チャットモンチー 2018年7月21日 こなそんフェス2018

チャットモンチー
2018年7月21日
アスティとくしま
「チャットモンチーのこなそんフェス2018」

 チャットモンチーの地元徳島で、7月21日と22日の2日間にわたって開催された、通称「こなそんフェス」こと「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 〜みな、おいでなしてよ!〜」。かねてより発表されていたとおり、2日目の22日のライヴをもって、チャットモンチーは「完結」となりました。

 そのため1日目の7月21日は、本人たち曰く「プレ完結」となる公演。2daysの1日目ということで、位置付けの難しいところもあるライブですが、結論から申し上げると、とても価値のあるライブとなりました。その理由は、2011年に脱退したドラムの高橋久美子さんが、チャットモンチーのライブ中にステージに上がり、しかもドラムを叩いたため。

 多くのバンドや芸人が出演する「こなそんフェス」ですが、ここではチャットモンチーにまつわることを中心に、前半に当日のライブ・レポート、後半に僕の雑感を記述します。

12:50〜 前説

 開演予定時間は13時。10分前の12:50頃になると、この日のMCを務める小籔千豊さんとチャットモンチーの2人がステージへ。いわゆる「前説」を始めます。

 「ライブ中の撮影・録音は禁止だけど、提灯タワーや顔はめパネルなどは、どんどん撮ってSNSにアップしてね!」「会場内は飲食OKだけど、ラーメンなどの汁物だけはNG!」など、注意事項を伝えていきます。

 終始にこやかに、思いっきり楽しんでほしいことをアピールするチャットモンチーに対し、小籔さんは終始テンション低め。ご本人いわく「大好きだった幼稚園の先生が、やめてしまうような気持ちです。皆さん盛り上がってくださいよ! 僕だけ悲しんでますんで。」

13:00〜 ライヴ本編スタート

 前説に続いて、ライヴの本編がスタート。1組目は、シュノーケル。チャットモンチーのファンにはご周知のとおり、2006年から2008年まで3年連続で、チャットモンチーとBase Ball Bearと共に「若若男女サマーツアー」を開催したバンドです。

 MCでも、ボーカルの西村さんが「僕らシュノーケルの音楽人生にとって、一番楽しかった思い出が、チャットモンチーとBase Ball Bearと3組で回った若若男女サマーツアーです。その最後の開催から、ちょうど10年経ちまして、3組とも色々なことがあったんですけど、今日またこの3組が同じステージを踏める日を、チャットモンチーが用意してくれたました。ありがとう!」と発言。

※ 下の画像は、こなそんフェスの公式Twitter(@konason_staff)より
https://twitter.com/konason_staff/status/1020530701102342144

 その後、2組目の「yonige」、転換中の芸人枠で「野性爆弾とガリットチュウ福島」を挟み、15:05からはBase Ball Bear。前述のとおり、こちらも若若男女サマーツアーを共に回り、チャットモンチーとはつながりの深いバンド。

 ボーカルの小出さんはMCで「どういう気持ちで今日が来るのかなというのが、想像できてなくて、昨日までずっと”明日どんな感じなんだろう?”って、1日に何回か頭の中をよぎるんですよね。正直、泣くのかなと思ってたんですよ。そうしたら、楽屋入ってテーブルに、チャットモンチーからのメッセージがあったんですけど、そこに”Base Ball Bearへ 泣かないでね”って書いてあったの。これで泣いたら、相当みっともないなと思って(笑) 今日はチャットモンチーが地元でやるお祭りですから、皆さんと一緒に楽しんでいきたい、と思っております!」と発言。

※ 下の画像は、こなそんフェスの公式Twitter(@konason_staff)より
https://twitter.com/konason_staff/status/1020562465011068928

 Base Ball Bearの後は、南海キャンディーズ、EGO-WRAPPIN’、奥田民生、ミキと続き、ついに最後のチャットモンチーへ。13時から開演した長丁場のイベントですが、体感的にはあっという間です。

19:30〜 チャットモンチー

 2005年に、3ピース編成でデビューしたチャットモンチー。2011年にドラムの高橋さん脱退後は、時にサポートメンバーを加えながら、フレキシブルに姿を変えながら活動を続け、ラスト・ワンマンとなった先日の日本武道館公演でも、2人にPCを加えた編成、ドラムに恒岡章さんを迎えた3ピース編成、ストリングス隊との共演と、ひとつのライブの中で次々と編成を変えていました。

