チャットモンチー 2017年3月17日 長崎DRUM Be-7

チャットモンチー
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 ツアー2本目の金沢公演からちょうど1週間後、今ツアー3本目の長崎公演。今ツアー共通のオープニング用のSEから、ライブが始まる。チャットモンチーの2人は、ギターとベースではなく、2人ともステージ上に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーの前にそれぞれ着席。オーディエンス側から見て、橋本さんが右側、福岡さんが左側に座る。

 1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源では、ギターもベースも歪んだハードな音色だが、今回のツアーではそれぞれシンセサイザーに置き換えられている。歌い出しから、先の2公演よりも橋本さんのボーカルに少しディレイかリバーブのようなエフェクトがかかっているように聞こえたが、これは会場の音響のせいかもしれない。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源化されているアレンジとは違い、ドラムは打ち込み、ギターとベースはそれぞれシンセサイザーに置き換えられ、耳触りがだいぶ異なっている。ここまでの3曲とも、シンセサイザー特有の柔らかく広がりのある音色を選択しているため、原曲との差が際立つ。オーディエンスにも、やや困惑した空気が感じられる。3曲目「恋の煙」後には、少し長めのMC。

橋本「なんと、チャットモンチーが長崎でライブするの…6、7年ぶり!」
福岡「ちなみに7年ぶりです、って人いますか?」
(オーディエンスから手が上がる)
橋本・福岡「おおおぉぉーーーーー!!!」
福岡「じゃあ、お互い7歳、年とったんですね。」
橋本・福岡「キャーーーーー!!!」
橋本「すごーい、7歳ってすごいよ!」
福岡「13歳が20歳になってますから。」
橋本「ほんまや、すごい思春期やな。」
福岡「思春期よ、ドンズバよ。」
橋本「13歳から20歳って、一番ヤバイな。」
福岡「えっ、その話、広げる?(笑) じゃあ、7年分の誕生日を祝えなかったというわけで、今から誕生日の曲やるんで、7年分の思いをサビのところで拍手してください。」

 以上のMCから4曲目に演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。打ち込みによるトロピカルな印象のドラムが流れ始め、この曲でもチャットモンチーの2人は元々はギターとベースで演奏されていた部分を、シンセサイザーで演奏。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」後には、またMC。

橋本(シンセで嵐のような風の音を鳴らす)
福岡「こんな風、強かったっけ? えっちゃん、風を操ってます?笑」
橋本(雨と雷の音を鳴らす)
福岡「えっ、嵐!? さっき、眼鏡橋行ったとき晴れてたよ。」
橋本(電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「もしもし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?今、なにしてる?」
福岡「長崎のDRUM Be-7ってところで、500人といろいろ悪いことしてます(笑)」
橋本「私はめっちゃ風が強いグラバー園にいるんやけど…」
福岡「えっ、そんな局地的にグラバー園、風吹いてんの?」
橋本「局地的な強風らしくて、すごい風なんで、そっち行ってもいいかな?」
福岡「どうぞどうぞ!」
橋本(シンセで車のエンジン音と急ブレーキの音を鳴らし、福岡さんの隣へ移動)
福岡「ごつい車で来たな(笑) ハマーや、ハマーで来たな! グラバー園、楽しかった?」
橋本「楽しかった。1人で弾き語りしてたんや。」
福岡「それ、誰にも気づかれんやつでしょ(笑) 昔、サラリーマン1人に向かってサムライソウル歌ったっていう。」
橋本「それも最後までは聴かれんかった(笑)」

 橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラム。「ぜんぶカン」の後には長めのMC。福岡さんが「今度はそっち行きます」と言って、今度は2人とも橋本さんが元々いたステージの右側へ移動。

