブとなる、こなそんフェスではどんな編成になるのか。僕も含め、訪れたファンにとって、気になるところでしたが、答えは出演者の中から順番にゲスト・ドラマーを加え、3ピース編成でライブをおこなうというもの。

 19:30になると、出演バンド呼び込み用のジングルが流れ、まずはチャットモンチーの2人がステージへ。場内はもちろん、この日一番の大歓声に包まれます。

福岡「みんな、ありがとう! 元気ですかぁーーー!?」
オーディエンス「イェーーーーイ!!!」
福岡「ヤバい、初めてライブで言った、”元気ですか”って(笑)」
オーディエンスの1人「おかえりー!」
橋本・福岡「ただいまー!」

福岡「まずは、せっかく帰ってきたし、ここ数年の私たちのヒット・ソングをやりたいと思います。」
橋本「(オーディエンスに向かって)徳島の人!」
(徳島出身・在住と思われるオーディエンスが手をあげる。)
橋本「……半分以下…?」
福岡「まずい(笑) チャットモンチー好きな人!」
(オーディエンス全員が挙手。)
橋本「ほな、いけるわ!」
福岡「すごい、ローカルな曲やります。」

 ステージ上にはドラムセットもセッティングされていますが、まずはサポートを入れず、橋本さんがギター、福岡さんがベースの2ピース編成で、1曲目に「きっきょん」を披露。FM徳島のジングル用に制作された曲とのことで、10秒ほどの1曲。

 「きっきょん、きっきょん、きっきょん、え、これ何きっきょん。エフエム徳島きっきょん。」という歌詞の、チャットモンチーらしい、言葉と伸びやかなメロディーが、一体化した曲でした。歌詞とメロディー共に、一度聴いたら覚えられる、思わず口ずさんでしまう親しみやすさがあり、わずか10秒の曲ですが、チャットモンチーの魅力が十分に濃縮されています。

福岡「わずか10秒のチャットモンチー最短の曲です。”きっきょん”という曲でした。数年前から、FM徳島さんで流していただいております。せっかくなので、今日は2番を作ってきました。」
橋本「そうだよ! 10秒の新曲やで。」

 2番の歌詞は「やんよん、やんよん、やんよん、え、これ何やんよん。こなそんフェス2018やんよん」。メロディーは基本的に1番と共通ですが、「こなそんフェス2018」の部分は文字数が増えている分、譜割りが早口言葉のようの細かくなっています。

橋本「やったー、大成功!」
福岡「いやぁー、これでだいぶ安心しましたね。」
橋本「めっちゃ緊張したなぁ。」
福岡「もう、こっからは行けますよ。」

ドラム 小籔千豊

 ここからは前述のとおり、1〜2曲ごとに代わる代わるゲスト・ドラマーを混じえ、3ピース編成で進行していきます。1人目のドラマーは、この日のMCも担当する小籔さん。

 福岡さんの「ここからはですね、強力な助っ人を呼びたいと思います! 本日のMC、こやびんでーす!」という呼び込みに導かれ、小籔さんがステージへ。それから、ゲスト・ドラマーに事前に聞いた、共通のアンケートの回答を紹介していきます。

好きな食べ物: ドミノ・ピザのマヨじゃが、31のハニーレモンハニー
好きな動物: 盲導犬、補助犬、警察犬
その動物になったら何をしたいですか: 人を助けたい
転職するなら何になりたいですか: 学校の先生、小説家、お坊さん、ドラマー

 福岡さんの「みなさんご存知のとおり、こやびんはチャットモンチーの大阪支部のドラマーとして、ずっと活躍してくれてました!」という紹介に続いて、「風吹けば恋」と「真夜中遊園地」の2曲を披露。

 基本的には音源に忠実なアレンジで、プロのドラマーと比べてしまえば、わずかにリズムのあまいところがありますが、かなりの完成度の高さで、こんなところからも小籔さんのチャット愛が伝わります。

 小籔さんのMC「本当にすばらしいフェスで最高なところ悪いんですけど、僕はめちゃくちゃ悲しいです。ドラムを叩きながら2人に振り返ってもらう風景も、あっこちゃんさんのかかとを見ながら叩くことも、えっちゃんさんが振り返って”イけてるよ”みたいな感じで眉毛を上げてくれるのも、もう見られへんのかなと思うと、とても悲しいです。みなさんは盛り上がってくださいね! 今日という日を忘れずに、これからもドラムを頑張っていきたいと思います。今まで本当にお疲れ様でした。」

ドラム 奥田民生

 2人目のゲスト・ドラマーは、奥田民生さん。小籔さんが使用していたドラムが移動し、次のドラム・セットがステージ上へ。すると、すでに民生さんがドラムの前に座っており、スタッフの手によって、ドラムと共に運ばれてきます。「どうも、こんばんは! 奥田民生です!」と挨拶をしますが、かなり酔っ払っている様子。小籔さんの時と同様、福岡さんがアンケートの回答を紹介。

好きな食べ物: 明太子、谷中生姜
好きな動物: ゾウ
その動物になったら何をしたいですか: 鼻で水を吸う
転職するなら何になりたいですか: お好み焼き屋

 民生さんと共に演奏されたのは「阿波の狸」と「コンビニエンスハネムーン」の2曲。「阿波の狸」は、徳島県徳島市で毎年11月に開催される「阿波の狸まつり」のシーズンになると徳島県内で流れる、祭りのCMに使われている曲のカバーとのこと。

 民生さんのドラムは、手数は多くなく、ところどころリズムにタメがあり、独特の音が遅れて出てくるような感覚がありました。

ドラム 山田雅人 (シュノーケル)

 3人目のドラマーは、シュノーケルの山田雅人さん。これまでの2名と同じく、アンケートの回答を紹介。

好きな食べ物: たい焼き
好きな動物: クジラ
その動物になったら何をしたいですか: 地球を一周したい
転職するなら何になりたいですか: たい焼き屋

 山田さんと共に演奏したのは、チャットモンチーのデビュー曲「ハナノユメ」。次々とドラマーが入れ替わると、それぞれの個性が際立つところも興味深かったのですが、山田さんのドラムは、一発ごとのヒットにキレがあり、非常にシャープな音像を作り出していました。

ドラム 堀之内大介 (Base Ball Bear)

 4人目のドラマーは、Base Ball Bearの堀之内大介さん。名前を呼び込まれる前に、スタッフに混じってドラムの移動とセッティングをしながら、ステージへ。チャットモンチーの2人が気づく前に、オーディエンスが堀之内さんに気づき、場内から笑いが漏れます。

福岡「あれっ!? ちょっと待って! なんか1人、プロレスラーみたいな人が混ざってるんだけど(笑) あんな人、チャットのチームにおったかなぁ。もう、うちらが知らんことやるのやめて(笑)」
橋本「Base Ball Bearのホリーーー!!」
(オーディエンスから大歓声)
福岡「ホリくんのアンケートは、もういいかな?笑」
堀之内「いいんじゃないかな。」
福岡「もう、だいたい言っちゃったもん。転職するとしたらプロレスラー。」
橋本「やっぱり?」
福岡「好きな食べ物はドリア。」
橋本「やっぱり!」
福岡「好きな動物は…えっちゃん、なんやと思いますか?」
橋本「ゴリラ!」
堀之内「俺の見た目で言ってるじゃない(笑)」
橋本「違う(笑) 見た目じゃなくて、なんかゴリラかなって…」
福岡「正解は犬でしたー。」
堀之内「普通でしたー。」
福岡「犬になったとしたら、何をしたいと思ってるでしょう?」
橋本「すごい大事な飼われ方して、すごい大切に育てられたい!」
福岡「正解は、猛ダッシュでした!」

 堀之内さんと共に演奏されたのは「恋の煙」。選曲は、堀之内さんのリクエストとのこと。こちらもアレンジ、音作り共に、基本的には音源に忠実。ですが、高橋久美子さんによる立体的なドラムと比較すると、堀之内さんのリズムはより前のめりで、推進力を重視したドラミング。

 また、曲後半のブレイク部分は、従来のライブではシーンと静まり返り、コントラストを演出していましたが、この日は逆に観客の歓声を呼び込むように、長めに休符をとっていました。

若若男女サマーツアー2018

 ここまで4人のドラマーを迎え、7曲を披露。残りの2曲は、若若男女サマーツアーを共にまわった3バンドによる、スペシャル・セッションとなります。

福岡「今日さ、シュノーケルとBase Ball Bear出てたやん? 私たち、昔3バンドでツアーしてたじゃない?」
橋本「えっ、てことは!?」
福岡「せっかくやから、シュノーケルとBase Ball Bear呼んでいいですか?」
(オーディエンスからは大歓声。シュノーケルとBase Ball Bearがステージへ。)
福岡「若若男女サマーツアーっていう、老若男女をもじって、若い若いで若若と書いてたんですけど、今どうですか?」
橋本「ざっと見て、どうですか?」
小出「もう完全に、おじさんとおばさんですよね(笑) いや当時はね、一番年下の関根が21才ぐらいで、俺とホリも22ぐらいでしたよ。で、チャットとシュノーケルが23、24ぐらいでしょ? それが今、関根ですら33ですから。それより上は、言うのもはばかられる(笑)って年ながら、久々に若若男女で集まろうってことですよ。」
福岡「なんか、今すごいセットが組まれてますけど、これもしかして若若男女でよくやってたやつ?」
小出「まぁ、そういうことですよね。」

