チャットモンチー
2017年3月10日
金沢Eight Hall (エイトホール)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」
ツアー2日目の金沢公演。前日と同じく定刻を少し過ぎると、客電が落ちオリジナルのSEが流れる。ライトがつき、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、中央に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーをはじめ、ドラムやアンプやMacBookなどが所狭しとセッティングされている。前日と同じく、橋本さんがオーディエンス側から見て右側、福岡さんが左側のシンセサイザーの前へ着席。
1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源から、ギターとベースはシンセサイザーに置き換えられ、ドラムも打ち込みになっている。元々の音源のイントロでは、ギターは歪み、単音でありながら糸を引くような、重厚感のある音とリズムだが、シンセサイザーの輪郭の柔らかい音に置き換えられ、同じメロディーを弾きながらも、かなり印象が異なる。ベースも、音源では、硬い音で8分音符を基本にリズムを刻んでいくが、今回のツアーではシンセサイザーでのコード弾きになっている。
「レディナビゲーション」の後には、橋本さんが「今日は私たちの秘密基地へようこそ!」、福岡さんが「1曲目、みんながあんぐりしてる感じがわかりました(笑) 今日は秘密基地に来てもらったからには、新しいチャットモンチーをどうぞ楽しんでいってください!」と挨拶。
「レディナビゲーション」と同様に、2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源で聴ける音とは、全く異なる耳障りの音質に仕上がっている。「恋の煙」後には少し長めのMC。
橋本「どうですか皆さん、理解してくれてますか? 私たちの想い、届いてますか?」
(オーディエンスから拍手と歓声)
橋本「わかる! すごい気持ちわかるよ!…だけど、許して。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「めっちゃわかるよ! 絶対、私がお客さんだったらそうなってるもん! あぁ、おぉ、えぇえ~~!?」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうなんだよねぇ。これがね、需要と供給のバランスのね、悪さっていうか(笑) でも、いい意味で驚いてくれて良かったです!」
福岡「今日はこんな感じで私たちの秘密基地に来てもらって、秘密基地の定義ってなに?って話なんですけど…」
橋本「(ちょっと得意げに) 調べたよ。」
福岡「え、えぇー? うそぉー!? でもそういうとこあるよな、えっちゃん(笑) ちなみになんなんですか、秘密基地って。」
橋本「えっと…たぶん…」
福岡「たぶん!(笑) 調べたんでしょ?」
橋本「調べたんだけど(笑)、なんだったっけ、とにかく…軍事基地で、人に知られてはならない、場所!」
福岡「ここ、めっちゃ知られてますよ(笑) 本当は知られたらいかん場所だけど、お金払ったら見れるってことやね。」
橋本「そう!」
4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。まず打ち込みのドラムが流れ始め、福岡さんが「今から、この陽気なリズムに合わせて、誕生日の曲をやりたいんですけど、今日誕生日の人いますか? 今日はおらん? じゃあ、アラウンド3日以内!」と、3日以内が誕生日の人を確認すると、数名の手が上がる。福岡さんがオーディエンスに、サビの部分で今日誕生日の人をガン見して拍手してください、という説明をしてから、曲がスタート。この曲のイントロも、オリジナルの音源ではギターとベースが弾いている部分を、2台のシンセサイザーが代わりとなり、演奏していく。
「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後に長めのMC。
橋本(シンセで数種類の犬の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんだろう? 犬の声がする。」
橋本(シンセで「チュンチュン」という感じの鳥の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんか鳥の声が、ここってムツゴロウ王国だっけ?笑」
橋本(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。前日の新潟公演では黒電話を思わせる音だったが、この日は「プルルルルル…」という音)
福岡「もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん? 今、金沢に来てて。」
福岡「私もおるよ! 500人ぐらいにガン見されてる(笑) えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ポツンと兼六園の真ん中にいるから、そっちに行ってもいいかな?」
福岡「いいよ、寂しそうやから、こっちおいで。」
橋本「じゃあ、行くね!」
(シンセで馬が走る音を流す)
福岡「来た! 兼六園から馬で(笑) 犬と鳥は置いてきたの?」
