チャットモンチー
2017年6月29日
帯広 MEGA STONE (メガストーン)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」
本来は、4月28日に開催予定だった今ツアーの帯広公演。橋本絵莉子さんの体調不良により延期となっていましたが、2ヶ月後の6月29日に実施の運びとなりました。まずは、橋本さんの体調と声が無事に回復したようで、本当に良かった。以下、ライブレポートです。
定刻を数分過ぎたところで客電が落ち、SEが流れ始める。電子音が飛び交う中を、ベースが休符を含んだフレーズでリズムを刻み、どことなくジャングルの中を連想させるようなSE。最後には、某PCの起動音がサンプリングされている。
オーディエンスからの歓声と手拍子の中、ステージ上にチャットモンチーの2人が登場。ギターでもベースでもドラムでもなく、2人とも向かい合うように設置されたローランド製のシンセサイザー(色が白なのでJUNO-DS61のWhiteだろうか)の前へ着席。オーディエンス側から見て、左側に福岡さん、右側に橋本さん。
1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込み特有の均一な音質のドラムから音楽がスタートする。2人もそれぞれシンセサイザーで、旋律的なフレーズと、伴奏的なコードを弾き始める。今までのチャットモンチーの音楽から比べると、異質と言える柔らかなシンセサイザー特有の音質だ。間奏では、橋本さんが思わず満面の笑顔で「ありがとう!」と言う場面もあった。
橋本「こんばんは、チャットモンチーです。約2ヶ月お待たせしました。来てくれてありがとう! この前の東京でも喉やっちゃったんですけど、治ってますんで安心してください!」
福岡「めっちゃあったかい。2ヶ月分の笑顔が見えます。今日はそんな皆さんの笑顔にも関わらず、1曲目からポカーンとさせてしまいましたけど(笑)、今回はメカットモンチーという体制で今までの曲をリアレンジしてやっていきますんで、ついてきてください!」
2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」でも、2人ともシンセサイザーを弾き続け、オリジナルバージョンから大胆にアレンジされた演奏を披露していく。「恋の煙」が終わると、打ち込みされたトロピカルなリズムパターンのドラムが流れ始め、そのリズムをバックに福岡さんが話し始める。
福岡「今から、いつもは今日誕生日の人?って聞くんですけど…今日誕生日の人? おらん? あ、おった! おめでとう! 2ヶ月前の公演のとき、誕生日だったっていう人? おらん!? その時、誕生日だったって人がいたら、おもろいかなと思ったんですけど。じゃあ、もう今日はみんな誕生日! 私も4月に1個、年とったんですよ。私、ウォーキングデッドがすごい好きなんですけど、その時は盛岡でウォーキングデッドのテーマ曲で誕生日を祝われるっていう。あとで調べてみてください、めっちゃ暗い曲なんで(笑) 今日は明るく皆さんをお祝いしたいと思います! 今日、誕生日の人は最もめでたい、めでたニストなので、サビのとこでその人に向かって拍手をしてください。」
演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。アルバム「YOU MORE」に収録されている音源では、イントロはギターとベースから始まるが、今回は2台のシンセサイザーに置き換えられている。2人がシンセサイザーでイントロを弾き始めるのだが、設定が切り替わってしまっていたのか、どちらかのシンセの音程がオクターブ高く、明らかにここまでのツアーの演奏とは違う音。そのまま進めようとするが、やはり数小節を弾いてから、橋本さんがメロディーっぽく「もう1回やっていい?」と言って、リスタート。オーディエンスは大歓声。打ち込みのリズムが流れ続けているので、ライブの流れが途切れることはなく、むしろここからシフトが一段上がったような印象だった。
橋本さんがシンセで電話の呼び出し音を鳴らし、福岡さんがそれを取る、という流れから、曲フリ用のMCが始まる。
福岡「もしもーし、イタ電かな? ちゃんとナンバーディスプレイに番号見せてください! 非通知はあきませんよ。」
橋本「…もしもし。」
福岡「あ、えっちゃんか。なんで携帯じゃなくて、家電(いえでん)にかけてくるんよ!?」
橋本「…家電の方が好きだから!」
福岡「ちゃんと理由あるんやな(笑)」
橋本「もしもし、今なにしてる?」