(各楽器がセッティングをしている最中に一部のメンバーでMC)
福岡「こいちゃんはねぇ、すごい立派になったよ。最初の若若男女サマーツアーでは全然しゃべんなくて、ツアーの最後に一番名残惜しそうにしてたの。で、その1年後にまたツアー始まったら、またなんか久しぶりに会ったいとこみたいな感じで不機嫌になってて、でも最後一番名残惜しそうにしてるの(笑)」
小出「あの頃は、やっぱり心を開いてなかったっていうか、チャットモンチーみたいに、田舎から出てきたやつに負けてられっかっていう…」
(会場が徳島なので、チャットモンチーとオーディエンスから笑いが漏れる)
小出「ごめんごめん(笑) 田舎の皆さん、ごめんなさい! 東京都から来ましたー!」
橋本「やめて!笑」
堀之内「俺らが徳島に呼んでもらえなくなるじゃん! 誰が得するのよ!笑」
小出「すごくいい街だなと思いますよ。なに食べても美味いし、天気もいいし、みんなの人柄もいいし、人間国宝みたいなバンドを生んだ街ですよ徳島! チャットモンチーが完結したとしても、明後日からもチャットモンチーいるんだろうなと思って、みんな生きていくと思いますよ。それぐらい、音楽史に名を残してきたバンドだと思います。」
福岡「ありがとう。こいちゃんにそんな励まされると思わんかったわ。」
小出「最後だからね。」
福岡「そうだね、今日プレ完結やから。」
橋本「あのねぇ…(演奏の)準備ができたって!」
小出「えー、だから何年ぶりですか?」
西村「10年ぶり?」
小出「みんなで集まるのは10年ぶり。この曲をやるのは、12年ぶりかな? 僕らにとっての青春だと、言い切っていいですよね?」
橋本「いいよー!」
小出「青春の大事な1ページだと思います。おそらく、このメンバーで集まって演奏するのは、これが最後なんじゃないかなと思うので、最後の若若男女、目に焼きつけてほしいと思います。」

 若若男女のメンバーによって、12年ぶりに演奏されたのは「今夜はブギー・バック」。言うまでもなく、小沢健二とスチャダラパーによる曲のカバーです。1994年にリリースされ、その後も多くのバンドやミュージシャンにカバーされてきたこの曲は、若若男女世代のアンセムと言っても過言ではない1曲でしょう。

 3バンド分の厚みのあるアンサンブルに乗せて、小出さん、橋本さん、西村さんがボーカルを担当。主にラップのパートを小出さん、それ以外の歌メロを橋本さん、橋本さんを支えるコーラスを西村さんが担う構成となっていました。

 「今夜はブギー・バック」演奏後、福岡さんがオーディエンスを煽り始め、最後の曲へと誘導していきます。

福岡「まだ、みんなが物足りなそうな顔してる! みんな、あの曲、聴きたいんちゃう!?」
(オーディエンスからは大歓声)
福岡「みんなが聴きたい曲、みんなでやろうよ、せっかくやけん…。リズム、スタートーー!」
(堀之内さんと山田さんが、シャングリラのイントロのバスドラを踏み始める)
小出「あ、ちょっと待って、待って! 今日さぁ、友達つれてきてるんだけど、最後にその友達も混ぜてあげていいかな? ちょっと呼んでくるわ! 俺も久しぶりに会う友達なんだけど。」
(しばらくすると、小出さんが高橋久美子さんを連れてステージへ)
小出「友達、連れてきた!」
橋本「くみこん! クミコンじゃない! めっちゃ泣いてるやん!笑」
小出「クミコン、チャットモンチーは辞めたけど、若若男女は辞めてないもんね! チャット辞めた時にさ、ドラムセットをSMAの倉庫に置きっぱなしにしてるから、今日それを持って来たよ!」
(ステージ中央にもう1台のドラムセットが運び込まれ、高橋さんがドラムセットへ)
福岡「クミコンのドラムセットを発掘したぞー!」
橋本「めちゃくちゃ泣いてるやん、クミコン。大丈夫かな? ねぇ、すごくない? クミコン帰ってきたよ!(僕には橋本さんの声も、少し涙ぐんでいるように聞こえました)」
福岡「おかえりーーー!」
(ここまで、堀之内さんと山田さんのバスドラ、観客の手拍子がずっと続いています)
小出「ごめん、悪いんだけどさぁ、おじさんのキックうるせぇから、クミコンのキックが聞こえないので、おじさんのキックもうやめていいよ。おじさんのは、もういいから。」
福岡「おじさん(笑) 若若男女って言ってたのに(笑)」
小出「じゃあ、クミコン。あらためて、キックお願いします!」
高橋「それじゃあ、行くよーーーー!!」

 堀之内さんと山田さんがキックを止め、高橋さんがバスドラを踏み始め、あらためてシャングリラがスタート。小出さんは「本物だ、本物だ!」と叫びます。

 この日は会場が大きいため、ステージの両脇にモニターが設置されていたのですが、カメラマンもオーディエンスが何を見たいのか理解していて、この場面ではチャットモンチーの3人が画面に映し出されます。

 もう、聴くことはできないと思っていた、高橋さんのドラム。もう、見ることはできないと思っていた、3人のチャットモンチー。そんな夢のような光景が目の前に広がり、涙を流す人も数多く見受けられました。(自分もその1人ですが…)

 高橋さんのドラミングは、ブランクがあるためか、堀之内さんと山田さんと比べ、ヒットはやや弱いかなと思いましたが、立体的で歌うような、以前のタイム感とリズム感は健在。感情論や印象論ではなく、やっぱりチャットモンチーのドラムはクミコンなんだ!と思わせる演奏を見せてくれました。

 前述のとおり、高橋さんはステージに上がった時から涙でいっぱいでしたが、橋本さんも歌いながら感極まったようで、ところどころ声が震えたり、歌えなくなったり、オーディエンスに向かって「みんな一緒に歌って!」と促す場面もありました。

 ハイライトは間奏部分。橋本さんと福岡さんが、後ろを向いて、高橋さんの方に近づき、あのトライアングルが復活します。ファンにとっては奇跡の瞬間と言っても過言ではない光景。カメラも、もちろんこの3人を映し出します。

 シャングリラ演奏後、3バンドのメンバーが、ステージ前方に集まり、最後の挨拶。高橋さんがドラムセットから前方に出てくるとき、近くにいたシュノーケルのメンバーと関根さんに、なにか声をかけていました。おそらく「久しぶり、元気だった?」というような言葉をかけていたのではないかと思いますが、こんなところからも3バンドの絆が垣間見えます。

 福岡さんがオーディエンスへの感謝を口にしたあと、「Base Ball Bearーー! シュノーケルーー!! そして、チャットモンチーでしたー!」と各バンドを紹介しながら、ステージを後にしていきます。

 最後に、福岡さんが「チャットモンチーでしたー!」と言ったとき、福岡さん、橋本さん、高橋さんの3人が、肩を組むようにして一緒に歩いていて、ファンならばここも号泣ポイントでした。

※ 下の画像は、高橋久美子さんの公式Twitter(@kumikon_drum)より

 ライブのあとは、こなそんフェス恒例の阿波踊りが披露されます。阿波踊りの準備中には小籔さんのMC。「本当にええもん見れましたね。皆さん、これからつらいことがあっても、今日見たことを思い出して、頑張っていただけたらと思います。」と、またまたファンと同じ視点に立った言葉を残してくださいました。

武道館と比較しての「こなそんフェス」

 ここからは、僕がこの日のライブを見て感じたことを、記述します。

 最初に記したとおり、こなそんフェスの2日間をもって「完結」となるチャットモンチー。こなそんフェスの約2週間前の7月4日には、日本武道館にてラスト・ワンマン・ライブも開催されていました。

 武道館公演は、最新アルバムの『誕生』楽曲を中心にした前半。ドラムに恒岡章さんを加えた3ピースでの中盤。チャットモンチー史上初となる、ストリングス隊との共演を果たした後半と、これまでのチャットモンチーの歴史を踏まえた上で、この期に及んでも新しい挑戦を続ける、実にチャットモンチーらしいライブだったと言えるでしょう。

 それに対してこなそんフェスは、その名のとおり、お祭りであり、ファンへの最後の挨拶、といった意味合いのライブのように感じました。適切な表現が思い浮かびませんが、ボーナス・トラックと言うべきか、チャットモンチーからのプレゼントと言うべきか、前を向いて走り続けてきたチャットモンチーが、初めて少しだけ後ろを振り向いたライブだったと、言えるのではないでしょうか。

 武道館では、選曲においてもアレンジにおいても、果敢に新しいアプローチに挑戦したチャットモンチー。しかし、こなそんフェスでは、『誕生』からの楽曲は1曲も披露されませんでした。その代わりに、ゆかりのあるドラマーを次々に迎え、過去のチャットモンチーの様々な部分を、アップデートして見せてくれました。ただ、過去の自分たちのコピーバンドにはならないところも、このバンドのすごいところ。

 全ての曲で、そのドラマーの個性を引き出し、チャットモンチーの一部へと取り込んでいました。このチャットモンチーが拡大していく感覚は、男陣と乙女団が馴染んでいった感覚にも近かったです。また、チャットモンチーにとってゆかりのあるドラマー、最後のステージに一緒に上がりたいと思うドラマーを集めたことも、イベント全体の暖かい空気と、急造バンドとは思えない有機的なアンサンブルを作る要因になったはず。

 言い換えれば、今までは音楽至上主義を貫き、いい意味でファンや時代に媚びない姿勢で、音楽を作り続けてきたチャットモンチーが、初めて地元の人や、付き合いのあったバンドマン、ファンに向けて、開催したのがこのライブだったのではないかということ。もちろん、今までのチャットモンチーがファンをないがしろにしていた、という意味ではありませんよ。

 この日のライブのクライマックスとして、高橋久美子さんがステージに上がり、しかもドラムまで披露してくれましたが、この奇跡も、若若男女サマーツアーで苦楽を共にした、Base Ball Bearとシュノーケルが一緒だったからこそ実現したのでしょう。

 どういう経緯で、高橋さんのドラムが実現したのかは分かりませんが、当事者同士だと、お互いのリスペクトの気持ちが大きすぎて、逆に頼みにくい、受諾しにくいということもあるでしょう。そこを小出さんあたりが、うまく繋いでくれたのではないかなと、個人的には想像しています。

 小籔さんの言葉どおり、終わったあと本当に「いいものを見せてもらった」という気持ちで、いっぱいになったライブでした。最後まで挑戦を続け、未来に向かうチャットモンチーに胸を打たれた武道館と、チャットモンチーがいろいろな過去を思い出話のように聞かせてくれて、あたたかい人柄に胸を打たれたこなそん。このふたつのライブは、コインの表と裏のように、一対になったライブなのではないかと思います。