 では、ラスト・ライブとなる、こなそんフェスではどんな編成になるのか。僕も含め、訪れたファンにとって、気になるところでしたが、答えは出演者の中から順番にゲスト・ドラマーを加え、3ピース編成でライブをおこなうというもの。

 19:30になると、出演バンド呼び込み用のジングルが流れ、まずはチャットモンチーの2人がステージへ。場内はもちろん、この日一番の大歓声に包まれます。

福岡「みんな、ありがとう! 元気ですかぁーーー!?」
オーディエンス「イェーーーーイ!!!」
福岡「ヤバい、初めてライブで言った、”元気ですか”って(笑)」
オーディエンスの1人「おかえりー!」
橋本・福岡「ただいまー!」

福岡「まずは、せっかく帰ってきたし、ここ数年の私たちのヒット・ソングをやりたいと思います。」
橋本「(オーディエンスに向かって)徳島の人!」
(徳島出身・在住と思われるオーディエンスが手をあげる。)
橋本「……半分以下…?」
福岡「まずい(笑) チャットモンチー好きな人!」
(オーディエンス全員が挙手。)
橋本「ほな、いけるわ!」
福岡「すごい、ローカルな曲やります。」

 ステージ上にはドラムセットもセッティングされていますが、まずはサポートを入れず、橋本さんがギター、福岡さんがベースの2ピース編成で、1曲目に「きっきょん」を披露。FM徳島のジングル用に制作された曲とのことで、10秒ほどの1曲。

 「きっきょん、きっきょん、きっきょん、え、これ何きっきょん。エフエム徳島きっきょん。」という歌詞の、チャットモンチーらしい、言葉と伸びやかなメロディーが、一体化した曲でした。歌詞とメロディー共に、一度聴いたら覚えられる、思わず口ずさんでしまう親しみやすさがあり、わずか10秒の曲ですが、チャットモンチーの魅力が十分に濃縮されています。

福岡「わずか10秒のチャットモンチー最短の曲です。”きっきょん”という曲でした。数年前から、FM徳島さんで流していただいております。せっかくなので、今日は2番を作ってきました。」
橋本「そうだよ! 10秒の新曲やで。」

 2番の歌詞は「やんよん、やんよん、やんよん、え、これ何やんよん。こなそんフェス2018やんよん」。メロディーは基本的に1番と共通ですが、「こなそんフェス2018」の部分は文字数が増えている分、譜割りが早口言葉のようの細かくなっています。

橋本「やったー、大成功!」
福岡「いやぁー、これでだいぶ安心しましたね。」
橋本「めっちゃ緊張したなぁ。」
福岡「もう、こっからは行けますよ。」

ドラム 小籔千豊

 ここからは前述のとおり、1〜2曲ごとに代わる代わるゲスト・ドラマーを混じえ、3ピース編成で進行していきます。1人目のドラマーは、この日のMCも担当する小籔さん。

 福岡さんの「ここからはですね、強力な助っ人を呼びたいと思います! 本日のMC、こやびんでーす!」という呼び込みに導かれ、小籔さんがステージへ。それから、ゲスト・ドラマーに事前に聞いた、共通のアンケートの回答を紹介していきます。

好きな食べ物: ドミノ・ピザのマヨじゃが、31のハニーレモンハニー
好きな動物: 盲導犬、補助犬、警察犬
その動物になったら何をしたいですか: 人を助けたい
転職するなら何になりたいですか: 学校の先生、小説家、お坊さん、ドラマー

 福岡さんの「みなさんご存知のとおり、こやびんはチャットモンチーの大阪支部のドラマーとして、ずっと活躍してくれてました!」という紹介に続いて、「風吹けば恋」と「真夜中遊園地」の2曲を披露。

 基本的には音源に忠実なアレンジで、プロのドラマーと比べてしまえば、わずかにリズムのあまいところがありますが、かなりの完成度の高さで、こんなところからも小籔さんのチャット愛が伝わります。

