チャットモンチー 2017年4月15日 青森Quarter

チャットモンチー
2017年4月15日
青森Quarter
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 定刻になると客電が落ち、今ツアー共通のSEが流れる。ベースラインがリズムを刻むなか、様々な効果音が飛び交うこの曲。SEが終盤に差し掛かると、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、2台のシンセサイザーが向かい合うように設置されており、オーディエンス側から見て右側に橋本さん、左側に福岡さんが座る。オーディエンスからは、盛大な拍手と歓声。

 モニター用のヘッドホンも装着し、1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込み然とした均質な音のドラムの上に、2人がシンセサイザーでコードやベースラインを弾いていく。アルバム『YOU MORE』収録の音源とは、明らかに耳触りが異なるサウンドとアレンジで、オーディエンスからは戸惑いも感じられる。しかし、1曲が終わる頃には、みんな曲に合わせて緩やかに揺れていた。演奏が終わると、大きな拍手。

 橋本さんが「皆さん、こんばんはチャットモンチーです! 青森に来たのは…たぶん4年ぶり!…ぐらいです!」、福岡さんが「4年前も2人だったと思うんですけど、またこんなにも変わってしまいました(笑) でも、見捨てずに来てくれてありがとうございます。」と挨拶。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源とは異なるシンセサイザーの電子音感が目立つアレンジ。特に「恋の煙」は、イントロの歪んだギターがシンセサイザーに置き換えられ、サウンドの違いが際立っていた。打ち込みによるドラムのビートも、打ち込み感を強調するような均質なもの。

 3曲目「恋の煙」が終わると、打ち込みによるドラムが流れ始める。そのドラムをバックに、2人が話を始める。

福岡「いきなりですが、今日誕生日って人いますか?」
(オーディエンス数人から手が上がる)
福岡「おー、めっちゃおる! ちなみにアラウンド3日以内って人はいますか?」
(また、数人から手が上がる)
橋本「あっこちゃんもやん!」
福岡「そう、私も! 私と同じ誕生日の人おる? おらんか。今から「バースデーケーキの上を歩いて帰った」という曲をやるので、サビのところで誕生日の人に向かって、うわーって拍手してあげてください!」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。この曲もドラムは打ち込み、2人がそれぞれシンセサイザーを弾くのだが、それまでの3曲に比べれと、ドラムのリズムが軽やかで、バンド感を感じさせるアレンジ。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後にはMC。

橋本 (シンセサイザーで電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「ガチャ! もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?」
福岡「なんなん? 携帯じゃなくて、自宅の電話にしてきて。」
橋本「今なにしてる?」
福岡「今、青森でね、300人と一緒にホタテ食べてるわ。」
(オーディエンス爆笑)
橋本「マジで? 300個もホタテ?」
福岡「うん、余裕余裕。ホタテが売るほどあるけん、青森は! ほたてソフトクリームまである! えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ワ・ラッセにいるんだけど。食べ放題で、めっちゃチラシ寿司食べてるんやけど。食べ終わったんで、あっこちゃん家にいってもいいかな?」
福岡「いいよ、青森の私の別荘ね。ペンソンにね(笑)」
橋本「じゃあ、青い森鉄道に乗っていくわ。」
(シンセサイザーで電車が走る音を鳴らし、橋本さんが福岡さんの隣へ移動)
福岡「じゃあ、うちに来たからには、ラップやってってもらうから。」

 チャットモンチーでラップが入る曲といえば「ぜんぶカン」。この曲では、福岡さんがドラム、橋本さんがシンセサイザーを担当。橋本さんが弾くシンセサイザーは、一音を弾くと、その音からフレーズが続くように設定されているようだ。まず橋本さんがシンセサイザーを弾くが、弾く音を間違ったのか、不安定なフレーズが演奏される。