 音楽に向かう、おそろしいほどのストイックな態度と、本人たちの優しくあたたかい人柄。小出さんの言葉を借りれば、チャットモンチーは、まさに人間国宝のようなバンドです。

チャットモンチーのこなそんフェス2018
2018年7月21日
アスティとくしま
セットリスト

01. きっきょん
02. 風吹けば恋
03. 真夜中遊園地
04. 阿波の狸
05. コンビニエンスハネムーン
06. ハナノユメ
07. 恋の煙
08. 今夜はブギー・バック
09. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年8月6日 ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017

チャットモンチー
2017年8月6日
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017
(国営ひたち海浜公園)

 チャットモンチー2年ぶりのROCK IN JAPAN FESTIVAL。PARK STAGEのトップバッター、10:30からの出演です。

 9:30頃にPARK STAGEに着くと、すでに見慣れたスタッフの面々が機材の調整をしています。PCとシンセサイザーを全面的に導入した「メカットモンチー」体制でまわった「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」(以下「秘密基地ツアー」)同様、ステージ上には、向かい合うように2台のシンセサイザーが設置されています。

 そして、しばらくするとチャットモンチーの2人もステージへ。橋本さんは今年の夏フェスグッズの「はっとしてハット」のブルーを着用。ちなみに秘密基地ツアーのファイナル六本木公演のアンコールでは、福岡さんがブルー、橋本さんがオレンジを着用し、「夏フェス用のグッズです」と紹介していました。

 さて、サウンドチェックでは、各楽器の音をチャットモンチー自らも加わり調整していき、秘密基地ツアーで1曲目に披露された「レディナビゲーション」を断片的に演奏しながら、最終確認をおこなっていきます。

 メカットモンチー体制での「レディナビゲーション」は、アルバム『YOU MORE』収録の音源とは音作りが大幅に異なり、打ち込みのドラムトラックの上に、チャットモンチーの2人がシンセサイザーを重ねています。シンセの音色もフワァーっとしたシンセサイザー然とした柔らかい音が選択されています。主に橋本さんが旋律的なパート、福岡さんが伴奏的なコード弾きを担当しているようです。

 この日のサウンドチェックでは、まずドラムトラックを流し始め、それに合わせて2人が何気ない感じでシンセを弾いていくのですが、程よくラフで、グルーヴ感もあり、2人のミュージシャンとしてのスキルの高さが垣間見えます。

 舞台監督のハギさんが「レディナビやります」と指示を出して、今度は橋本さんのボーカルも入って、1回目のサビ終わりぐらいまでを演奏。あくまでサウンドチェックなので、歌っていないフレーズもところどころありましたが、ほぼツアーで演奏されていたのと同じアレンジです。

 最後にマイクチェック。福岡さんはマイクチェックっぽく「ハー、ハー、ハー、へェ〜エ。この曲(レディナビゲーション)やらないから、安心してね!」、橋本さんは「あー、あー、あー、おはよう! おはよう!! 10:30からだよ。」と言って、マイクチェックも終了。2人がステージ奥へ戻ります。

 10:30が近づくと、前説のためにROCKIN’ON JAPAN編集長の小栁大輔さんがステージへ。今年は見やすさを考慮しながら各ステージの規模を拡大したこと、地震が起きた場合の注意事項などを説明した後に「2年ぶりにROCK IN JAPANに帰ってきてくれました! 毎回、違う試みで、その日だけのマジカルな時間を作ってくれる2人です。チャットモンチー!」という呼び込みから、入場用のSEが流れます。

 入場用SEは、橋本さんが作成したという秘密基地ツアーでも使用されたオリジナルのSEです。そして、いよいよチャットモンチーがステージへ。前述した通りステージ上には向かい合うように2台のシンセサイザーが設置されていて、オーディエンス側から見て、右側のシンセサイザーに橋本さん、左側に福岡さんが座ります。

 1曲目は「恋の煙」。この曲もアルバム『耳鳴り』収録の音源とは耳障りがだいぶ異なり、元々は鋭く歪んだギターが弾くイントロは、シンセサイザーに置き換えられています。しかし、イントロからしばらくすると手拍子が起こり、オーディエンスの反応は悪くありません。

 「恋の煙」の後には、橋本さんが「皆さん、おはようございます、チャットモンチーです!」、福岡さんが「いっぱい集まってくれてありがとう! チャットモンチーは変身ばっかりしてきましたけど、まずはメカットモンチーから始めたいと思います。」と挨拶。2人が喋っている間から、SEが流れ始め、そのまま自然な流れで2曲目の「変身」へ。

 メカットモンチー体制では、アルバム『変身』収録のオリジナルバージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXをもとにしたアレンジで演奏しています。この曲では、橋本さんはエレキギター(黒のシンライン)を担当。

 「変身」が終わると、ほとんど切れ目なく打ち込みのリズムが流れ始め、3曲目「M4EVER」へ。この曲が秘密基地ツアーで演奏された際には、このリズムトラックをバックに、メンバーとオーディエンスが、コール・アンド・レスポンスをしてから曲に入っていましたが、なんとこの日はラジオ体操!

橋本「みんな、朝やけど起きてますか?」
(オーディエンスから「イェー!」の声)
福岡「寝たまま、立ってたら凄いけどな(笑)」
橋本「確かに(笑) ちょっとだけラジオ体操する?」
(オーディエンスからは、また「イェー!」の声)
橋本「よかった、じゃあ真似して。」
(チャットモンチーの2人が、無言でラジオ体操第一の「体を横に曲げる運動」を左右に何回か繰り返し、オーディエンスもそれを真似する)
福岡「無言かよ(笑) ラジオ体操の先生の気持ち分かりました。めっちゃ気持ちいい!」
橋本「めっちゃ綺麗やで! これでみんな起きたと思います、ありがとう。」
福岡「今からやる曲は、オケをパソコン君に任せて、2人でラップやります!」

 この流れで、3曲目「M4EVER」へ。福岡さんも説明していましたが、この曲はチャットモンチーのアルバムなどには収録されておらず、スチャダラパーのアルバム『1212』と『6ピース バリューパック』のみに収録。橋本さんがお母さん役で、スチャダラパーのメンバーが息子たちという設定の曲ですが、メカットモンチーでは福岡さんがスチャダラパーのパートのラップを担当しています。

 前述の通り、リズムトラックをパソコンで流しつつ、2人で交互にラップしていくのですが、ラップを担当しない間のメンバーは、コルグ製の小さなシンセ(microKORGらしきもの)を手に持って、ベースラインを弾きます。2人で、シンセとマイクを交換しながらの演奏です。

 「M4EVER」後にはMC。小さめの音ですが、GRASS STAGEで演奏中のWANIMAが聞こえてきます。

福岡「いいんですか、(同時間に演奏している)WANIMA行かなくて?」
(オーディエンスから笑い)
福岡「私はめっちゃ見たいですけどね。あんまり聞こえへんな。」
橋本「遠いからな。」
福岡「そうやな。ちょっとだけチャット見てから行こうと思っても、無理ある距離ですよね。(チャットモンチーを見る)決断してくれてありがとう!」
(オーディエンスから拍手)
橋本「あ、(裏でやってるバンドに)夜の本気ダンスもおったな。」
福岡「夜の本気ダンスのギターの人が、チャットを好きらしいって四星球の康雄から聞いたんですけど(笑) でも、えっちゃん夜の本気ダンスってバンド名が覚えられんくて、踊る……なんとかの人って(笑)」

 4曲目は「コンビニエンスハネムーン」。福岡さんがアコースティック・ギター、橋本さんがシェイカー、タンバリン、ハーモニカを担当するアコースティックなアレンジ。ここまでの4曲だけでも、2人の音楽性の幅広さ、引き出しの多さが感じられるセットリストとなっています。

 橋本さんの「じゃあ、徳島のことを歌った曲やります。」という紹介から、5曲目に披露されたのは「majority blues」。橋本さんはエレキギター、福岡さんはドラムを担当し、ベースとキーボードは打ち込んだものを同期しているようです。「majority blues」後にもMC。

福岡「ROCK IN JAPANにいつも呼んでいただいて、ここのステージは初めてなんですけど、見た目がいいですね。こっちから見た時の。木が多くて、森感あるし、ええなぁ。チャットモンチーからは特に宣伝とかは無いんですけど(笑)、4月に新曲を出してて、その曲のPVがめっちゃ面白いという話だけさせていただきます。えっちゃんが大好きなお笑い芸人さんに出ていただいてるんですけど、曲が全く頭に入ってこないと有名なPVになってしまいました(笑)」
橋本「うん。おすすめだよ。」

 6曲目は「Magical Fiction」。福岡さんの説明のとおり、PVにはテツandトモのお二人が出演し、踊りまくっています。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。ベースなどは打ち込みを使用。

 7曲目は「風吹けば恋」。2人の担当楽器は、橋本さんがエレキギター、福岡さんがドラムで、ベースなどは打ち込み。打ち込みを使用してはいるものの、メカットモンチー要素は薄く、音源に近いパワフルなアレンジです。チャットモンチーらしい尖った部分もあり、『変身』期の2人体制を思い起こさせます。こういった大規模のフェスということもあり、チャットモンチーをあまり見たこともない方もいるでしょうし、やはり一般的にチャットの代表曲と言っていいこの曲は、大いに盛り上がりました。

 ラスト8曲目は、福岡さんの「やっぱ最後はこの曲だよね。」という言葉から「シャングリラ」。橋本さんはギターを黒のシンラインから、サンバーストのテレキャスターに持ち替え、福岡さんはこの日初めてベースを担当。ドラムは打ち込み。基本的には音源に近いアレンジですが、打ち込みによる電子音が足されていて、マッシヴ感とメカット感の同居した音に仕上がっています。

 「風吹けば恋」に続き、知っている人が多いであろう「シャングリラ」。イントロ部分からオーディエンから手拍子がおこり、きっちりと満足感を残し、ライブは終了となりました。わずか8曲、時間にして40分ほどの中に、ここまで変幻自在に音色を詰め込みながら、すべてがチャットモンチーらしいグルーヴにまとまっていて、秘密基地ツアーを凝縮したような素晴らしいライブでした。