福岡「昨日、中華街に行ったんよ。お腹すき過ぎて、どこ入る?って感じになって、いろんな看板見て、いっぱい並んでるお店ありますよね? 並んではいないけど、お客さんいっぱい入ってるところに決めて、めっちゃお腹いっぱいになって、出てきたら、行きにも絶対通ったはずなのに、帰りにいきなり現れた謎の甲羅屋さんがあったの! 甲羅って、べっこうのこと。で、そこに”最大運”って書いてあったんよ。最大運が手に入る、しかも半額で! 2000円の最大運が、1000円になってたの(笑) これにしようと思って、パッと横見たら3000円の絶大運が1500円になってたの(笑) 3000円の絶大運が1500円やって!って、えっちゃん見たら、今つけてるバレッタ2000円で買ってました! えっちゃんが一番、運すごいやつや。」
橋本「べっこうって凄い運がいいって、日本一を謳ってるお店だったの。(オーディエンスに問いかける感じで)知ってる? 知ってる人もいる…」
福岡「見えないんじゃない普通の人には(笑) だって行きは全然気づかんかったよな?」
橋本「看板が反対向いとったんちゃう?」
福岡「それはえっちゃん独特の発想やわ(笑) 多分、お腹が空きすぎて、食べ物の看板しか見てなかったってことに落ち着いたよな。なんでバレッタ買おうと思ったの?」
橋本「なんか最近、バレッタがアツいんかなと思って…」
(オーディエンスと福岡さん爆笑)
福岡「なに情報!?笑」
橋本「なんも情報得てないけど(笑) なんか、そういうのが降りてきて…」
福岡「どうですか今日、上がってる?」
橋本「めっちゃ上がってるよ! めっちゃ、バレッタ来てると思う。」
福岡「やっぱバレッタ来てるんやな(笑) じゃあ、そういうタイトルの曲やりますか。」
橋本「あっ、そうですね、そういうなんでもない話を書いた”余談”って曲を聴いてください。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当。「CAT WALK」では、橋本さんは変わらずアコースティック・ギター、福岡さんは元々いたステージ左側に戻ってシンセサイザーを担当。リズムは打ち込みの音源を使用しているが、生演奏らしいドラムの音ではなく、深くリバーブのかかった鼓動のような音だ。「CAT WALK」後のMC。

福岡「いつも余談って曲の前は、しっとりした感じで行こうって話してるのに、面白い感じになってしまうな。”グッとくる曲やるんで、聴いてください”とか言ってみたいけどな(笑) “次のナンバー聴いてください!”とかやりたいけど。」
橋本「ナンバーって言う?(笑) ラジオだったら、お気に入りのナンバーとか言うけどな。」
福岡「じゃあ、最初から声、入れとく!? クリス・ペプラーさんとか小籔さんに入れてもらう?」
橋本「でも、それも照れ隠しやもん。」
福岡「そうか。なんか照れることできないんですよね。」

福岡「次の曲は、5年前にライブで1回だけやった曲で、そのライブだけで終わらせるつもりだったんですけど、うちのディレクターのきくりんが覚えてくれていて、ぜひ音源化したいと言ってくれて、今回リアレンジしました。」
橋本「…ナンバーって言わないよ。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「じゃあ、そのナンバーを…」
橋本「言うんかい(笑)」
福岡「それでは、”ほとんどチョコレート”という曲を聴いてください。」

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。この曲では、橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんがシンセサイザー。前述のとおり、この曲は2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、アレンジが大幅に異なっている。当時も2人体制だったが、今ツアーとは違いPCとシンセサイザーによる打ち込みや同期を導入していなかったため、ギターとドラムによるソリッドな演奏だった。そして、僕の記憶が確かならば、イントロと間奏では橋本さんがハーモニカを吹いていたはず。

 9曲目「変身」、10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」と続く。この3曲では、橋本さんは引き続きエレキ・ギター、福岡さんは「変身」では足でバスドラを踏みつつシンセサイザー、「8cmのピンヒール」と「消えない星」ではシンセサイザーを担当している。序盤のシンセサイザー2台体制のアレンジから、ギターが入ることで、徐々に以前のチャットモンチーに近い音になってくる。「消えない星」後のMC。

橋本「なんかすごい、満遍なく顔が見えます。なんていうのか、盛大に微笑んでくれると、こっちもニコニコしてしまって…本当にありがとうございます。」
福岡「確かに笑顔率が高い。ライブしながら、嬉しくなっちゃった。」
橋本「笑顔率すごいよな! すごいニコニコしてくれてて。」