 小籔さんのMC「本当にすばらしいフェスで最高なところ悪いんですけど、僕はめちゃくちゃ悲しいです。ドラムを叩きながら2人に振り返ってもらう風景も、あっこちゃんさんのかかとを見ながら叩くことも、えっちゃんさんが振り返って”イけてるよ”みたいな感じで眉毛を上げてくれるのも、もう見られへんのかなと思うと、とても悲しいです。みなさんは盛り上がってくださいね! 今日という日を忘れずに、これからもドラムを頑張っていきたいと思います。今まで本当にお疲れ様でした。」

ドラム 奥田民生

 2人目のゲスト・ドラマーは、奥田民生さん。小籔さんが使用していたドラムが移動し、次のドラム・セットがステージ上へ。すると、すでに民生さんがドラムの前に座っており、スタッフの手によって、ドラムと共に運ばれてきます。「どうも、こんばんは! 奥田民生です!」と挨拶をしますが、かなり酔っ払っている様子。小籔さんの時と同様、福岡さんがアンケートの回答を紹介。

好きな食べ物: 明太子、谷中生姜
好きな動物: ゾウ
その動物になったら何をしたいですか: 鼻で水を吸う
転職するなら何になりたいですか: お好み焼き屋

 民生さんと共に演奏されたのは「阿波の狸」と「コンビニエンスハネムーン」の2曲。「阿波の狸」は、徳島県徳島市で毎年11月に開催される「阿波の狸まつり」のシーズンになると徳島県内で流れる、祭りのCMに使われている曲のカバーとのこと。

 民生さんのドラムは、手数は多くなく、ところどころリズムにタメがあり、独特の音が遅れて出てくるような感覚がありました。

ドラム 山田雅人 (シュノーケル)

 3人目のドラマーは、シュノーケルの山田雅人さん。これまでの2名と同じく、アンケートの回答を紹介。

好きな食べ物: たい焼き
好きな動物: クジラ
その動物になったら何をしたいですか: 地球を一周したい
転職するなら何になりたいですか: たい焼き屋

 山田さんと共に演奏したのは、チャットモンチーのデビュー曲「ハナノユメ」。次々とドラマーが入れ替わると、それぞれの個性が際立つところも興味深かったのですが、山田さんのドラムは、一発ごとのヒットにキレがあり、非常にシャープな音像を作り出していました。

ドラム 堀之内大介 (Base Ball Bear)

 4人目のドラマーは、Base Ball Bearの堀之内大介さん。名前を呼び込まれる前に、スタッフに混じってドラムの移動とセッティングをしながら、ステージへ。チャットモンチーの2人が気づく前に、オーディエンスが堀之内さんに気づき、場内から笑いが漏れます。

福岡「あれっ!? ちょっと待って! なんか1人、プロレスラーみたいな人が混ざってるんだけど(笑) あんな人、チャットのチームにおったかなぁ。もう、うちらが知らんことやるのやめて(笑)」
橋本「Base Ball Bearのホリーーー!!」
(オーディエンスから大歓声)
福岡「ホリくんのアンケートは、もういいかな?笑」
堀之内「いいんじゃないかな。」
福岡「もう、だいたい言っちゃったもん。転職するとしたらプロレスラー。」
橋本「やっぱり?」
福岡「好きな食べ物はドリア。」
橋本「やっぱり!」
福岡「好きな動物は…えっちゃん、なんやと思いますか?」
橋本「ゴリラ!」
堀之内「俺の見た目で言ってるじゃない(笑)」
橋本「違う(笑) 見た目じゃなくて、なんかゴリラかなって…」
福岡「正解は犬でしたー。」
堀之内「普通でしたー。」
福岡「犬になったとしたら、何をしたいと思ってるでしょう?」
橋本「すごい大事な飼われ方して、すごい大切に育てられたい!」
福岡「正解は、猛ダッシュでした!」

 堀之内さんと共に演奏されたのは「恋の煙」。選曲は、堀之内さんのリクエストとのこと。こちらもアレンジ、音作り共に、基本的には音源に忠実。ですが、高橋久美子さんによる立体的なドラムと比較すると、堀之内さんのリズムはより前のめりで、推進力を重視したドラミング。

 また、曲後半のブレイク部分は、従来のライブではシーンと静まり返り、コントラストを演出していましたが、この日は逆に観客の歓声を呼び込むように、長めに休符をとっていました。