橋本「いや、後ろついてきてる!」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
橋本「なかなか、馬の音探せんかった、ごめんごめん(笑)」
福岡「これ(シンセサイザー)、いろんな音が入ってて、でも犬が吠えると思わんかった(笑)」
上記のやりとりから、橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。この曲での橋本さんのシンセは、一音押すと、アルペジエーターのように、いくつかの音から成るフレーズが演奏される設定のようだ。「ぜんぶカン」の後には、また長めのMC。
福岡(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。しばらく鳴らしても橋本さんが反応せず)
橋本「あっ、あー、ごめん! ちょっとぼーっとしてた(笑) ごめん、ごめん! もしもし…」
福岡「もしもし?」
橋本「どちら様ですか?」
福岡「今、あなたの近くにいます…」
橋本「こわい(笑) あっこちゃんやな?」
福岡「そう、今、兼六園の東側でヒマしてるんや。えっちゃんの別荘、このへんにあったよな?」
橋本「そうだよ、兼六園より広いやつ。」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
福岡「じゃあ遊びに行ってもいいかな?」
橋本「いいよ!」
(福岡さんが橋本さんの近くに移動)
福岡「えっちゃんの別荘、めっちゃ狭いやん!」
橋本「ばれたかぁ(笑) ちょっとここ、笑うコーナーにせんとこって言ってたのに(笑)」
福岡「これから、ぐっとくる曲やるから、みんな切り替えてよ(笑) メカもやりつつ、こういうアコースティックな気持ちも忘れてへんでっていう感じです。」
6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は、橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当し、打ち込みは使用せず。橋本さんの「いち、にい、さん、はい」というゆったりしたテンポのカウントから始まり、橋本さんのコード・ストロークと、福岡さんの長めの音符を使ったベースラインによる、言葉とメロディーが際立つようなアレンジ。
7曲目「CAT WALK」では、橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。この曲では打ち込みも使用されており、イントロは心臓の鼓動を思わせる弾んだリズムで、バスドラのような低い打楽器の音が響く。しばらくすると、そのリズムに合わせて、橋本さんがコードを弾き始め、さらに歌も入る。アルバム「告白」に収録の音源では、歌い出しは「私がいなくなったとしても」だが、今回のアレンジでは、歌い出しが「あぁ 今日もこの目で 街を見られるよ」からになっている。福岡さんのシンセの音色は、ここまでの電子音然としたシンセらしい音色ではなく、ピアノの音が選択されている。途中、ピアノとは別の音色のシンセサイザーらしき音が鳴っているところもあったが、打ち込みなのか、福岡さんによる生演奏なのかは確認できなかった。「CAT WALK」後には、またMC。
福岡「次の曲は、5年前ぐらいに作って、ライブで1回やったっきり、ずっとやってなかったんですよ。そのとき、2ピースになって初めてのCOUNTDOWN JAPANで、やっただけなんですけど。この曲、えっちゃん、めっちゃ怒っとったよな?」
橋本「怒りが凄くて…あの、勢い任せに作った曲です。でも、5年経って、そういう謎の怒りも消え、新たにリアレンジしました!」
上記のエピソードを披露したあとに演奏された8曲目は「ほとんどチョコレート」。前述のとおり、2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、当時とはかなりアレンジが異なっている。
9曲目は「変身 (GLIDER MIX)」。この曲の前には、宇宙を感じさせるような音の、インタールード的なSEが足されている。アンビエント・ミュージックやエレクトロニカに近く、個人的にはBoards of Canadaを連想させる音作りだと感じた。この音源をバックに、福岡さんが少し話をする。
福岡「みなさんを今から、洗脳したいと思います…」
(オーディエンスから笑いが漏れる)
福岡「チャットモンチーは、何回変身してもいい! 人によっては、今5期とか言われてますけど、もう何期なのか自分たちではわかりません! だから、もう何回変身してもいいやろ。」
(オーディエンスから拍手)
福岡さんの話のあと、SEが流れ続けるなか、橋本さんがイントロのギターを弾き始める。この曲では橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんは、足でバスドラのペダルを踏みながら、シンセサイザーを弾いているようだ。10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」では、橋本さんは引き続きシンライン、福岡さんはドラムを担当。徐々にサウンドもアレンジも、ハードな方向にシフトしていく。
「消えない星」の演奏が終わると、橋本さんが「大丈夫ですか、みなさん、聴きたい曲、聴けてますか?」とオーディエンスに問いかける。オーディエンスからは拍手と歓声。福岡さんの「次の曲、聴きたいはず。私は個人的に聴きたい。」という言葉から、12曲目に披露されたのは「majority blues」。この曲も橋本さんがギター、福岡さんがドラム。2人体制になってから発売された曲のため、ほぼCD音源通りのアレンジによる演奏だ。「majority blues」には長めのMC。