 上記のような内容のこと(僕の記憶によるものなので、細かい言い回しなどは実際と違う部分もあろうかと思います)を話していたが、確かにこの日のオーディエンスからは、序盤は困惑が感じられる雰囲気だったが、途中から「音楽って楽しい」「チャットモンチーって楽しい」という空気が溢れ出ていた。

 12曲目は「majority blues」。現在の2人体制になってからリリースされた曲なので、音源化されているアレンジとほぼ変わらない演奏。橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはシンセサイザー、それに加えてベースなどがPCで同期されているようだ。「majority blues」後にもMC。

橋本「今回はセットがすごいの。タイトルが、チャットモンチーの秘密基地ツアー2017だから…」
福岡「なんか抜けてない?笑」
橋本「あっ、”機械仕掛け”が抜けてる(笑) 機械仕掛けの秘密基地ツアーだから、秘密基地感を出したいっていう2人の要望に応えてくれて。」
福岡「今、マイクの位置を直してくれたハギさんがこのセットを作ってくれました。」
(オーディエンスから拍手)
福岡「いつもは優しいけど、怒ったらめっちゃ恐いよ! 怒ったら、どちゃくそ恐いですよ。どちゃくそって意味わかります? 私もよく分からないんですけど、”すごい”っていう感じの意味だって徳島で聞いたんで、みんな使ってくださいね。どちゃくそええライブだったって、呟いてください。なんかモッシュとか起こってそう、どちゃくそなライブって(笑)」
橋本「確かに(笑)」
福岡「(ステージ中央後ろの「CM」という電飾を指しながら)この電飾もハギさんが作ってくれたんですよ。」
(オーディエンスから拍手と「へぇーー」という声)
橋本「(2人の頭上あたりにそれぞれ上から垂れ下がる大きめの電球を指しながら)あと、このイカ釣りの電球も。」
福岡「そう、イカ釣り漁船の電球らしいよ。」
(オーディエンスから再び拍手と「へぇーー」という声)

 13曲目は「Magical Fiction」。橋本さんはこの曲ではシンセサイザー、福岡さんはドラム。ベースは、おそらくPCを使っての同期。14曲目は、「こころとあたま」と「湯気」をメドレーのように繋げて演奏。橋本さんは「こころとあたま」ではシンセサイザー、「湯気」から黒のシンラインに楽器を替える。橋本さんがギターを持ってからの「湯気」は、今までのチャットモンチーが得意としていた無駄を削ぎ落としたハードでソリッドな演奏で、非常に盛り上がった。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。アルバム「変身」に収録の音源に近いアレンジだが、ベースを同期で流したり、イントロのギターソロを2回繰り返すなど、いくつか変更が加えられている。

 本編終了後、オーディエンスから沸き起こるのはアンコールではなく、「もってこーい」コール。以前、チャットモンチーが長崎市民会館でライブをしたときも同様のコールだったが、長崎特有のコールらしい。こういった各地の文化に触れられるのも、遠征および地方公演の楽しみだ。

 アンコールでは、手品風のBGMに乗せて、帽子と白い手袋を着用したチャットモンチーの2人がステージへ。それぞれ帽子から、手品をやっている風に、次々と今回のツアーグッズを出していく。

橋本「皆さん、もってこいコールありがとうございます。」
福岡「めっちゃ地元ならではのコールしてもらってるのに、こんなエセ手品を見せていいのか、ちょっとためらいました(笑) 言葉を発さずに物販の紹介する方法を考えたらこうなりました。」

橋本「アンコールでは、カバーを1曲やりたいと思います。九州出身のアーティストの方っていろいろいると思うんですけど、GO!GO!7188さんの曲をやります。」
福岡「私とえっちゃんが18ぐらいからバンドやり始めて、19の夏に四国のMONSTER baSHっていうフェスに一緒に行ったんですよ。当時もドラムが抜けて、2人だったんですよ。ドラムが決まらなくて、ドラム貧乏だったんです。そんな時に、GO!GO!7188さんを見て、めちゃくちゃカッコよくて、”なんでこんなに私たちはうまくいかないんだろう”って2人で泣きました。オーディション受けても”お前らみたいなのは、ごまんとおる”って言われて、当時は意味を取り違えて”ああ、5万もおるんや”って思ってたんですけど(笑) そんなGO!GO!先輩の曲を九州でやる日が来るなんて!」