橋本「ちょっと待って!」
福岡「ヤバい(笑) なに今の不穏な音?」
橋本「ごめん、もう1回いきます!」

 あらためて5曲目「ぜんぶカン」がスタート。ベースの音も聞こえたので、ベースは打ち込んだものを再生させているようだ。ドラムが生演奏に切り替わったため、ここまでのメカットモンチー体制のアレンジに比べると、生バンド感が増している。「ぜんぶカン」の後には、またMC。

橋本 (福岡さん側から、元々いたステージ右側へ戻る)
福岡 (シンセサイザーで雨が降る音を鳴らす)
橋本「雨?」
福岡 (カミナリの音を鳴らす)
橋本「カミナリやん。」
福岡 (吹雪の音を鳴らす)
橋本「どこ? 急に荒れたん、天気が?」
福岡 (鳥のさえずりの音を出す)
橋本「晴れたん? 森? やっぱり青い森?」
福岡 (馬が走る音を出す)
橋本「馬? なんのヒントもなかったけど、来るんやな私の家に。」
福岡「馬に乗って行こうと思ったんやけど、馬の距離じゃなかったみたい、えっちゃん家。」
(シンセサイザーでヘリのプロペラ音を鳴らし、福岡さんが橋本さんの隣へ移動)
橋本「ヘリや。」
福岡「えっちゃん家は、白を基調としてるんやね。」
橋本「そうなの、でも床だけ黄色いの。たまごを意識してるの。目玉焼き。」
福岡「なるほどね(笑) いっつもここそうなんですけど、面白いこと言うたらいかんコーナーなんですよ。これからいい曲やろうとしてるのに。そういう歌か。」
橋本「そういう歌。」
福岡「余談という曲をやりたいと思います。」

 6曲目は「余談」。橋本さんはアコースティック・ギター、福岡さんはベースを担当。この曲は打ち込み音源も使用していないようで、ここまでのライブとは一変して、アコースティックでしっとりと聴かせるアレンジ。

 福岡さんが、橋本さんの隣から元の位置に戻り、7曲目は「CAT WALK」。橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。心臓の鼓動を思わせるような深くエコーのかかったバスドラのような音も鳴っていた。この音は、打ち込みのようだ。橋本さんは弾き語りのようにゆったりしたコード・ストローク、福岡さんはシンセサイザーでピアノの音色を使い、隙間を埋めるように音を紡いでいく。

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。橋本さんはギターをアコースティックからエレキに持ち替え、福岡さんは引き続きシンセサイザーを担当。ドラムは打ち込んだものを同期しているようだ。「ほとんどチョコレート」の後にはMCで、今回の機材の説明。

福岡「(プライバシー保護のようなエフェクトのかかった声で)ハロー!」
(オーディエンスの一部から「ハロー」という返事)
福岡「マジか、ありがとう! ハローで返してくれるなんて。今、声が変でしょ? メカになってから導入したんですけど、別に犯罪者なわけじゃないです(笑) 今回のメカットモンチーは、メカの力を最大限に駆使してやっておりまして、パソコン君しかり、メカはもうメンバーみたいなものなんです。」
橋本「…はい。」
福岡「ここに理解者が1人いました(笑) そうなんよ。見てるだけじゃいまいちわからんという方のために、いつも説明しようとするんですが、説明の仕方が難しいんですけど(笑) さっきの声が変わるやつは、私とえっちゃんの音を感知して、勝手にハモってくれる機械なんですよ! 皆さんもお金払えば明日からハモってもらえますよ(笑) 文明はお金で買えるんです! あと、曲の合間の音とか、オープニングの音はえっちゃんが作ったんですよ。」
(オーディエンスから「へぇー」という感嘆の声)
福岡「すごいでしょ?」
(オーディエンスから「すごーい!」の声)
橋本「違うんよ、今のなんて氷山の一角。一角以外の部分は、全部あっこちゃんが担って、パソコン使いの女王となって、ここに君臨しています!」
福岡「そうなんや、わたし女王なんや(笑)」
橋本「うん、すごい操ってる!」
福岡「えっちゃんも私も足元で操ってて、なるべく心まではメカにならないようにと(笑) だから、わりとフィジカルですよね。」
橋本「4年前に2ピースで来たときの考え方とはガラリと変わって、当時はもうクリックすら嫌ってて、アイツに支配されたくないっていうぐらい、電子的なものがイヤだった時期で。」
福岡「クリックの野郎!みたいな(笑)」
橋本「そう、絶対合わせません!みたいな感じで、もうズレて行こう!みたいな感じで、やってたんですけど、4年も経つと、もう頼って頼って(笑) 変わるもんですねぇ。」
福岡「でも、チャットがメカをやるのはこういうことになるんだっていう、なるべくメカだけど肉体的になりたいから、足でリズムを切り替えてたんですよ、最初の2回ぐらい。あんまりそういうことするから、パソコン止まったりして。やっぱりメンバー同士の争いはありますよね(笑)」
橋本「もう、出世魚みたいな感じですよね。」
福岡「今どのへんなんやろ? 出世魚でいうと(笑) もう一番デカいかなぁ?」
橋本「鮭?」
福岡「戻り鮭かなぁ? もう、みんなついてきてないよ(笑) じゃあ、えっちゃんが作った音を聴いてもらおうかな。」