福岡「今日のお客さんはめっちゃ真剣に聴いてくれますね。真剣タイプですよね。相談にのってくれそうなタイプ。相談していいですか? どうですか、チャットモンチーこのままで大丈夫でしょうか?笑」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「めちゃくちゃ悩んだんですよ、ここに来るまで。また、飽きてしまった、みたいな(笑) 10周年の時に6人になって、めっちゃいろいろやって、すごい達成感があって、このままではあかんのちゃうかなって感じになったんですよ。もっとやったことない事したいし、(サポートメンバーが)頼んだら何でもやってくれるから、甘えたらあかんってなって。」
橋本「それですごい悩んで、去年の春の終わりぐらいには、こんな感じでやっていこうっていうのを見つけて、っていう感じです。」
(打ち込みと生演奏の違い、打ち込みの難しさについて、色々と語ってくれてから)
福岡「えっちゃんもこの体制になって、ちょっとずつパソコンを覚えて…じゃあちょっとテストしようかな。command + Z(コマンドゼット)はなにか?」
橋本「…1個、戻る。」
福岡「正解!!」
(オーディエンスから「おおぉーー!」という声と拍手)
福岡「じゃあ、command + A(コマンドエー)はなにか?」
橋本「なんか…”あ”が付く?」
福岡「うん、”あ”が付くよ! あ、っていうか、A。コマンドAですよ!」
橋本「お、オール! オール!」
福岡「そうそう! オール、なに?」
橋本「全部! 全部まとめる!」
(オーディエンスから「ああぁーーー」という残念そうな声)
福岡「正解は、全部選択!」
福岡「4月に新曲が出ます。2人でやったんですけど、いまいちメカっぽくなくて、生演奏して録ったっていう(笑) この前、PV撮ったんですけど、ヤバい人に出てもらいました。まだ言えないんですけど。」
橋本「言いそうで怖い(笑)」
13曲目は、4月5日に発売される新曲「Magical Fiction」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。それ以外に、ギターとベースの生演奏をレコーディングした音源を同期しているようだ。
14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのように繋げて演奏。「こころとあたま」では、橋本さんが前曲から引き続きシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。「こころとあたま」の1回目のサビが終わった間奏で、橋本さんが楽器をシンセからシンラインに替え、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。曲の繋ぎの部分も含めて、非常に荒々しく、新しいことに挑戦しつつ、デビュー以来チャットモンチーが得意としている部分もしっかりと見せてくれた。
本編ラストの15曲目「満月に吠えろ」。この曲の前にも、インタールード的に軽やかにシャッフルしたドラムの音を流していた。担当楽器は変わらず、橋本さんがギター、福岡さんがドラム。流していたドラムの音が止まると、すぐに福岡さんがカウントを取り、曲がスタート。前日の新潟公演と同様、間奏とアウトロのギターソロは、途中から音源よりも旋律が上昇していく部分があり、今回のツアーを通してアレンジし直された部分のようだ。本編はこの曲で終了。
アンコールを受けて、手品のBGM風の音源が流れ始め、ステージ上に戻ってくるチャットモンチーの2人。2人ともシルクハットのような背の高い帽子と、真っ白い手袋を着用している。帽子から次々と今回のツアーグッズが出され、オーディエンスに向かって紹介していく。橋本さんの帽子からは、最後に白い鳩のぬいぐるみのような物が出てくる。
福岡「以上、無言の物販紹介でした。えっちゃん、めっちゃ入ってたな(笑)」
橋本「もう、ぎゅうぎゅうに押し込んで! 最後に鳩、出てきたやん? 鳩を最後に出さなあかんから、鳩こんな(ぎゅうぎゅうになっている仕草をしながら)、こんな、なってたやろな(笑)」
福岡「えっちゃんが、めっちゃプレスしてるの見てましたけど、あんなに入ってると思わんかった(笑)」
アンコールでは、前日と同じくGO!GO!7188のカバー「瑠璃色」と、「シャングリラ」を演奏して、この日のライブは終了となった。
最後にライブ全体の感想を一言。個人的に最も心に残ったのは、あっこびんが「個人的に聴きたい曲」と言って「majority blues」を演奏したところ。こういう一言に、あっこびんがどれほどチャットモンチーのことを好きか、大切に思っているか、が表れていますよね。えっちゃんが作詞作曲したこの曲を、自分がお客さんだったら聴きたい曲だって、自然に口から出てくるというのは、高校生の時にチャットモンチーのライブを見て受けた感動を、今でも忘れずに持ち続けているのだな、と思います。
チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月10日
金沢Eight Hall
セットリスト
01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