 アンコール1曲目は、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。福岡さんがシンセサイザー、橋本さんがエレキ・ギター、ドラムは打ち込みのようだ。福岡さんのシンセはピアノの音色に設定されている。GO!GO!7188のオリジナルの音源では、サビからテンポが速くなるが、今回のチャットモンチーのアレンジは、イントロのミドルテンポのまま最後まで進行していく。

 アンコール2曲目、この日のラストは「シャングリラ」。橋本さんはサンバーストのテレキャス、福岡さんはベース、ドラムは打ち込んだ音源を同期している。耳慣れたバスドラのリズムが流れ始め、オーディエンスから歓声と手拍子が起こる。ベースが入るまでのイントロ部分で、福岡さんが「今日はほんまにありがとうございました。皆さんの笑顔で、明日からも頑張れそうです。みんなもまた会う日まで元気でな、ありがとう!」と挨拶してから、ベースを弾き始める。ドラムは打ち込みで、CD音源には入っていない音も足されているものの、各楽器とも基本的には音源に忠実なアレンジ。暖かい雰囲気のまま、ライブは終わった。

 MCでチャットモンチーの2人も言っていたとおり、笑顔に溢れ、非常に暖かい雰囲気のライブでした。どこまでニュアンスが伝わるか分かりませんが、シャングリラのイントロでの福岡さんの言葉からも誠実さがにじんでいて、グッときました。チャットモンチーが長崎でライブをやるのは、2011年のYOU MORE 前線以来6年ぶりのようですが、6年前にライブに来ていた人が、変わらずにチャットモンチーが好きで6年後に6年ぶりにライブに来るというのは、シンプルだけど感動的な状況だなと思います。僕は好きなバンドやグループのためなら、積極的に遠征もしますが、ライブに行った回数が多いからライブに1回しか行ったことがない人よりそのバンドが好きか、というと必ずしもそうではありません。6年間変わらずにチャットモンチーが好きで、地元に来たときにまたライブに行く、その人の心情と感動を想像すると、それも本当に素晴らしい体験なんだろうなと思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月10日 金沢Eight Hall

チャットモンチー
2017年3月10日
金沢Eight Hall (エイトホール)
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 ツアー2日目の金沢公演。前日と同じく定刻を少し過ぎると、客電が落ちオリジナルのSEが流れる。ライトがつき、チャットモンチーの2人がステージへ。ステージ上には、中央に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーをはじめ、ドラムやアンプやMacBookなどが所狭しとセッティングされている。前日と同じく、橋本さんがオーディエンス側から見て右側、福岡さんが左側のシンセサイザーの前へ着席。

 1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源から、ギターとベースはシンセサイザーに置き換えられ、ドラムも打ち込みになっている。元々の音源のイントロでは、ギターは歪み、単音でありながら糸を引くような、重厚感のある音とリズムだが、シンセサイザーの輪郭の柔らかい音に置き換えられ、同じメロディーを弾きながらも、かなり印象が異なる。ベースも、音源では、硬い音で8分音符を基本にリズムを刻んでいくが、今回のツアーではシンセサイザーでのコード弾きになっている。

 「レディナビゲーション」の後には、橋本さんが「今日は私たちの秘密基地へようこそ!」、福岡さんが「1曲目、みんながあんぐりしてる感じがわかりました(笑) 今日は秘密基地に来てもらったからには、新しいチャットモンチーをどうぞ楽しんでいってください!」と挨拶。

 「レディナビゲーション」と同様に、2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源で聴ける音とは、全く異なる耳障りの音質に仕上がっている。「恋の煙」後には少し長めのMC。