若若男女サマーツアー2018

 ここまで4人のドラマーを迎え、7曲を披露。残りの2曲は、若若男女サマーツアーを共にまわった3バンドによる、スペシャル・セッションとなります。

福岡「今日さ、シュノーケルとBase Ball Bear出てたやん? 私たち、昔3バンドでツアーしてたじゃない?」
橋本「えっ、てことは!?」
福岡「せっかくやから、シュノーケルとBase Ball Bear呼んでいいですか?」
(オーディエンスからは大歓声。シュノーケルとBase Ball Bearがステージへ。)
福岡「若若男女サマーツアーっていう、老若男女をもじって、若い若いで若若と書いてたんですけど、今どうですか?」
橋本「ざっと見て、どうですか?」
小出「もう完全に、おじさんとおばさんですよね(笑) いや当時はね、一番年下の関根が21才ぐらいで、俺とホリも22ぐらいでしたよ。で、チャットとシュノーケルが23、24ぐらいでしょ? それが今、関根ですら33ですから。それより上は、言うのもはばかられる(笑)って年ながら、久々に若若男女で集まろうってことですよ。」
福岡「なんか、今すごいセットが組まれてますけど、これもしかして若若男女でよくやってたやつ?」
小出「まぁ、そういうことですよね。」

(各楽器がセッティングをしている最中に一部のメンバーでMC)
福岡「こいちゃんはねぇ、すごい立派になったよ。最初の若若男女サマーツアーでは全然しゃべんなくて、ツアーの最後に一番名残惜しそうにしてたの。で、その1年後にまたツアー始まったら、またなんか久しぶりに会ったいとこみたいな感じで不機嫌になってて、でも最後一番名残惜しそうにしてるの(笑)」
小出「あの頃は、やっぱり心を開いてなかったっていうか、チャットモンチーみたいに、田舎から出てきたやつに負けてられっかっていう…」
(会場が徳島なので、チャットモンチーとオーディエンスから笑いが漏れる)
小出「ごめんごめん(笑) 田舎の皆さん、ごめんなさい! 東京都から来ましたー!」
橋本「やめて!笑」
堀之内「俺らが徳島に呼んでもらえなくなるじゃん! 誰が得するのよ!笑」
小出「すごくいい街だなと思いますよ。なに食べても美味いし、天気もいいし、みんなの人柄もいいし、人間国宝みたいなバンドを生んだ街ですよ徳島! チャットモンチーが完結したとしても、明後日からもチャットモンチーいるんだろうなと思って、みんな生きていくと思いますよ。それぐらい、音楽史に名を残してきたバンドだと思います。」
福岡「ありがとう。こいちゃんにそんな励まされると思わんかったわ。」
小出「最後だからね。」
福岡「そうだね、今日プレ完結やから。」
橋本「あのねぇ…(演奏の)準備ができたって!」
小出「えー、だから何年ぶりですか?」
西村「10年ぶり?」
小出「みんなで集まるのは10年ぶり。この曲をやるのは、12年ぶりかな? 僕らにとっての青春だと、言い切っていいですよね?」
橋本「いいよー!」
小出「青春の大事な1ページだと思います。おそらく、このメンバーで集まって演奏するのは、これが最後なんじゃないかなと思うので、最後の若若男女、目に焼きつけてほしいと思います。」

 若若男女のメンバーによって、12年ぶりに演奏されたのは「今夜はブギー・バック」。言うまでもなく、小沢健二とスチャダラパーによる曲のカバーです。1994年にリリースされ、その後も多くのバンドやミュージシャンにカバーされてきたこの曲は、若若男女世代のアンセムと言っても過言ではない1曲でしょう。

 3バンド分の厚みのあるアンサンブルに乗せて、小出さん、橋本さん、西村さんがボーカルを担当。主にラップのパートを小出さん、それ以外の歌メロを橋本さん、橋本さんを支えるコーラスを西村さんが担う構成となっていました。