福岡「帯広で、300人ぐらいと豚丼食ってるよ。」
橋本「私は今、幸福駅ってところにいるんやけど。」
福岡「なんで、そんなとこにおるん?」
橋本「…幸福に、なれるから。そういうスポットだって聞いたから。すごいスポットなの。記念撮影すると幸福になれるんだって。」
福岡「どうだった? 幸福になった?」
橋本「………うん。」
福岡「めっちゃタメあったけど、ほんまかな(笑)?」
橋本「幸福になってる。もう写真撮ったから、あっこちゃんのとこ、行っていいかな?」
福岡「いいけど、えっちゃん豚丼食べれる?」
橋本「あの…ご飯だけでいいから。下のタレのついたご飯だけでいい。」
福岡「じゃあ食べにきい。」
橋本「じゃあ、あれで行くわ。広尾線で行くわ。」
(シンセから電車が走る音を流し、橋本さんが福岡さんの隣に移動)
橋本「広尾線ってもう無いんよ。」
福岡「えっちゃん、よく知ってるなぁ、帯広のこと。」
橋本「うん、20分前ぐらいに調べた。幸福駅、行ったことある人?」
(オーディエンスから、そこそこ手が上がる)
橋本「広尾線、乗ったことある人?」
(少ないが、手が上がる)
福岡「けっこう少ないんやね。」
橋本「1987年に廃止になったらしいですね。87年って、うちら4才やからな。」
福岡「えっちゃん、教科書みたいやな(笑)」
橋本「じゃあ、あっこちゃんのとこに来たっていうことで、今からやる曲は、徳島マラソンっていう地元徳島のマラソンがあって、それのテーマソングです。この曲を作った年に、あっこちゃんマラソンを完走しました!」
福岡「めっちゃ遅いけど、頑張って完走しました。絶対みんな完走できるから、ゆっくりだったら。あの「パーーンッ!」って鳴ったら、テンション高くなっちゃって、普段の倍ぐらいの速さで走っちゃう人が多いんよ。」
橋本「おるなぁ…私やわ。」
福岡「そういう人たちが20キロぐらいで小鹿みたいになってて、そういう人たちを尻目に、めっちゃ遅い私が抜いていくっていう(笑) 徳島マラソンをきっかけにマラソンを始めて、徳島マラソンのテーマソングを勝手に書いて、送りつけて、採用されたんです。」
橋本「地元の徳島だったら何でもできるんですよ。」
福岡「スーパーで私たちの声、流れてますからね。”今日はえっちゃん、ゾロ目市やなぁ””火曜日はポイント10倍やなぁ”とか(笑)」
橋本「そんなバンドマンいませんよ(笑) 地元でむちゃくちゃやるっていう。」
福岡「地元でフェスやった時にね、そのスーパーで宣伝してくれるって言ってくれて、スーパーの人は”期間中、店内でチャットモンチーの曲を流しましょうか?”って言ってくれたのに、私たちは”せっかくだから肉コーナーとかで叫んでるやつやりたい”って言って、今でも流れてるんで良かったら聞きに来てください!」
橋本「徳島のキョーエイってスーパーなんですけど。」
福岡「話、長くなってもうたな。」
橋本「じゃあ、今から”とまらん”って曲をやるんですが、あっこちゃんが鍵盤弾きながら、バスドラ踏みます。それで私がドラムの上物をやるっていうスタイルです。」
福岡「やってて楽しいって理由で、このスタイルになってます(笑) 覗いてみてくださいね、後ろの人。」
(最前列から3列目ぐらいまでのオーディエンスが、後ろの人が見えやすいようにかがむ)
福岡「バスドラに合わせて手拍子をしてもらえると、ものすごい助かります!」
上記の長めのMCの後に演奏された5曲目「とまらん」。1曲目から4曲目までは、ドラムは打ち込んだものを流しながら、それに同期するように2人がシンセサイザーを演奏していた。また、音色も、シンセサイザー然とした電子音だと一聴してわかるものだったが、「とまらん」では前述のとおりドラムは生演奏、福岡さんが弾く音色もアコーディオンのような味わいのある音を選択している。そのため、オーディエンスの手拍子も相まって、4曲目までと比べると、かなり耳障りの異なる演奏となっていた。演奏後には、また長めのMC。
福岡「ありがとう、止まらんかった。」
橋本「良かった。」
福岡「豚丼食べたし、えっちゃん家、行こうかな。」
橋本「どうやって行く?」
福岡「北海道やけん、これで行こう。」
(シンセから馬の走る音を流し、今度は橋本さんが元々いた位置に2人が移動)
福岡「帯広、空港着いて、この市内までめっちゃまっすぐでしたね。ビックリした! でも、すごいひとつ気になったのが、白線の上にある矢印、途中から白線じゃないとこ指してたんですけど。なんでなん、あれ?」
橋本「あの、雪で下が見えんくなった時に…」
福岡「うん、そうやと思ってたんやけど、最初白線の上を指してて、途中から段になってる方を指してて、気づいた人おる? 今度、帯広空港から市内来るとき、見てみてくださいね。」