橋本「どうですか皆さん、理解してくれてますか? 私たちの想い、届いてますか?」
(オーディエンスから拍手と歓声)
橋本「わかる! すごい気持ちわかるよ!…だけど、許して。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「めっちゃわかるよ! 絶対、私がお客さんだったらそうなってるもん! あぁ、おぉ、えぇえ~~!?」
(オーディエンス爆笑)
橋本「そうなんだよねぇ。これがね、需要と供給のバランスのね、悪さっていうか(笑) でも、いい意味で驚いてくれて良かったです!」
福岡「今日はこんな感じで私たちの秘密基地に来てもらって、秘密基地の定義ってなに?って話なんですけど…」
橋本「(ちょっと得意げに) 調べたよ。」
福岡「え、えぇー? うそぉー!? でもそういうとこあるよな、えっちゃん(笑) ちなみになんなんですか、秘密基地って。」
橋本「えっと…たぶん…」
福岡「たぶん!(笑) 調べたんでしょ?」
橋本「調べたんだけど(笑)、なんだったっけ、とにかく…軍事基地で、人に知られてはならない、場所!」
福岡「ここ、めっちゃ知られてますよ(笑) 本当は知られたらいかん場所だけど、お金払ったら見れるってことやね。」
橋本「そう!」

 4曲目は「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。まず打ち込みのドラムが流れ始め、福岡さんが「今から、この陽気なリズムに合わせて、誕生日の曲をやりたいんですけど、今日誕生日の人いますか? 今日はおらん? じゃあ、アラウンド3日以内!」と、3日以内が誕生日の人を確認すると、数名の手が上がる。福岡さんがオーディエンスに、サビの部分で今日誕生日の人をガン見して拍手してください、という説明をしてから、曲がスタート。この曲のイントロも、オリジナルの音源ではギターとベースが弾いている部分を、2台のシンセサイザーが代わりとなり、演奏していく。

 「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後に長めのMC。

橋本(シンセで数種類の犬の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんだろう? 犬の声がする。」
橋本(シンセで「チュンチュン」という感じの鳥の鳴き声を鳴らす)
福岡「なんか鳥の声が、ここってムツゴロウ王国だっけ?笑」
橋本(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。前日の新潟公演では黒電話を思わせる音だったが、この日は「プルルルルル…」という音)
福岡「もしもーし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん? 今、金沢に来てて。」
福岡「私もおるよ! 500人ぐらいにガン見されてる(笑) えっちゃんは何してんの?」
橋本「今、ポツンと兼六園の真ん中にいるから、そっちに行ってもいいかな?」
福岡「いいよ、寂しそうやから、こっちおいで。」
橋本「じゃあ、行くね!」
(シンセで馬が走る音を流す)
福岡「来た! 兼六園から馬で(笑) 犬と鳥は置いてきたの?」
橋本「いや、後ろついてきてる!」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
橋本「なかなか、馬の音探せんかった、ごめんごめん(笑)」
福岡「これ(シンセサイザー)、いろんな音が入ってて、でも犬が吠えると思わんかった(笑)」

 上記のやりとりから、橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。この曲での橋本さんのシンセは、一音押すと、アルペジエーターのように、いくつかの音から成るフレーズが演奏される設定のようだ。「ぜんぶカン」の後には、また長めのMC。

福岡(シンセで電話の呼び出し音を鳴らす。しばらく鳴らしても橋本さんが反応せず)
橋本「あっ、あー、ごめん! ちょっとぼーっとしてた(笑) ごめん、ごめん! もしもし…」
福岡「もしもし?」
橋本「どちら様ですか?」
福岡「今、あなたの近くにいます…」
橋本「こわい(笑) あっこちゃんやな?」
福岡「そう、今、兼六園の東側でヒマしてるんや。えっちゃんの別荘、このへんにあったよな?」
橋本「そうだよ、兼六園より広いやつ。」
(福岡さんとオーディエンス爆笑)
福岡「じゃあ遊びに行ってもいいかな?」
橋本「いいよ!」
(福岡さんが橋本さんの近くに移動)
福岡「えっちゃんの別荘、めっちゃ狭いやん!」
橋本「ばれたかぁ(笑) ちょっとここ、笑うコーナーにせんとこって言ってたのに(笑)」
福岡「これから、ぐっとくる曲やるから、みんな切り替えてよ(笑) メカもやりつつ、こういうアコースティックな気持ちも忘れてへんでっていう感じです。」