 「今夜はブギー・バック」演奏後、福岡さんがオーディエンスを煽り始め、最後の曲へと誘導していきます。

福岡「まだ、みんなが物足りなそうな顔してる! みんな、あの曲、聴きたいんちゃう!?」
(オーディエンスからは大歓声)
福岡「みんなが聴きたい曲、みんなでやろうよ、せっかくやけん…。リズム、スタートーー!」
(堀之内さんと山田さんが、シャングリラのイントロのバスドラを踏み始める)
小出「あ、ちょっと待って、待って! 今日さぁ、友達つれてきてるんだけど、最後にその友達も混ぜてあげていいかな? ちょっと呼んでくるわ! 俺も久しぶりに会う友達なんだけど。」
(しばらくすると、小出さんが高橋久美子さんを連れてステージへ)
小出「友達、連れてきた!」
橋本「くみこん! クミコンじゃない! めっちゃ泣いてるやん!笑」
小出「クミコン、チャットモンチーは辞めたけど、若若男女は辞めてないもんね! チャット辞めた時にさ、ドラムセットをSMAの倉庫に置きっぱなしにしてるから、今日それを持って来たよ!」
(ステージ中央にもう1台のドラムセットが運び込まれ、高橋さんがドラムセットへ)
福岡「クミコンのドラムセットを発掘したぞー!」
橋本「めちゃくちゃ泣いてるやん、クミコン。大丈夫かな? ねぇ、すごくない? クミコン帰ってきたよ!(僕には橋本さんの声も、少し涙ぐんでいるように聞こえました)」
福岡「おかえりーーー!」
(ここまで、堀之内さんと山田さんのバスドラ、観客の手拍子がずっと続いています)
小出「ごめん、悪いんだけどさぁ、おじさんのキックうるせぇから、クミコンのキックが聞こえないので、おじさんのキックもうやめていいよ。おじさんのは、もういいから。」
福岡「おじさん(笑) 若若男女って言ってたのに(笑)」
小出「じゃあ、クミコン。あらためて、キックお願いします!」
高橋「それじゃあ、行くよーーーー!!」

 堀之内さんと山田さんがキックを止め、高橋さんがバスドラを踏み始め、あらためてシャングリラがスタート。小出さんは「本物だ、本物だ!」と叫びます。

 この日は会場が大きいため、ステージの両脇にモニターが設置されていたのですが、カメラマンもオーディエンスが何を見たいのか理解していて、この場面ではチャットモンチーの3人が画面に映し出されます。

 もう、聴くことはできないと思っていた、高橋さんのドラム。もう、見ることはできないと思っていた、3人のチャットモンチー。そんな夢のような光景が目の前に広がり、涙を流す人も数多く見受けられました。(自分もその1人ですが…)

 高橋さんのドラミングは、ブランクがあるためか、堀之内さんと山田さんと比べ、ヒットはやや弱いかなと思いましたが、立体的で歌うような、以前のタイム感とリズム感は健在。感情論や印象論ではなく、やっぱりチャットモンチーのドラムはクミコンなんだ!と思わせる演奏を見せてくれました。

 前述のとおり、高橋さんはステージに上がった時から涙でいっぱいでしたが、橋本さんも歌いながら感極まったようで、ところどころ声が震えたり、歌えなくなったり、オーディエンスに向かって「みんな一緒に歌って!」と促す場面もありました。

 ハイライトは間奏部分。橋本さんと福岡さんが、後ろを向いて、高橋さんの方に近づき、あのトライアングルが復活します。ファンにとっては奇跡の瞬間と言っても過言ではない光景。カメラも、もちろんこの3人を映し出します。

 シャングリラ演奏後、3バンドのメンバーが、ステージ前方に集まり、最後の挨拶。高橋さんがドラムセットから前方に出てくるとき、近くにいたシュノーケルのメンバーと関根さんに、なにか声をかけていました。おそらく「久しぶり、元気だった?」というような言葉をかけていたのではないかと思いますが、こんなところからも3バンドの絆が垣間見えます。

 福岡さんがオーディエンスへの感謝を口にしたあと、「Base Ball Bearーー! シュノーケルーー!! そして、チャットモンチーでしたー!」と各バンドを紹介しながら、ステージを後にしていきます。

 最後に、福岡さんが「チャットモンチーでしたー!」と言ったとき、福岡さん、橋本さん、高橋さんの3人が、肩を組むようにして一緒に歩いていて、ファンならばここも号泣ポイントでした。