 9曲目は「変身」。福岡さんの言葉どおり、まず橋本さんが作ったという、宇宙空間を漂うようなスペーシーなSEが流れ始める。この曲では橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラム。それ以外にもベースや効果音も聞こえるが、これらは全て打ち込んだものを同期させているようだ。オリジナル・バージョンではなく、group_inouによるGLIDER MIXに準拠したアレンジでの演奏だが、ライブ序盤の楽曲に比べると、生バンド感はますます増してきていた。

 10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」も、引き続き橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはドラムを担当。この2曲は変身TOUR期に近いアレンジとサウンドで、これまでのチャットモンチーが得意としていたグルーブ感があふれていた。

 橋本さんの「東京と徳島のことを思って書いた曲です」という紹介から、12曲目は「majority blues」。現状の2ピースになってからの楽曲なので、ほぼ音源どおりのアレンジ。

 出たばかりの新曲ということで、収録曲とPVの紹介をしてから、13曲目に披露されたのは「Magical Fiction」。橋本さんはシンセサイザー、福岡さんはドラムを担当。この曲も現状の2ピース体制になってからの楽曲なので、音源どおりのアレンジでの演奏。ベースは打ち込みのようだ。

 14曲目は「こころとあたま」から「湯気」のメドレー。担当楽器は引き続き、橋本さんがシンセ、福岡さんがドラム。ギターレスの編成だが「こころとあたま」のイントロでは、橋本さんがラフなリズムで、フランジャーのかかったような音色でシンセを引き、バンド感は強い。

 「こころとあたま」のサビ後の間奏部分で、橋本さんがシンセからエレキ・ギターへ。福岡さんがドラムを叩き続けるなか、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。非常に荒々しく、今までのチャットモンチーらしい音とグルーヴ感のある演奏だった。

 本編ラスト15曲目は「満月に吠えろ」。音源に近いアレンジだが、イントロ部分のギターが、音源だとドラムのカウントのあと最初の8小節はコード弾きのみ、その後8小節にギター・ソロが入ってくるが、今回のツアーでは最初からギター・ソロが入ってくる。また、橋本さんのギターと福岡さんのドラム以外にも、いくつかの電子音が打ち込みで同期されているようだ。

 アンコールでは、まず手品風のBGMが流れ始め、しばらくするとチャットモンチーの2人がステージへ。背の高い帽子と、白い手袋を着用しており、マジシャンに扮しているということのようだ。帽子の中から2人が次々に今回のツアーグッズを出していく。