 6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は、橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当し、打ち込みは使用せず。橋本さんの「いち、にい、さん、はい」というゆったりしたテンポのカウントから始まり、橋本さんのコード・ストロークと、福岡さんの長めの音符を使ったベースラインによる、言葉とメロディーが際立つようなアレンジ。

 7曲目「CAT WALK」では、橋本さんは引き続きアコースティック・ギター、福岡さんはシンセサイザーを担当。この曲では打ち込みも使用されており、イントロは心臓の鼓動を思わせる弾んだリズムで、バスドラのような低い打楽器の音が響く。しばらくすると、そのリズムに合わせて、橋本さんがコードを弾き始め、さらに歌も入る。アルバム「告白」に収録の音源では、歌い出しは「私がいなくなったとしても」だが、今回のアレンジでは、歌い出しが「あぁ 今日もこの目で 街を見られるよ」からになっている。福岡さんのシンセの音色は、ここまでの電子音然としたシンセらしい音色ではなく、ピアノの音が選択されている。途中、ピアノとは別の音色のシンセサイザーらしき音が鳴っているところもあったが、打ち込みなのか、福岡さんによる生演奏なのかは確認できなかった。「CAT WALK」後には、またMC。

福岡「次の曲は、5年前ぐらいに作って、ライブで1回やったっきり、ずっとやってなかったんですよ。そのとき、2ピースになって初めてのCOUNTDOWN JAPANで、やっただけなんですけど。この曲、えっちゃん、めっちゃ怒っとったよな?」
橋本「怒りが凄くて…あの、勢い任せに作った曲です。でも、5年経って、そういう謎の怒りも消え、新たにリアレンジしました!」

 上記のエピソードを披露したあとに演奏された8曲目は「ほとんどチョコレート」。前述のとおり、2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、当時とはかなりアレンジが異なっている。

 9曲目は「変身 (GLIDER MIX)」。この曲の前には、宇宙を感じさせるような音の、インタールード的なSEが足されている。アンビエント・ミュージックやエレクトロニカに近く、個人的にはBoards of Canadaを連想させる音作りだと感じた。この音源をバックに、福岡さんが少し話をする。

福岡「みなさんを今から、洗脳したいと思います…」
(オーディエンスから笑いが漏れる)
福岡「チャットモンチーは、何回変身してもいい! 人によっては、今5期とか言われてますけど、もう何期なのか自分たちではわかりません! だから、もう何回変身してもいいやろ。」
(オーディエンスから拍手)

 福岡さんの話のあと、SEが流れ続けるなか、橋本さんがイントロのギターを弾き始める。この曲では橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんは、足でバスドラのペダルを踏みながら、シンセサイザーを弾いているようだ。10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」では、橋本さんは引き続きシンライン、福岡さんはドラムを担当。徐々にサウンドもアレンジも、ハードな方向にシフトしていく。

 「消えない星」の演奏が終わると、橋本さんが「大丈夫ですか、みなさん、聴きたい曲、聴けてますか?」とオーディエンスに問いかける。オーディエンスからは拍手と歓声。福岡さんの「次の曲、聴きたいはず。私は個人的に聴きたい。」という言葉から、12曲目に披露されたのは「majority blues」。この曲も橋本さんがギター、福岡さんがドラム。2人体制になってから発売された曲のため、ほぼCD音源通りのアレンジによる演奏だ。「majority blues」には長めのMC。

福岡「今日のお客さんはめっちゃ真剣に聴いてくれますね。真剣タイプですよね。相談にのってくれそうなタイプ。相談していいですか? どうですか、チャットモンチーこのままで大丈夫でしょうか?笑」
(オーディエンスから大きな拍手)
福岡「めちゃくちゃ悩んだんですよ、ここに来るまで。また、飽きてしまった、みたいな(笑) 10周年の時に6人になって、めっちゃいろいろやって、すごい達成感があって、このままではあかんのちゃうかなって感じになったんですよ。もっとやったことない事したいし、(サポートメンバーが)頼んだら何でもやってくれるから、甘えたらあかんってなって。」
橋本「それですごい悩んで、去年の春の終わりぐらいには、こんな感じでやっていこうっていうのを見つけて、っていう感じです。」