※ 下の画像は、高橋久美子さんの公式Twitter(@kumikon_drum)より

 ライブのあとは、こなそんフェス恒例の阿波踊りが披露されます。阿波踊りの準備中には小籔さんのMC。「本当にええもん見れましたね。皆さん、これからつらいことがあっても、今日見たことを思い出して、頑張っていただけたらと思います。」と、またまたファンと同じ視点に立った言葉を残してくださいました。

武道館と比較しての「こなそんフェス」

 ここからは、僕がこの日のライブを見て感じたことを、記述します。

 最初に記したとおり、こなそんフェスの2日間をもって「完結」となるチャットモンチー。こなそんフェスの約2週間前の7月4日には、日本武道館にてラスト・ワンマン・ライブも開催されていました。

 武道館公演は、最新アルバムの『誕生』楽曲を中心にした前半。ドラムに恒岡章さんを加えた3ピースでの中盤。チャットモンチー史上初となる、ストリングス隊との共演を果たした後半と、これまでのチャットモンチーの歴史を踏まえた上で、この期に及んでも新しい挑戦を続ける、実にチャットモンチーらしいライブだったと言えるでしょう。

 それに対してこなそんフェスは、その名のとおり、お祭りであり、ファンへの最後の挨拶、といった意味合いのライブのように感じました。適切な表現が思い浮かびませんが、ボーナス・トラックと言うべきか、チャットモンチーからのプレゼントと言うべきか、前を向いて走り続けてきたチャットモンチーが、初めて少しだけ後ろを振り向いたライブだったと、言えるのではないでしょうか。

 武道館では、選曲においてもアレンジにおいても、果敢に新しいアプローチに挑戦したチャットモンチー。しかし、こなそんフェスでは、『誕生』からの楽曲は1曲も披露されませんでした。その代わりに、ゆかりのあるドラマーを次々に迎え、過去のチャットモンチーの様々な部分を、アップデートして見せてくれました。ただ、過去の自分たちのコピーバンドにはならないところも、このバンドのすごいところ。

 全ての曲で、そのドラマーの個性を引き出し、チャットモンチーの一部へと取り込んでいました。このチャットモンチーが拡大していく感覚は、男陣と乙女団が馴染んでいった感覚にも近かったです。また、チャットモンチーにとってゆかりのあるドラマー、最後のステージに一緒に上がりたいと思うドラマーを集めたことも、イベント全体の暖かい空気と、急造バンドとは思えない有機的なアンサンブルを作る要因になったはず。

 言い換えれば、今までは音楽至上主義を貫き、いい意味でファンや時代に媚びない姿勢で、音楽を作り続けてきたチャットモンチーが、初めて地元の人や、付き合いのあったバンドマン、ファンに向けて、開催したのがこのライブだったのではないかということ。もちろん、今までのチャットモンチーがファンをないがしろにしていた、という意味ではありませんよ。

 この日のライブのクライマックスとして、高橋久美子さんがステージに上がり、しかもドラムまで披露してくれましたが、この奇跡も、若若男女サマーツアーで苦楽を共にした、Base Ball Bearとシュノーケルが一緒だったからこそ実現したのでしょう。

 どういう経緯で、高橋さんのドラムが実現したのかは分かりませんが、当事者同士だと、お互いのリスペクトの気持ちが大きすぎて、逆に頼みにくい、受諾しにくいということもあるでしょう。そこを小出さんあたりが、うまく繋いでくれたのではないかなと、個人的には想像しています。

 小籔さんの言葉どおり、終わったあと本当に「いいものを見せてもらった」という気持ちで、いっぱいになったライブでした。最後まで挑戦を続け、未来に向かうチャットモンチーに胸を打たれた武道館と、チャットモンチーがいろいろな過去を思い出話のように聞かせてくれて、あたたかい人柄に胸を打たれたこなそん。このふたつのライブは、コインの表と裏のように、一対になったライブなのではないかと思います。

 音楽に向かう、おそろしいほどのストイックな態度と、本人たちの優しくあたたかい人柄。小出さんの言葉を借りれば、チャットモンチーは、まさに人間国宝のようなバンドです。

チャットモンチーのこなそんフェス2018
2018年7月21日
アスティとくしま
セットリスト

01. きっきょん
02. 風吹けば恋
03. 真夜中遊園地
04. 阿波の狸
05. コンビニエンスハネムーン
06. ハナノユメ
07. 恋の煙
08. 今夜はブギー・バック
09. シャングリラ




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