橋本「そういう間違い探しするのが、あっこちゃんらしい。あっこちゃん、間違い探すの、すごい上手なんだよ! 凄いんだよ! CD作って、歌詞の間違いとか、いろいろチェックせなあかんけど、めっちゃ見つけるの、あっこちゃん! ほんと、あっこちゃんおらんかったら、めっちゃ間違ってると思う。私も見てるんやけどね。」
福岡「えっちゃん、気持ちは見てるけどな、たぶん目は見てない(笑)」
5曲目「いたちごっこ」、6曲目「染まるよ」の2曲は、打ち込みは使わず、アコースティックなアレンジで披露。「いたちごっこ」では、橋本さんがアコースティックギター、福岡さんがベース、「染まるよ」では橋本さんが変わらずアコースティックギター、福岡さんはステージ左側に戻りシンセサイザーを担当。「染まるよ」でのシンセサイザーの音色は、エレピや電子オルガンに近い音色で、アコースティックな雰囲気を増している。
7曲目は「変身」。橋本さんはシンラインを持ち、福岡さんはドラムセットへ。福岡さんが「それでは、ここからはメカットモンチーの盛り上がるバージョン、よろしくお願いします。」と言って演奏がスタート。オーディエンスもおおいに盛り上がる。ここから、9曲目「消えない星」、10曲目「majority blues」と、橋本さんがギター、福岡さんがドラム、それにプラスして必要に応じた打ち込み音源という体制が続く。11曲目には、橋本さんが今回のツアーから導入されたと思われる青っぽいテレキャスターデラックスに持ち替え、Perfumeの「TOKYO GIRL」のカバーを演奏。
福岡「今のはねぇ、PerfumeのTOKYO GIRLっていう曲をカバーしました。6月3日にPerfumeのフェスに出させてもらった時に、これカバーしたんですよ。Perfumeのフェスの次の日も仙台でやったんですよ、好評だったみたいだからっていって…でもすぐに飽きちゃって、また別の曲にしちゃって、飽き性やからね。でも、しばらく経ったから、北海道の人このフェス来てない人多いかなと思って、またやりました。」
橋本「もう私たちの飽き性は、皆さんに伝わってますよね。このツアーも3月から始まって、本来ならば今日はここにいなかったはずなんですけれども、いちゃってるわけですけれども、そしてみんなも来てくれたわけですが、もう4ヶ月、カバーをいろいろしてきて、わりとコロコロ変えてきたね。」
福岡「チャゲアスがめっちゃ好きで、ラジオでレギュラー番組やってるときに、ルーツをかけるコーナーがあったんですけど、チャゲアスだけは今はあかんって言われてしまって…」
橋本「時期が時期だけにな…」
福岡「それがたまってたんでしょうね。自分のライブだったらいいやろうってことで、チャゲアスの曲をやったり。それを急に思い立っちゃって、その場で練習してやるっていう暴挙に出たりとか。さっきの”とまらん”も、急にやったからね。」
橋本「急にやった! 急にやり始めたから、ああいうスタイルになったんですよ。急にやんないとできないからね。考えすぎたらできへんってこともあるやん。」
福岡「4月のツアーの時は、ちょっと説明した方がいいんちゃうかってことで、システムがどうなってるのかっていうのを、説明してたんですよ。それも途中で飽きちゃって、やめたんですよ(笑) でも、4月来る予定だったから、説明聞きたいですか?」
(オーディエンスから複数の「聞きたーい!」の声)
福岡「じゃあ、えっちゃんから…」
橋本「おぉ!…すんげえ、ぼーっとしてたわ。あのね、パソコンが今2台あるんですよ。主に私たちが出してる以外の音は、あっこちゃんがパソコンから出してます。パソコンって、マウスなり、なんなりで、手でやるじゃない? でも、両手ふさがってるでしょ、ピアノ弾いたり、ドラム叩いたり、だから足で、曲ごとに踏みかえて、もうそれは…もうそれは、ベース弾いてるとき培ってきた、エフェクターの切り替えの足の技術によって、なされてます。」
福岡「聴いてもらったらわかると思うんですけど、パソコン使ってるわりには、アナログな音してるでしょ? そうしたいなあって思いが、音にもなってるんですけど。えっちゃんがね、楽器の音の名前を言わずに、”あのネズミみたいな音”とか、言うんですよ。ネズミの音ってどれやろって思うけど、共通認識としてネズミの音は把握しとかなきゃいけないでしょ。ネズミの音はいいよ、とりあえず、今度は”大ネズミの音”とか言い出すんですよ(笑)」
橋本「言ってたね。あっこちゃん”ああ、大ネズミの音な”って。(わかってくれて)優しいなぁと思ってました。」