 1、2曲目でのメカットモンチー顔見せ。3、4曲目でのチャットのパブリックイメージには無いラップとアコースティックの提示。5、6曲目での現2人体制でのバンドサウンド。7、8曲目での代表曲の再構築、と本当に無駄がなく、情報量の多いライブだと思います。わずか40分足らずで、手際よく次々と新しいチャットモンチーを見せていく展開に、チャットモンチーのライブバンドとしての強さと、さらなる成熟を感じますね。


ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017 (国営ひたち海浜公園)
2017年8月6日
セットリスト

01. 恋の煙
02. 変身 (GLIDER MIX)
03. M4EVER
04. コンビニエンスハネムーン
05. majority blues
06. Magical Fiction
07. 風吹けば恋
08. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年6月29日 帯広MEGA STONE

チャットモンチー
2017年6月29日
帯広 MEGA STONE (メガストーン)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 本来は、4月28日に開催予定だった今ツアーの帯広公演。橋本絵莉子さんの体調不良により延期となっていましたが、2ヶ月後の6月29日に実施の運びとなりました。まずは、橋本さんの体調と声が無事に回復したようで、本当に良かった。以下、ライブレポートです。


 定刻を数分過ぎたところで客電が落ち、SEが流れ始める。電子音が飛び交う中を、ベースが休符を含んだフレーズでリズムを刻み、どことなくジャングルの中を連想させるようなSE。最後には、某PCの起動音がサンプリングされている。

 オーディエンスからの歓声と手拍子の中、ステージ上にチャットモンチーの2人が登場。ギターでもベースでもドラムでもなく、2人とも向かい合うように設置されたローランド製のシンセサイザー(色が白なのでJUNO-DS61のWhiteだろうか)の前へ着席。オーディエンス側から見て、左側に福岡さん、右側に橋本さん。

 1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込み特有の均一な音質のドラムから音楽がスタートする。2人もそれぞれシンセサイザーで、旋律的なフレーズと、伴奏的なコードを弾き始める。今までのチャットモンチーの音楽から比べると、異質と言える柔らかなシンセサイザー特有の音質だ。間奏では、橋本さんが思わず満面の笑顔で「ありがとう!」と言う場面もあった。

橋本「こんばんは、チャットモンチーです。約2ヶ月お待たせしました。来てくれてありがとう! この前の東京でも喉やっちゃったんですけど、治ってますんで安心してください!」
福岡「めっちゃあったかい。2ヶ月分の笑顔が見えます。今日はそんな皆さんの笑顔にも関わらず、1曲目からポカーンとさせてしまいましたけど(笑)、今回はメカットモンチーという体制で今までの曲をリアレンジしてやっていきますんで、ついてきてください!」

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」でも、2人ともシンセサイザーを弾き続け、オリジナルバージョンから大胆にアレンジされた演奏を披露していく。「恋の煙」が終わると、打ち込みされたトロピカルなリズムパターンのドラムが流れ始め、そのリズムをバックに福岡さんが話し始める。

福岡「今から、いつもは今日誕生日の人?って聞くんですけど…今日誕生日の人? おらん? あ、おった! おめでとう! 2ヶ月前の公演のとき、誕生日だったっていう人? おらん!? その時、誕生日だったって人がいたら、おもろいかなと思ったんですけど。じゃあ、もう今日はみんな誕生日! 私も4月に1個、年とったんですよ。私、ウォーキングデッドがすごい好きなんですけど、その時は盛岡でウォーキングデッドのテーマ曲で誕生日を祝われるっていう。あとで調べてみてください、めっちゃ暗い曲なんで(笑) 今日は明るく皆さんをお祝いしたいと思います! 今日、誕生日の人は最もめでたい、めでたニストなので、サビのとこでその人に向かって拍手をしてください。」

 演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。アルバム「YOU MORE」に収録されている音源では、イントロはギターとベースから始まるが、今回は2台のシンセサイザーに置き換えられている。2人がシンセサイザーでイントロを弾き始めるのだが、設定が切り替わってしまっていたのか、どちらかのシンセの音程がオクターブ高く、明らかにここまでのツアーの演奏とは違う音。そのまま進めようとするが、やはり数小節を弾いてから、橋本さんがメロディーっぽく「もう1回やっていい?」と言って、リスタート。オーディエンスは大歓声。打ち込みのリズムが流れ続けているので、ライブの流れが途切れることはなく、むしろここからシフトが一段上がったような印象だった。

 橋本さんがシンセで電話の呼び出し音を鳴らし、福岡さんがそれを取る、という流れから、曲フリ用のMCが始まる。

福岡「もしもーし、イタ電かな? ちゃんとナンバーディスプレイに番号見せてください! 非通知はあきませんよ。」
橋本「…もしもし。」
福岡「あ、えっちゃんか。なんで携帯じゃなくて、家電(いえでん)にかけてくるんよ!?」
橋本「…家電の方が好きだから!」
福岡「ちゃんと理由あるんやな(笑)」
橋本「もしもし、今なにしてる?」
福岡「帯広で、300人ぐらいと豚丼食ってるよ。」
橋本「私は今、幸福駅ってところにいるんやけど。」
福岡「なんで、そんなとこにおるん?」
橋本「…幸福に、なれるから。そういうスポットだって聞いたから。すごいスポットなの。記念撮影すると幸福になれるんだって。」
福岡「どうだった? 幸福になった?」
橋本「………うん。」
福岡「めっちゃタメあったけど、ほんまかな(笑)?」
橋本「幸福になってる。もう写真撮ったから、あっこちゃんのとこ、行っていいかな?」
福岡「いいけど、えっちゃん豚丼食べれる?」
橋本「あの…ご飯だけでいいから。下のタレのついたご飯だけでいい。」
福岡「じゃあ食べにきい。」
橋本「じゃあ、あれで行くわ。広尾線で行くわ。」
(シンセから電車が走る音を流し、橋本さんが福岡さんの隣に移動)
橋本「広尾線ってもう無いんよ。」
福岡「えっちゃん、よく知ってるなぁ、帯広のこと。」
橋本「うん、20分前ぐらいに調べた。幸福駅、行ったことある人?」
(オーディエンスから、そこそこ手が上がる)
橋本「広尾線、乗ったことある人?」
(少ないが、手が上がる)
福岡「けっこう少ないんやね。」
橋本「1987年に廃止になったらしいですね。87年って、うちら4才やからな。」
福岡「えっちゃん、教科書みたいやな(笑)」

橋本「じゃあ、あっこちゃんのとこに来たっていうことで、今からやる曲は、徳島マラソンっていう地元徳島のマラソンがあって、それのテーマソングです。この曲を作った年に、あっこちゃんマラソンを完走しました!」
福岡「めっちゃ遅いけど、頑張って完走しました。絶対みんな完走できるから、ゆっくりだったら。あの「パーーンッ!」って鳴ったら、テンション高くなっちゃって、普段の倍ぐらいの速さで走っちゃう人が多いんよ。」
橋本「おるなぁ…私やわ。」
福岡「そういう人たちが20キロぐらいで小鹿みたいになってて、そういう人たちを尻目に、めっちゃ遅い私が抜いていくっていう(笑) 徳島マラソンをきっかけにマラソンを始めて、徳島マラソンのテーマソングを勝手に書いて、送りつけて、採用されたんです。」
橋本「地元の徳島だったら何でもできるんですよ。」
福岡「スーパーで私たちの声、流れてますからね。”今日はえっちゃん、ゾロ目市やなぁ””火曜日はポイント10倍やなぁ”とか(笑)」
橋本「そんなバンドマンいませんよ(笑) 地元でむちゃくちゃやるっていう。」
福岡「地元でフェスやった時にね、そのスーパーで宣伝してくれるって言ってくれて、スーパーの人は”期間中、店内でチャットモンチーの曲を流しましょうか?”って言ってくれたのに、私たちは”せっかくだから肉コーナーとかで叫んでるやつやりたい”って言って、今でも流れてるんで良かったら聞きに来てください!」
橋本「徳島のキョーエイってスーパーなんですけど。」
福岡「話、長くなってもうたな。」
橋本「じゃあ、今から”とまらん”って曲をやるんですが、あっこちゃんが鍵盤弾きながら、バスドラ踏みます。それで私がドラムの上物をやるっていうスタイルです。」
福岡「やってて楽しいって理由で、このスタイルになってます(笑) 覗いてみてくださいね、後ろの人。」
(最前列から3列目ぐらいまでのオーディエンスが、後ろの人が見えやすいようにかがむ)
福岡「バスドラに合わせて手拍子をしてもらえると、ものすごい助かります!」

 上記の長めのMCの後に演奏された5曲目「とまらん」。1曲目から4曲目までは、ドラムは打ち込んだものを流しながら、それに同期するように2人がシンセサイザーを演奏していた。また、音色も、シンセサイザー然とした電子音だと一聴してわかるものだったが、「とまらん」では前述のとおりドラムは生演奏、福岡さんが弾く音色もアコーディオンのような味わいのある音を選択している。そのため、オーディエンスの手拍子も相まって、4曲目までと比べると、かなり耳障りの異なる演奏となっていた。演奏後には、また長めのMC。

福岡「ありがとう、止まらんかった。」
橋本「良かった。」
福岡「豚丼食べたし、えっちゃん家、行こうかな。」
橋本「どうやって行く?」
福岡「北海道やけん、これで行こう。」
(シンセから馬の走る音を流し、今度は橋本さんが元々いた位置に2人が移動)
福岡「帯広、空港着いて、この市内までめっちゃまっすぐでしたね。ビックリした! でも、すごいひとつ気になったのが、白線の上にある矢印、途中から白線じゃないとこ指してたんですけど。なんでなん、あれ?」
橋本「あの、雪で下が見えんくなった時に…」
福岡「うん、そうやと思ってたんやけど、最初白線の上を指してて、途中から段になってる方を指してて、気づいた人おる? 今度、帯広空港から市内来るとき、見てみてくださいね。」
橋本「そういう間違い探しするのが、あっこちゃんらしい。あっこちゃん、間違い探すの、すごい上手なんだよ! 凄いんだよ! CD作って、歌詞の間違いとか、いろいろチェックせなあかんけど、めっちゃ見つけるの、あっこちゃん! ほんと、あっこちゃんおらんかったら、めっちゃ間違ってると思う。私も見てるんやけどね。」
福岡「えっちゃん、気持ちは見てるけどな、たぶん目は見てない(笑)」