(打ち込みと生演奏の違い、打ち込みの難しさについて、色々と語ってくれてから)
福岡「えっちゃんもこの体制になって、ちょっとずつパソコンを覚えて…じゃあちょっとテストしようかな。command + Z(コマンドゼット)はなにか?」
橋本「…1個、戻る。」
福岡「正解!!」
(オーディエンスから「おおぉーー!」という声と拍手)
福岡「じゃあ、command + A(コマンドエー)はなにか?」
橋本「なんか…”あ”が付く?」
福岡「うん、”あ”が付くよ! あ、っていうか、A。コマンドAですよ!」
橋本「お、オール! オール!」
福岡「そうそう! オール、なに?」
橋本「全部! 全部まとめる!」
(オーディエンスから「ああぁーーー」という残念そうな声)
福岡「正解は、全部選択!」

福岡「4月に新曲が出ます。2人でやったんですけど、いまいちメカっぽくなくて、生演奏して録ったっていう(笑) この前、PV撮ったんですけど、ヤバい人に出てもらいました。まだ言えないんですけど。」
橋本「言いそうで怖い(笑)」

 13曲目は、4月5日に発売される新曲「Magical Fiction」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。それ以外に、ギターとベースの生演奏をレコーディングした音源を同期しているようだ。

 14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのように繋げて演奏。「こころとあたま」では、橋本さんが前曲から引き続きシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。「こころとあたま」の1回目のサビが終わった間奏で、橋本さんが楽器をシンセからシンラインに替え、「湯気」のイントロのギターを弾き始める。曲の繋ぎの部分も含めて、非常に荒々しく、新しいことに挑戦しつつ、デビュー以来チャットモンチーが得意としている部分もしっかりと見せてくれた。

 本編ラストの15曲目「満月に吠えろ」。この曲の前にも、インタールード的に軽やかにシャッフルしたドラムの音を流していた。担当楽器は変わらず、橋本さんがギター、福岡さんがドラム。流していたドラムの音が止まると、すぐに福岡さんがカウントを取り、曲がスタート。前日の新潟公演と同様、間奏とアウトロのギターソロは、途中から音源よりも旋律が上昇していく部分があり、今回のツアーを通してアレンジし直された部分のようだ。本編はこの曲で終了。



 アンコールを受けて、手品のBGM風の音源が流れ始め、ステージ上に戻ってくるチャットモンチーの2人。2人ともシルクハットのような背の高い帽子と、真っ白い手袋を着用している。帽子から次々と今回のツアーグッズが出され、オーディエンスに向かって紹介していく。橋本さんの帽子からは、最後に白い鳩のぬいぐるみのような物が出てくる。

福岡「以上、無言の物販紹介でした。えっちゃん、めっちゃ入ってたな(笑)」
橋本「もう、ぎゅうぎゅうに押し込んで! 最後に鳩、出てきたやん? 鳩を最後に出さなあかんから、鳩こんな(ぎゅうぎゅうになっている仕草をしながら)、こんな、なってたやろな(笑)」
福岡「えっちゃんが、めっちゃプレスしてるの見てましたけど、あんなに入ってると思わんかった(笑)」

 アンコールでは、前日と同じくGO!GO!7188のカバー「瑠璃色」と、「シャングリラ」を演奏して、この日のライブは終了となった。

 最後にライブ全体の感想を一言。個人的に最も心に残ったのは、あっこびんが「個人的に聴きたい曲」と言って「majority blues」を演奏したところ。こういう一言に、あっこびんがどれほどチャットモンチーのことを好きか、大切に思っているか、が表れていますよね。えっちゃんが作詞作曲したこの曲を、自分がお客さんだったら聴きたい曲だって、自然に口から出てくるというのは、高校生の時にチャットモンチーのライブを見て受けた感動を、今でも忘れずに持ち続けているのだな、と思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月10日
金沢Eight Hall
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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チャットモンチー 2017年3月9日 新潟LOTS