12曲目は「Magical Fiction」。この曲から、橋本さんがギターから再びシンセサイザーへ。13曲目「こころとあたま」と「湯気」は、今ツアーではメドレーのようにシームレスに演奏されており、「こころとあたま」の1回目のサビが終わると、橋本さんがシンセサイザーからギターへ楽器を替え、「湯気」のイントロを弾き始める。「湯気」の終盤では、福岡さんのモニター用のヘッドホンが途中で脱落してしまい、スタッフが慌てて元の位置に戻し来るが、一時的にドラムが止まりかけてギターのフィードバックのみになる。ここでも演奏は止めずに、むしろトラブルを楽しむように演奏を続け、オーディエンスからは自然と手拍子が起き完走。
聴き慣れたバスドラのリズムが流れ始め、福岡さんが「最後はやっぱ、この曲だよね! 最後はベース弾きます!」と言って、15曲目「シャングリラ」がスタート。しかし、ベースが入ってくるタイミングで弾き始めるも、ベースの音が出ない。また、どこかのタイミングで指から出血してしまったようで、何度も指を気にしていた。一旦、打ち込みのドラムを止め、機材をチェックする。この間、橋本さんがギターで「恋愛スピリッツ」のコードを弾いているようだった。福岡さんが「2ヶ月待たせた上に、最後の曲もお待たせしました!」と言って、今度は無事にベースの音も出て、シャングリラを演奏。何度かの機材トラブルがあったが、演奏は全体として疾走感があり、非常に熱く、またオーディエンスの雰囲気もあたたかく、2ヶ月分の想いが形になったようなライブだった。
アンコールでは、日本の祭りを思わせるような、アクセントが前に置かれたドラムのリズムが流れ、今回のツアー後半から発売されたロングTシャツに着替えたチャットモンチーの2人が再びステージへ。アンコール1曲目に演奏されたのは、スチャダラパーとのコラボ楽曲「M4EVER」。オーディエンスとコールアンドレスポンスをしてから、演奏を始める。元々の音源では、橋本さんと、スチャダラパーのANIさん、BOSEさんが交互にラップをしていくが、今ツアーではスチャダラパーのラップパートは福岡さんが担当している。ドラムは打ち込み、橋本さんがラップの時は、福岡さんは小型シンセを手に持ってベースラインを弾き、逆に福岡さんのラップパートでは、マイクとシンセを交換し、橋本さんがシンセを担当。使用されているシンセサイザーは、KORG製のアナログシンセサイザーあるいはアナログモデリングシンセサイザーのようだった。マイクとシンセを交換するとき、福岡さんと橋本さんの手とコードが絡まる、というかコードがシンセを持つ腕の中に入ってしまって2人が離れられなくなる、という場面もあったが、一度手を外して、うまく交換完了。このときの2人のアイコンタクトも、絆の深さを感じさせた。また、曲中には福岡さんがフロアに降りてラップをするサプライズもあった。今回のツアーで、メンバーがフロアに降りてきたのは帯広公演のみ。
アンコール2曲目に「満月に吠えろ」を披露して、この日のライブは終了。ここまでは、自分自身の備忘録を兼ねて、客観的な事実の記述を心掛けてきましたが、最後にライブの感想を書かせていただきます。ライブ中に、メンバーが何回も「帯広の人はあったかいなぁ」「優しいなぁ」という場面がありましたが、それは遠征での参加だった僕も感じたことで、「とまらん」で後ろの人が見えやすいように前列の人が屈んだり、「湯気」で演奏が止まりかけたときに自然発生的に拍手が起こったりと、非常に雰囲気が良く、またメンバーもその空気に押されて、演奏が加速していったように感じました。何回か機材トラブルもあったライブでしたが、そのたびに流れが停滞するどころか、むしろシフトが上がっていくようで、バンドのテンションと、それを迎えるオーディエンスの期待と優しさがぴったり合った、素晴らしいライブでした。
チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年6月29日
帯広 MEGA STONE
セットリスト
01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. とまらん
06. いたちごっこ
07. 染まるよ
08. 変身 (GLIDER MIX)
09. 消えない星
10. majority blues
11. TOKYO GIRL (Perfumeカバー)
12. Magical Fiction
13. こころとあたま~湯気
14. 風吹けば恋
15. シャングリラ
アンコール
EN1. M4EVER
EN2. 満月に吠えろ