 5曲目「いたちごっこ」、6曲目「染まるよ」の2曲は、打ち込みは使わず、アコースティックなアレンジで披露。「いたちごっこ」では、橋本さんがアコースティックギター、福岡さんがベース、「染まるよ」では橋本さんが変わらずアコースティックギター、福岡さんはステージ左側に戻りシンセサイザーを担当。「染まるよ」でのシンセサイザーの音色は、エレピや電子オルガンに近い音色で、アコースティックな雰囲気を増している。

 7曲目は「変身」。橋本さんはシンラインを持ち、福岡さんはドラムセットへ。福岡さんが「それでは、ここからはメカットモンチーの盛り上がるバージョン、よろしくお願いします。」と言って演奏がスタート。オーディエンスもおおいに盛り上がる。ここから、9曲目「消えない星」、10曲目「majority blues」と、橋本さんがギター、福岡さんがドラム、それにプラスして必要に応じた打ち込み音源という体制が続く。11曲目には、橋本さんが今回のツアーから導入されたと思われる青っぽいテレキャスターデラックスに持ち替え、Perfumeの「TOKYO GIRL」のカバーを演奏。

福岡「今のはねぇ、PerfumeのTOKYO GIRLっていう曲をカバーしました。6月3日にPerfumeのフェスに出させてもらった時に、これカバーしたんですよ。Perfumeのフェスの次の日も仙台でやったんですよ、好評だったみたいだからっていって…でもすぐに飽きちゃって、また別の曲にしちゃって、飽き性やからね。でも、しばらく経ったから、北海道の人このフェス来てない人多いかなと思って、またやりました。」
橋本「もう私たちの飽き性は、皆さんに伝わってますよね。このツアーも3月から始まって、本来ならば今日はここにいなかったはずなんですけれども、いちゃってるわけですけれども、そしてみんなも来てくれたわけですが、もう4ヶ月、カバーをいろいろしてきて、わりとコロコロ変えてきたね。」
福岡「チャゲアスがめっちゃ好きで、ラジオでレギュラー番組やってるときに、ルーツをかけるコーナーがあったんですけど、チャゲアスだけは今はあかんって言われてしまって…」
橋本「時期が時期だけにな…」
福岡「それがたまってたんでしょうね。自分のライブだったらいいやろうってことで、チャゲアスの曲をやったり。それを急に思い立っちゃって、その場で練習してやるっていう暴挙に出たりとか。さっきの”とまらん”も、急にやったからね。」
橋本「急にやった! 急にやり始めたから、ああいうスタイルになったんですよ。急にやんないとできないからね。考えすぎたらできへんってこともあるやん。」
福岡「4月のツアーの時は、ちょっと説明した方がいいんちゃうかってことで、システムがどうなってるのかっていうのを、説明してたんですよ。それも途中で飽きちゃって、やめたんですよ(笑) でも、4月来る予定だったから、説明聞きたいですか?」
(オーディエンスから複数の「聞きたーい!」の声)
福岡「じゃあ、えっちゃんから…」
橋本「おぉ!…すんげえ、ぼーっとしてたわ。あのね、パソコンが今2台あるんですよ。主に私たちが出してる以外の音は、あっこちゃんがパソコンから出してます。パソコンって、マウスなり、なんなりで、手でやるじゃない? でも、両手ふさがってるでしょ、ピアノ弾いたり、ドラム叩いたり、だから足で、曲ごとに踏みかえて、もうそれは…もうそれは、ベース弾いてるとき培ってきた、エフェクターの切り替えの足の技術によって、なされてます。」
福岡「聴いてもらったらわかると思うんですけど、パソコン使ってるわりには、アナログな音してるでしょ? そうしたいなあって思いが、音にもなってるんですけど。えっちゃんがね、楽器の音の名前を言わずに、”あのネズミみたいな音”とか、言うんですよ。ネズミの音ってどれやろって思うけど、共通認識としてネズミの音は把握しとかなきゃいけないでしょ。ネズミの音はいいよ、とりあえず、今度は”大ネズミの音”とか言い出すんですよ(笑)」
橋本「言ってたね。あっこちゃん”ああ、大ネズミの音な”って。(わかってくれて)優しいなぁと思ってました。」

 12曲目は「Magical Fiction」。この曲から、橋本さんがギターから再びシンセサイザーへ。13曲目「こころとあたま」と「湯気」は、今ツアーではメドレーのようにシームレスに演奏されており、「こころとあたま」の1回目のサビが終わると、橋本さんがシンセサイザーからギターへ楽器を替え、「湯気」のイントロを弾き始める。「湯気」の終盤では、福岡さんのモニター用のヘッドホンが途中で脱落してしまい、スタッフが慌てて元の位置に戻し来るが、一時的にドラムが止まりかけてギターのフィードバックのみになる。ここでも演奏は止めずに、むしろトラブルを楽しむように演奏を続け、オーディエンスからは自然と手拍子が起き完走。

 聴き慣れたバスドラのリズムが流れ始め、福岡さんが「最後はやっぱ、この曲だよね! 最後はベース弾きます!」と言って、15曲目「シャングリラ」がスタート。しかし、ベースが入ってくるタイミングで弾き始めるも、ベースの音が出ない。また、どこかのタイミングで指から出血してしまったようで、何度も指を気にしていた。一旦、打ち込みのドラムを止め、機材をチェックする。この間、橋本さんがギターで「恋愛スピリッツ」のコードを弾いているようだった。福岡さんが「2ヶ月待たせた上に、最後の曲もお待たせしました!」と言って、今度は無事にベースの音も出て、シャングリラを演奏。何度かの機材トラブルがあったが、演奏は全体として疾走感があり、非常に熱く、またオーディエンスの雰囲気もあたたかく、2ヶ月分の想いが形になったようなライブだった。

 アンコールでは、日本の祭りを思わせるような、アクセントが前に置かれたドラムのリズムが流れ、今回のツアー後半から発売されたロングTシャツに着替えたチャットモンチーの2人が再びステージへ。アンコール1曲目に演奏されたのは、スチャダラパーとのコラボ楽曲「M4EVER」。オーディエンスとコールアンドレスポンスをしてから、演奏を始める。元々の音源では、橋本さんと、スチャダラパーのANIさん、BOSEさんが交互にラップをしていくが、今ツアーではスチャダラパーのラップパートは福岡さんが担当している。ドラムは打ち込み、橋本さんがラップの時は、福岡さんは小型シンセを手に持ってベースラインを弾き、逆に福岡さんのラップパートでは、マイクとシンセを交換し、橋本さんがシンセを担当。使用されているシンセサイザーは、KORG製のアナログシンセサイザーあるいはアナログモデリングシンセサイザーのようだった。マイクとシンセを交換するとき、福岡さんと橋本さんの手とコードが絡まる、というかコードがシンセを持つ腕の中に入ってしまって2人が離れられなくなる、という場面もあったが、一度手を外して、うまく交換完了。このときの2人のアイコンタクトも、絆の深さを感じさせた。また、曲中には福岡さんがフロアに降りてラップをするサプライズもあった。今回のツアーで、メンバーがフロアに降りてきたのは帯広公演のみ。

 アンコール2曲目に「満月に吠えろ」を披露して、この日のライブは終了。ここまでは、自分自身の備忘録を兼ねて、客観的な事実の記述を心掛けてきましたが、最後にライブの感想を書かせていただきます。ライブ中に、メンバーが何回も「帯広の人はあったかいなぁ」「優しいなぁ」という場面がありましたが、それは遠征での参加だった僕も感じたことで、「とまらん」で後ろの人が見えやすいように前列の人が屈んだり、「湯気」で演奏が止まりかけたときに自然発生的に拍手が起こったりと、非常に雰囲気が良く、またメンバーもその空気に押されて、演奏が加速していったように感じました。何回か機材トラブルもあったライブでしたが、そのたびに流れが停滞するどころか、むしろシフトが上がっていくようで、バンドのテンションと、それを迎えるオーディエンスの期待と優しさがぴったり合った、素晴らしいライブでした。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年6月29日
帯広 MEGA STONE
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. とまらん
06. いたちごっこ
07. 染まるよ
08. 変身 (GLIDER MIX)
09. 消えない星
10. majority blues
11. TOKYO GIRL (Perfumeカバー)
12. Magical Fiction
13. こころとあたま~湯気
14. 風吹けば恋
15. シャングリラ
アンコール
EN1. M4EVER
EN2. 満月に吠えろ




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チャットモンチー 2017年4月16日 盛岡Club Change WAVE

チャットモンチー
2017年4月16日
盛岡Club Change WAVE
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 4月16日はメンバーの福岡晃子さんの誕生日のため、入場時にクラッカーが配られ、ライブ中に橋本さんの合図でクラッカーを鳴らしてください、との説明があった。

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れ始める。前日の青森公演でも言及されていたが、このSEは橋本さんが作成したとのこと。SEが終盤にさしかかると、チャットモンチーの2人がステージへ。

 今回のツアーでは、ステージ中央に2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されている。オーディエンス側から見て、右側のシンセに橋本さん、左側のシンセに福岡さんが座る。シンセサイザー以外のアンプやドラムなども、2人を囲むように所狭しとセッティングされている。

 打ち込みによる均質なドラムのビートが流れ始め、2人がシンセサイザーでコードと旋律を弾いていく。1曲目は「レディナビゲーション」。シンセのフレーズは、確かにレディナビゲーションのイントロのギターをなぞってはいるが、音質が全く異なるため、別の曲のようだ。全体のリズム感、サウンドも、ギターを前面に押し出したロックではなく、テクノに近い。それでいて、2人の弾くシンセサイザーからは、生演奏によるグルーヴも感じられ、人力テクノといった感じのアレンジだ。