福岡「なんやねんって感じでしょ(笑) これが私たちが編み出した、喋らない物販紹介です。まぁ、アンコールなんでね、おまけー!みたいな。」
橋本「今回のツアーでは、アンコールの1曲目はカバーしようって決めてて、この4月クール、新しい曲を用意…し始めています! 今の語尾の意味は?」
福岡「あのな、練習したんですよ新しい曲を。そしたら、なかなかの低い完成度で(笑) でも、どうしてもやりたいんですよ。これから徐々にうまくなっていくと思うんですけど…とりあえず聴く?笑」
(オーディエンスからは拍手と歓声)
橋本「ごめんな。先に謝っとこうか。」
福岡「先にめっちゃ謝っとく!」
橋本「でも、どうしてもやりたくって、今日もギリギリまで練習してたんですけど、やっぱり100%までいってない状態なんやけど、どうしてもやりたいから、やらせてください!」
(オーディエンスからは大きな拍手)
福岡「(シンセを弾きながら)ほんま自信ないけん、間違えたらやり直させてな。」
橋本「あっこちゃんが愛してやまない人のカバー。」
福岡「えっちゃんが一緒にやってくれるって言うから。世代的に知らん人おるかもしれんけど、手拍子してのってればいけると思います。」
橋本「じゃあ、エリandアキで、CHAGE and ASKAのモーニングムーンやります。」

 アンコール1曲目はCHAGE and ASKA(チャゲ・アンド・アスカ)のカバーで「モーニングムーン」。福岡さんがピアノの音色に設定されたシンセサイザー、橋本さんがボーカルとシェイカーとタンバリンを担当。この曲では、打ち込みは使用していない。

 橋本さんの「いっせーのーで」という声から曲がスタート。ピアノは難易度が高いらしく、1回目はイントロ部分で福岡さんが「ごめん、もう1回やらして!」と言って、仕切り直し。少しテンポを落としてから、今度は「ワン、ツー、さん、はい!」という声からスタート。福岡さんのピアノと橋本さんのボーカルとパーカッションのみの編成だが、2人の間でしっかりとグルーブ感が生まれていて、やっぱりチャットモンチーはバンドだなと感じる演奏。

福岡「もう、2点! 2点のできやったけど、無事完奏できました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「チャゲアス大好きなんですよ、私。もちろん飛鳥も大好きで…」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうだよ、チャゲだけ好きなんてな。両方でCHAGE and ASKAやから。」
福岡「そう、両方好きで、ラジオでかけたかったけど、かけたらあかんって言われて(笑) 今、ちょっと世の中的にあかんって言われたから、ツアーでやりました。」
(オーディエンスから大きな拍手)
橋本「よかったな。」
福岡「ちょっと、えっちゃんに飛鳥を見たよ。一瞬しか見れんかったけど、飛鳥や!って。」
橋本「ほんま? ありがとう!」
福岡「こちらこそ、ありがとう!笑」

 アンコール2曲目は「シャングリラ」。橋本さんがギター、福岡さんがベース、それ以外のドラムと電子音は打ち込み。まず、聞き慣れたバスドラのリズムが流れ始める。福岡さんが「最後はこの曲で盛り上がっていただきたいと思います!」と言ってから、スネアが入り、橋本さんはスライド・ギターを思わせるようなフレーズを弾き始める。

 ところどころアレンジは変わっているが、ドラムのリズムやベースラインなど基本的な構成は音源どおり。オーディエンスも非常に盛り上がり、この日のライブは終了!

 月が変わって、4月1本目のライブ。アンコールでのカバー曲にもあらわれていますが、今回のツアーは試行錯誤の過程も見せてくれているようで、メンバーのMCも今までになくリラックスしているように感じます。「試行錯誤」と書きましたが、決してライブのクオリティが低いということではありませんよ。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年4月15日
青森クォーター (Quarter)
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. モーニングムーン (チャゲ&飛鳥カバー)
EN2. シャングリラ




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