 1曲目が終わると、橋本さんは「皆さんこんばんは、チャットモンチーです! 盛岡に来たのは2、3年ぶりです。前はサポートメンバーを入れて6人で来たんですけど、今日はパソコンと2人で来ました!」、福岡さんは「パソコンと2人で、メカットモンチーです。今日はこんな感じで、見たことない感じになると思いますけど、ここまで情報がないのにチケットを買ってくれた人は、のれるはず!」と挨拶。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」と、2人のシンセサイザーと打ち込みによるメカットモンチー体制でのライブが続く。いずれも、今までのチャットモンチーのようなギター・オリエンテッドなサウンドとアレンジではなく、シンセの電子音とテクノ的なビートが目立つ演奏。

 「恋の煙」の後には、ここまでの3曲とは少し変わった、軽やかなリズムが流れ始める。そのリズムをバックに、2人が話を始める。

福岡「皆さん、すごいですね! 3曲でだいぶ雰囲気つかんできてくれて、ありがとうございます。今から、誕生日の曲をやるんですけど、今日誕生日の人いますか?」
(オーディエンスから手が上がらず)
福岡「えっ? もしかして私だけ!?」(4月16日は福岡さんの誕生日)
(オーディエンスから拍手と大歓声)
橋本「ほんとにおらん?」
(オーディエンスの1人が手を上げる)
福岡「おった、おった! 一緒やん! 4月16日生まれは大体友達(笑) じゃあ、今日は私の誕生日なんで特別に、ここ1週間以内が誕生日って人?」
(オーディエンスの数人から手が上がる)
福岡「じゃあ、サビのハッピーなバースデーってところで、ここ1週間が誕生日の人たちに拍手してあげてください! 私は自分で歌うんですけどね(笑)」
橋本「(オーディエンスに向かって)じゃあ、みんなあれ最後ね。」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。ドラムの打ち込みに2人のシンセサイザーという編成は変わらないが、ここまでの3曲に比べると、シンセの音色がアコーディオンのような温かみのあるもので、全体としてテクノ色は薄く、雰囲気がだいぶ異なる演奏。

 曲の最後の部分になると、橋本さんがオーディエンスに向かって「みんな出してください。行くよ。ワン、ツー、スリー、フォー!」と声をかけ、「フォー!」のタイミングで一斉にクラッカーを鳴らす。

橋本「おめでとう、あっこちゃん!」
(オーディエンスからも「おめでとう!」の声)
橋本「みんな、すごい良かった!」
福岡「火薬の匂いもすごい(笑) ありがとう! えっちゃんが“最後ね”って言ったとき、なに!?って思った(笑) 前にもやられたことがあって、全員が私の顔になるっていう、こわいことやられたので(笑)」
橋本「それも考えたんや。京都でそういうサプライズやって、みんなあっこちゃんの顔になったんですけど、違う人の顔でその二の舞にしようかなと思ったんよ。今あっこちゃん、めっちゃ好きやから『じゃりン子チエ』の顔とか、考えたけど、歌詞が“クラッカーの音”やから、クラッカーにしたよ。」
福岡「ありがとう、やさしい!」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「どうしよ、ここで抱負とか言うべきなんですかね(笑) えっと、びっくりしすぎて言葉が出てこないんですけど、今年も健康に、30代はほとんど厄年と言われている女性ですけれでも、そんなことを吹き飛ばすぐらい、いい曲をやっていきたいと思います! どうやって、ライブに戻ったらいいかわからない(笑)」
橋本「それとなく、戻るな。」
(シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「急な電話(笑) ガチャ! もしもーし?」
橋本「もしもし、あっこちゃん? 今なにしてたの?」
福岡「今ねぇ、盛岡でねぇ、300人に発砲されてました。すごかったよ! ハッピーな発砲だったよ(笑)」
橋本「ハッピーな発砲っていいなぁ。」
福岡「そういう発泡酒、できるかも(笑) えっちゃんは何してるの?」
橋本「岩山でねぇ、動物見てる。」
福岡「岩山ってところに動物園があるの?」
橋本「うん。」
福岡「で、なんの動物見てるの?」
橋本「最近、新しく入ったっていうカピバラ見てる。」
福岡「そうなんや…もしかして暇なの?笑」
橋本「うん、暇してるから、あっこちゃんのとこ行っていい?」
福岡「いいよ、発砲されるけど気をつけて(笑)」
橋本 (シンセサイザーで、スーパーカー的な車のエンジン音を鳴らし、福岡さんの隣へ移動)
福岡「速いにもほどがある(笑) F1やん(笑)」
橋本「めっちゃ速かったやろ。もうちょっとで通り過ぎるところやった。」
福岡「(オーディエンスを橋本さんに紹介しながら) あ、このみなさんが発砲してくれた皆さんです。」
橋本「ありがとうございます。」
福岡「えっちゃん、私の部屋どう? ちょっと発砲の残骸がいっぱいあるけど(笑)」
(ステージ上にも、クラッカーから放出された紙テープなどが随所に残っている)
橋本「色どりがそえられて、めっちゃハッピーな感じになってるやん。」
福岡「しかも、ハッピーな発砲っていう新しいラップも生み出せたところで、ちょっとラップやろか?」
橋本「そうしようか!」

 5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。ドラムが打ち込みから生音に切り替わっただけで、かなり肉体的なサウンドの感じる。橋本さんのシンセは、アルペジエーターのように一音を押すと、フレーズになって音が流れる設定になっているようだ。「ぜんぶカン」演奏後に、橋本さんが福岡さんの隣から、元々の位置に戻り、また長めのMC。

橋本「あー、楽しかった。」
福岡「帰るのも、速いね(笑)」
橋本「あー、今度はあっこちゃん来んかなぁ、私のとこに。今日、誕生にあっこちゃん…」
(福岡さんがシンセサイザーで、パトカーのサイレン音を鳴らす)
福岡「あの300人は、連行されてしまいました。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「マジで!? 危険やな、確かに。」
福岡「じゃあ、えっちゃん家、遊びに行くわ。」
(福岡さんがシンセサイザーで、電車の走る音を鳴らし、橋本さんの隣へ移動)
橋本「(オーディエンスに向かって) 岩山公園に南京錠があるって、本当ですか?」
(オーディエンスの1人が「本当」と答える)
橋本「なんか、恋愛成就みたいな…シド・アンド・ナンシーみたいな…」
(オーディエンスから笑い)
福岡「そういうことかな?」
橋本「っていう余談な。」
福岡「ちなみにご利益あるんですか?」
(オーディエンスの1人が「知らん」と答える)
福岡「知らん(笑)」
橋本「ご利益なさそうな感じですね。」
福岡「徳島にもそういうのあるよな、一緒に登ったら絶対に別れる眉山!笑」
橋本「なんなんだろうな、そういうの多いよな!笑」
福岡「そのエピソードいるんかいなって思う。岩山公園はどうなんだろうな?」
橋本「たぶん、他の公園がライバルやから、触れ回してるんよ。」
福岡「えっちゃんの観点(笑) えっちゃん家、意外と和室なんやね。フォークソングでもやる?」
橋本「やろうか、四畳半の。」

 6曲目は「余談」。MCでの発言どおり、ここまでのメカ体制とは打って変わって、アコースティックなアレンジ。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当し、打ち込みは使用していないようだ。電子音を多用したここまでのライブとのコントラストで、非常にオーガニックなサウンドに感じる。

 7曲目は、福岡さんが橋本さんの隣から、元々のポジションに戻り「CAT WALK」。担当楽器は、橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザー。この曲では、心臓の鼓動のような音のビートが打ち込みで同期されている。

 8曲目は、橋本さんがギターをシンラインに持ち替え、「ほとんどチョコレート」。福岡さんは引き続き、シンセサイザーを担当し、リズム楽器などは打ち込み。ほぼ、音源のどおりのアレンジで、ライブ序盤の電子音を前面に押し出したサウンド・プロダクションから、徐々に耳ざわりが変わってきている。「ほとんどチョコレート」の後にはMC。

福岡「いいとこですよね、盛岡。私、おおはた雄一さんと一緒に、くもゆきってバンドやってるんですけど、おおはたさんもめっちゃ盛岡好きなんよ。常宿があるって言ってた(笑)」
橋本「なに、常宿(じょうやど)って?」
福岡「よく泊まる宿。だから、おかえりなさいって言われるって。それぐらい、盛岡好きなんやって。」
橋本「あやしい(笑) おおはたさん、あやしい!」
福岡「そんな、なんもないっす(笑) ほんまに盛岡好きなんやって!」
橋本「へぇ〜、ええことやなぁ。」

福岡「ちょっとぶりなのに、こんな様変わりしたチャットモンチーを見に来てくれて、ありがとうございます。パソコンで音を作って、足元で操作しつつ、やっているんですが、ここからは生音も混じえて、やっていきたいと思いますんで、ノッテくれよ!笑」

 9曲目は、橋本さんがエレキ・ギター、福岡さんは足でバスドラのペダルを踏みながらシンセサイザーを担当。アルバム『変身』に収録のバージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXに沿った演奏。福岡さんの言葉どおり、ギターの音は鋭く、バスドラの音は下から響き、ライブ序盤のメカットモンチーなアレンジと比較すると、格段にソリッドな音像になっている。

 10曲目は「8cmのピンヒール」。橋本さんは引き続きエレキギター、福岡さんはドラムを担当。アルバム『変身』時代を彷彿とさせる、アンサンブルが極限まで絞り込まれた、ソリッドかつパワフルなアンサンブルが展開。

 11曲目「消えない星」、12曲目「majority blues」、13曲目「Magical Fiction」と、現状の2人体制になってからレコーディングされた楽曲が続く。いずれも、音源に忠実なアレンジで、グルーヴ感抜群のチャットモンチーらしい演奏が繰り広げられる。

 14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのようにシームレスに繋いで披露。タイトな部分と、荒々しい部分が同居し、疾走感と躍動感の溢れる、これまでのチャットモンチーが得意とする演奏が展開。電子音主体の序盤から、肉体的でオルタナティヴ・ロック全開のアレンジまで、無理なく1本のライブのなかに詰め込めるセンスと幅は、本当に驚異的だと思う。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。橋本さんがエレキ・ギター、福岡さんがドラムを担当し、基本的には音源に近いアレンジだが、打ち込みによる電子音が足されており、アクセントになっている。曲中には橋本さんのダンスも披露され、本編が終了。

 アンコールでは、ここまでのツアーと同様、手品のBGMのような音楽が流れ始め、2人がステージへ。これまでのツアーでは、BGMに合わせてチャットモンチーの2人が手品の体で帽子からグッズを出し、オーディエンスに紹介していくが、この日が誕生日の福岡さんに向けて、ここでもサプライズ。

 手品のBGMが、途中から『ウォーキング・デッド』のテーマ曲に切り替わり、さらに「Happy Birthday to You」へ。オーディエンスからは自然と歌声が起こり、曲中にスタッフによってケーキが運ばれてくる。曲は終わると、いたるところから「おめでとう!」の声と大歓声。このあと、橋本さんから福岡さんへのプレゼント、スタッフによる記念撮影があり、改めて2人のMCへ。

福岡「ほんとはね、ここで手品のコーナーがあるんですけど、いきなり『ウォーキング・デッド』のテーマが流れてきたから、サプライズでみんながゾンビになるんじゃないかと思って、すごいドキドキした!笑」
橋本「そっか、お客さんからなんかやられると思って!笑」
福岡「そう、ウォ〜〜とか言って。ありがとうございます。私の為に、こんなに時間を割いていただいて。なんか、達成感がすごい、達成感っていうか満足感がすごい(笑) じゃあ、アンコールやりますか?」
オーディエンスから大きな拍手。
福岡「アンコールも申し訳ないことにね、私の好きな曲なんですよ。」
橋本「そうなの。申し訳なくないよ!」
福岡「ほんま? さらに申し訳ないことに、完成度がめっちゃ低いんですよ(笑) 昨日、青森で。完成度低いんですけど、新しいカバーやってもいいですかって聞いたら、みんながいいよって言ったから、やらしてもらったんですけど、1000点中2点の演奏でした。」
橋本「超低いやん!」
福岡「今日は12点を目指して頑張る! いいかな、それでも? いっか、誕生日やけん!」
オーディエンスから拍手と歓声。
福岡「いけるかなー?」
橋本「うん、行ける!」
福岡「ちなみにタイトル言っても、わかる人半分もいない気がするんですけど、チャゲアスやるんですよ。チャゲアス大好きで、ラジオのレギュラーやってた時に、かけたかったんですけど、規制がかかってかけれなかったんですよ(笑) だから、自分のライブでやるっていうね。えっちゃんにASKAやってもらって。だから、まだ完成度が低くて、私Chageまで行けてないんですよ。」
橋本「じゃあ、お互い目指そう! ChageとASKAを。」

 アンコール1曲目に演奏されたのは、CHAGE and ASKAの「モーニングムーン」。担当楽器は、橋本さんがボーカルとシェイカー、福岡さんがキーボード。

 キーボードの演奏は確かにテクニカルで、流れるようなフレーズと、リズムのキープも兼ねたパーカッシヴなフレーズが共存し、なかなか難易度が高そう。しかし、前日の青森公演での演奏も、本人が「2点」と評価するほどの完成度ではなく、キーボートと橋本さんの声が絡み合い、グルーブ感を持った良い演奏。この日は前日からさら演奏の精度が向上し、楽器数は少ないながらバンド感の増した演奏となっていた。

福岡「2点ではなかった気がする。」
橋本「2点より上がった!」
福岡「4点ぐらい行ってたかな?」
橋本「4点ぐらい行ってた!」
橋本・福岡「ありがとうございます!」
福岡「それでは皆さん、最後にこの曲で一緒に盛り上がってください!」

 福岡さんの上記の言葉に導かれ、チャットモンチーのファンにはお馴染みのバスドラのリズムが響き始める。アンコール2曲目、この日ラストに演奏されたのは「シャングリラ」。

 ドラムは打ち込み、福岡さんはベース、橋本さんはギターを担当。ドラム以外にも、打ち込みによる電子的なサウンドが足されているが、リズムと楽曲の構造はオリジナル通り。しかし、イントロ部分で従来には無かったギターのフレーズを弾いたりと、随所に隠し味のようにアレンジが施されている。サウンドやリズム構造に、大胆なアレンジを施してきたこの日のメカットモンチー体制でのライブの中では、ノリ方がわかるアレンジであったため、オーディエンスも非常に盛り上がりライブは終了。

 最後の「シャングリラ」は前述のとおり、リズム構造は共通しているアレンジだったため、オーディエンスも従来通りのノリ方をしていましたが、一部の楽曲は、解体・再構築していると言っても良いぐらい、大きなアレンジを加えられており、2人の音楽的な引き出しの多さを、改めて感じるライブでした。

 例えば、激しく歪んだソリッドなギターが主軸だった曲を、ソフトなシンセサイザーの音色で組み立て直し、全く別の曲のように響かせる場面も多々。このような大胆なアレンジには、メロディーを前景化させたり、あるいは既存のアレンジとは違ったグルーヴ感が溢れていたりと、楽曲の別の魅力を引き出す効果があります。少なくとも僕は、「この曲にはまだこんな魅力があったか」「この曲のリズムの気持ちよさは、ドラムと歌の関係性にあったか」など、多くの気づきがあるライブでしたね。

 リズム、メロディー、ハーモニー、そしてサウンド。音楽を形作る要素を、既存の楽曲のなかで変幻自在に操り、全く別の一面を見せるチャットモンチーの手腕は、本当に見事! 改めて、すごいバンドだと思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年4月16日
盛岡Club Change WAVE
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. モーニングムーン (チャゲ&飛鳥カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年4月15日 青森Quarter

チャットモンチー
2017年4月15日
青森Quarter
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れる。ベースラインがリズムを刻むなか、様々な効果音が飛び交うこの曲。SEが終盤に差し掛かると、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されており、オーディエンス側から見て右側に橋本さん、左側に福岡さんが座る。オーディエンスからは、盛大な拍手と歓声。

 モニター用のヘッドホンも装着し、1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込み然とした均質な音のドラムの上に、2人がシンセサイザーでコードやベースラインを弾いていく。アルバム『YOU MORE』収録の音源とは、明らかに耳触りが異なるサウンドとアレンジで、オーディエンスからは戸惑いも感じられる。しかし、1曲が終わる頃には、みんな曲に合わせて緩やかに揺れていた。演奏が終わると、大きな拍手。

 橋本さんが「皆さん、こんばんはチャットモンチーです! 青森に来たのは…たぶん4年ぶり!…ぐらいです!」、福岡さんが「4年前も2人だったと思うんですけど、またこんなにも変わってしまいました(笑) でも、見捨てずに来てくれてありがとうございます。」と挨拶。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源とは異なるシンセサイザーの電子音感が目立つアレンジ。特に「恋の煙」は、イントロの歪んだギターがシンセサイザーに置き換えられ、サウンドの違いが際立っていた。打ち込みによるドラムのビートも、打ち込み感を強調するような均質なもの。

 3曲目「恋の煙」が終わると、打ち込みによるドラムが流れ始める。そのドラムをバックに、2人が話を始める。

福岡「いきなりですが、今日誕生日って人いますか?」
(オーディエンス数人から手が上がる)
福岡「おー、めっちゃおる! ちなみにアラウンド3日以内って人はいますか?」
(また、数人から手が上がる)
橋本「あっこちゃんもやん!」
福岡「そう、私も! 私と同じ誕生日の人おる? おらんか。今から「バースデーケーキの上を歩いて帰った」という曲をやるので、サビのところで誕生日の人に向かって、うわーって拍手してあげてください!」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。この曲もドラムは打ち込み、2人がそれぞれシンセサイザーを弾くのだが、それまでの3曲に比べれと、ドラムのリズムが軽やかで、バンド感を感じさせるアレンジ。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後にはMC。

橋本 (シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「ガチャ! もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?」
福岡「なんなん? 携帯じゃなくて、自宅の電話にしてきて。」
橋本「今なにしてる?」
福岡「今、青森でね、300人と一緒にホタテ食べてるわ。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「マジで? 300個もホタテ?」
福岡「うん、余裕余裕。ホタテが売るほどあるけん、青森は! ほたてソフトクリームまである! えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ワ・ラッセにいるんだけど。食べ放題で、めっちゃチラシ寿司食べてるんやけど。食べ終わったんで、あっこちゃん家にいってもいいかな?」
福岡「いいよ、青森の私の別荘ね。ペンソンにね(笑)」
橋本「じゃあ、青い森鉄道に乗っていくわ。」
(シンセサイザーで電車が走る音を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣へ移動)
福岡「じゃあ、うちに来たからには、ラップやってってもらうから。」

 チャットモンチーでラップが入る曲といえば「ぜんぶカン」。この曲では、福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザーを担当。橋本さんが弾くシンセサイザーは、一音を弾くと、その音からフレーズが続くように設定されているようだ。まず橋本さんがシンセサイザーを弾くが、弾く音を間違ったのか、不安定なフレーズが演奏される。

橋本「ちょっと待って!」
福岡「ヤバい(笑) なに今の不穏な音?」
橋本「ごめん、もう1回いきます!」

 あらためて5曲目「ぜんぶカン」がスタート。ベースの音も聞こえたので、ベースは打ち込んだものを再生させているようだ。ドラムが生演奏に切り替わったため、ここまでのメカットモンチー体制のアレンジに比べると、生バンド感が増している。「ぜんぶカン」の後には、またMC。

橋本 (福岡さん側から、元々いたステージ右側へ戻る)
福岡 (シンセサイザーで雨が降る音を鳴らす)
橋本「雨?」
福岡 (カミナリの音を鳴らす)
橋本「カミナリやん。」
福岡 (吹雪の音を鳴らす)
橋本「どこ? 急に荒れたん、天気が?」
福岡 (鳥のさえずりの音を出す)
橋本「晴れたん? 森? やっぱり青い森?」
福岡 (馬が走る音を出す)
橋本「馬? なんのヒントもなかったけど、来るんやな私の家に。」
福岡「馬に乗って行こうと思ったんやけど、馬の距離じゃなかったみたい、えっちゃん家。」
(シンセサイザーでヘリのプロペラ音を鳴らし、福岡さんが橋本さんの隣へ移動)
橋本「ヘリや。」
福岡「えっちゃん家は、白を基調としてるんやね。」
橋本「そうなの、でも床だけ黄色いの。たまごを意識してるの。目玉焼き。」
福岡「なるほどね(笑) いっつもここそうなんですけど、面白いこと言うたらいかんコーナーなんですよ。これからいい曲やろうとしてるのに。そういう歌か。」
橋本「そういう歌。」
福岡「余談という曲をやりたいと思います。」

 6曲目は「余談」。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当。この曲は打ち込み音源も使用していないようで、ここまでのライブとは一変して、アコースティックでしっとりと聴かせるアレンジ。

 福岡さんが、橋本さんの隣から元の位置に戻り、7曲目は「CAT WALK」。橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。心臓の鼓動を思わせるような深くエコーのかかったバスドラのような音も鳴っていた。この音は、打ち込みのようだ。橋本さんは弾き語りのようにゆったりしたコード・ストローク、福岡さんはシンセサイザーでピアノの音色を使い、隙間を埋めるように音を紡いでいく。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをアコースティックからエレキに持ち替え、福岡さんは引き続きシンセサイザーを担当。ドラムは打ち込んだものを同期しているようだ。「ほとんどチョコレート」の後にはMCで、今回の機材の説明。

福岡「(プライバシー保護のようなエフェクトのかかった声で)ハロー!」
(オーディエンスの一部から「ハロー」という返事)
福岡「マジか、ありがとう! ハローで返してくれるなんて。今、声が変でしょ? メカになってから導入したんですけど、別に犯罪者なわけじゃないです(笑) 今回のメカットモンチーは、メカの力を最大限に駆使してやっておりまして、パソコン君しかり、メカはもうメンバーみたいなものなんです。」
橋本「…はい。」
福岡「ここに理解者が1人いました(笑) そうなんよ。見てるだけじゃいまいちわからんという方のために、いつも説明しようとするんですが、説明の仕方が難しいんですけど(笑) さっきの声が変わるやつは、私とえっちゃんの音を感知して、勝手にハモってくれる機械なんですよ! 皆さんもお金払えば明日からハモってもらえますよ(笑) 文明はお金で買えるんです! あと、曲の合間の音とか、オープニングの音はえっちゃんが作ったんですよ。」
(オーディエンスから「へぇー」という感嘆の声)
福岡「すごいでしょ?」
(オーディエンスから「すごーい!」の声)
橋本「違うんよ、今のなんて氷山の一角。一角以外の部分は、全部あっこちゃんが担って、パソコン使いの女王となって、ここに君臨しています!」
福岡「そうなんや、わたし女王なんや(笑)」
橋本「うん、すごい操ってる!」
福岡「えっちゃんも私も足元で操ってて、なるべく心まではメカにならないようにと(笑) だから、わりとフィジカルですよね。」
橋本「4年前に2ピースで来たときの考え方とはガラリと変わって、当時はもうクリックすら嫌ってて、アイツに支配されたくないっていうぐらい、電子的なものがイヤだった時期で。」
福岡「クリックの野郎!みたいな(笑)」
橋本「そう、絶対合わせません!みたいな感じで、もうズレて行こう!みたいな感じで、やってたんですけど、4年も経つと、もう頼って頼って(笑) 変わるもんですねぇ。」
福岡「でも、チャットがメカをやるのはこういうことになるんだっていう、なるべくメカだけど肉体的になりたいから、足でリズムを切り替えてたんですよ、最初の2回ぐらい。あんまりそういうことするから、パソコン止まったりして。やっぱりメンバー同士の争いはありますよね(笑)」
橋本「もう、出世魚みたいな感じですよね。」
福岡「今どのへんなんやろ? 出世魚でいうと(笑) もう一番デカいかなぁ?」
橋本「鮭?」
福岡「戻り鮭かなぁ? もう、みんなついてきてないよ(笑) じゃあ、えっちゃんが作った音を聴いてもらおうかな。」

 9曲目は「変身」。福岡さんの言葉どおり、まず橋本さんが作ったという、宇宙空間を漂うようなスペーシーなSEが流れ始める。この曲では橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラム。それ以外にもベースや効果音も聞こえるが、これらは全て打ち込んだものを同期させているようだ。オリジナル・バージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXに準拠したアレンジでの演奏だが、ライブ序盤の楽曲に比べると、生バンド感はますます増してきていた。

 10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」も、引き続き橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラムを担当。この2曲は変身TOUR期に近いアレンジとサウンドで、これまでのチャットモンチーが得意としていたグルーブ感があふれていた。

 橋本さんの「東京と徳島のことを思って書いた曲です」という紹介から、12曲目は「majority blues」。現状の2ピースになってからの楽曲なので、ほぼ音源どおりのアレンジ。

 出たばかりの新曲ということで、収録曲とPVの紹介をしてから、13曲目に披露されたのは「Magical Fiction」。橋本さんはシンセサイザー、福岡さんはドラムを担当。この曲も現状の2ピース体制になってからの楽曲なので、音源どおりのアレンジでの演奏。ベースは打ち込みのようだ。

 14曲目は「こころとあたま」から「湯気」のメドレー。担当楽器は引き続き、橋本さんがシンセ、福岡さんがドラム。ギターレスの編成だが「こころとあたま」のイントロでは、橋本さんがラフなリズムで、フランジャーのかかったような音色でシンセを引き、バンド感は強い。

 「こころとあたま」のサビ後の間奏部分で、橋本さんがシンセからエレキ・ギターへ。福岡さんがドラムを叩き続けるなか、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。非常に荒々しく、今までのチャットモンチーらしい音とグルーヴ感のある演奏だった。

 本編ラスト15曲目は「満月に吠えろ」。音源に近いアレンジだが、イントロ部分のギターが、音源だとドラムのカウントのあと最初の8小節はコード弾きのみ、その後8小節にギター・ソロが入ってくるが、今回のツアーでは最初からギター・ソロが入ってくる。また、橋本さんのギターと福岡さんのドラム以外にも、いくつかの電子音が打ち込みで同期されているようだ。

 アンコールでは、まず手品風のBGMが流れ始め、しばらくするとチャットモンチーの2人がステージへ。背の高い帽子と、白い手袋を着用しており、マジシャンに扮しているということのようだ。帽子の中から2人が次々に今回のツアーグッズを出していく。

福岡「なんやねんって感じでしょ(笑) これが私たちが編み出した、喋らない物販紹介です。まぁ、アンコールなんでね、おまけー!みたいな。」
橋本「今回のツアーでは、アンコールの1曲目はカバーしようって決めてて、この4月クール、新しい曲を用意…し始めています! 今の語尾の意味は?」
福岡「あのな、練習したんですよ新しい曲を。そしたら、なかなかの低い完成度で(笑) でも、どうしてもやりたいんですよ。これから徐々にうまくなっていくと思うんですけど…とりあえず聴く?笑」
(オーディエンスからは拍手と歓声)
橋本「ごめんな。先に謝っとこうか。」
福岡「先にめっちゃ謝っとく!」
橋本「でも、どうしてもやりたくって、今日もギリギリまで練習してたんですけど、やっぱり100%までいってない状態なんやけど、どうしてもやりたいから、やらせてください!」
(オーディエンスからは大きな拍手)
福岡「(シンセを弾きながら)ほんま自信ないけん、間違えたらやり直させてな。」
橋本「あっこちゃんが愛してやまない人のカバー。」
福岡「えっちゃんが一緒にやってくれるって言うから。世代的に知らん人おるかもしれんけど、手拍子してのってればいけると思います。」
橋本「じゃあ、エリandアキで、CHAGE and ASKAのモーニングムーンやります。」

 アンコール1曲目はCHAGE and ASKA(チャゲ・アンド・アスカ)のカバーで「モーニングムーン」。福岡さんがピアノの音色に設定されたシンセサイザー、橋本さんがボーカルとシェイカーとタンバリンを担当。この曲では、打ち込みは使用していない。

 橋本さんの「いっせーのーで」という声から曲がスタート。ピアノは難易度が高いらしく、1回目はイントロ部分で福岡さんが「ごめん、もう1回やらして!」と言って、仕切り直し。少しテンポを落としてから、今度は「ワン、ツー、さん、はい!」という声からスタート。福岡さんのピアノと橋本さんのボーカルとパーカッションのみの編成だが、2人の間でしっかりとグルーブ感が生まれていて、やっぱりチャットモンチーはバンドだなと感じる演奏。

福岡「もう、2点! 2点のできやったけど、無事完奏できました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「チャゲアス大好きなんですよ、私。もちろん飛鳥も大好きで…」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうだよ、チャゲだけ好きなんてな。両方でCHAGE and ASKAやから。」
福岡「そう、両方好きで、ラジオでかけたかったけど、かけたらあかんって言われて(笑) 今、ちょっと世の中的にあかんって言われたから、ツアーでやりました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
橋本「よかったな。」
福岡「ちょっと、えっちゃんに飛鳥を見たよ。一瞬しか見れんかったけど、飛鳥や!って。」
橋本「ほんま? ありがとう!」
福岡「こちらこそ、ありがとう!笑」

 アンコール2曲目は「シャングリラ」。橋本さんがギター、福岡さんがベース、それ以外のドラムと電子音は打ち込み。まず、聞き慣れたバスドラのリズムが流れ始める。福岡さんが「最後はこの曲で盛り上がっていただきたいと思います!」と言ってから、スネアが入り、橋本さんはスライド・ギターを思わせるようなフレーズを弾き始める。

 ところどころアレンジは変わっているが、ドラムのリズムやベースラインなど基本的な構成は音源どおり。オーディエンスも非常に盛り上がり、この日のライブは終了!

 月が変わって、4月1本目のライブ。アンコールでのカバー曲にもあらわれていますが、今回のツアーは試行錯誤の過程も見せてくれているようで、メンバーのMCも今までになくリラックスしているように感じます。「試行錯誤」と書きましたが、決してライブのクオリティが低いということではありませんよ。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年4月15日
青森クォーター (Quarter)
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. モーニングムーン (チャゲ&飛鳥カバー)
EN2. シャングリラ




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