チャットモンチー
2017年3月9日
新潟 LOTS
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」

 「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」と題されたツアーの初日。今回のツアーは、アルバムのリリースツアーではなく、機械=パソコンでの打ち込みを導入した2人体制でのライブであることぐらいしか事前情報がなかったため、自分も含めてオーディエンスには独特の期待感と緊張感が漂っていた。秘密基地を意識したものなのか、ステージ上にはオブジェやツタのような植物が飾り付けられ、雰囲気を作っている。

 定刻を少し過ぎたあたりで客電が落ち、オープニングSEらしき音源が流れ始める。打ち込みと思われる様々なSEが飛び交うなかを動く、休符をうまく使ったメリハリの効いたベースラインが印象的な音源だ。まだオーディエンスも緊張が解けず様子見といった感じで、この時点では特に手拍子が起こったり、歓声があがったり、ということは無い。ステージ上にチャットモンチーの2人が登場。ここで、オーディエンスから歓声があがる。同じく2人体制だったアルバム「変身」時のツアーでは、橋本さんがギター、福岡さんがドラム、という編成が基本になっていたが、2人ともステージ上に向かい合うように設置されたシンセサイザーの前に座る。オーディエンス側から見て、左側に福岡さん、右側に橋本さん。期待が高まるなか、ライブがスタート。

 1曲目は「レディナビゲーション」。打ち込みによる均一な音質のドラムに、2人が演奏するシンセサイザーが加わる。シンセサイザーの音色は、いわゆる「バキバキ」と形容されるようなEDM的なものではなく、柔らかい電子音。アルバム「YOU MORE」に収録されている「レディナビゲーション」は、イントロから歪んだギター、硬い音質のベース、ヒット毎に強弱のついたドラムが絡み合う、音源で聴いてもライブ感の溢れる楽曲であるため、今回の打ち込みのリズムとシンセサイザーの音質との差異が際立って感じられる。また、2人ともモニター用にヘッドホンを装着しているのも、今までのチャットモンチーからすると特異である。

 1曲目が終わると、橋本さんは「こんばんは、チャットモンチーです! 今日は私たちの秘密基地へようこそ!」、福岡さんは「100畳ぐらいしかない、500人ぐらいしか入らない、家ですけど、来てくれてありがとう! 一応、家なんで、家の体なんで、お茶でも飲みながら観てってな!」と挨拶。今回のツアーは、チャットモンチーの家にみんなが遊びに来た、というコンセプトらしい。

 2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、「レディナビゲーション」と同じく打ち込み特有の均一な音質のビートに、2人の電子音然とした音色のシンセサイザーによる演奏が続く。3曲目「恋の煙」は、アルバム「耳鳴り」などの収録の音源では、高音弦を使った、鋭く歪んだギターのイントロが印象的だが、このギターもシンセサイザーに置き換えられている。音源とは全く耳障りの異なる、柔らかな音質のシンセがおなじみのイントロを弾き始めると、オーディエンスからは歓声とどよめきが起こった。

 「恋の煙」の後には、長めのMC。

橋本「皆さん、新潟の方ですか?」
(オーディエンスの多くから「はーい!」の声)
橋本「新潟にチャットモンチーが来たっていうか、みんなに来てもらったっていうか…設定が難しい、初日やから(笑) むずいなぁ。チャットが前に来たのが2012年だったんだって!……5年ぶりやん!」
福岡「それ、今ずっと計算してたの!?笑」
橋本「なんか2016か17か分からんくない? 早すぎて、むしろ18かなっていう。無い!? そういうとき。」
福岡「それはいわゆる、えっちゃん病ってやつ(笑) でも、平成が分からんくなるのはあるよね。」
橋本「うん、それにいたっては、迷いすらできない(笑)」
福岡「次の曲も、メカットモンチーでやるんですけど、今日、誕生日の方っていますかね?」
(オーディエンスの2人から手が上がる)
福岡「おった!」
橋本「しかも友達同士? 同じ誕生日? 同い年で? もしかして病院まで…」
(オーディエンスと福岡さん爆笑)
橋本「もし、そうだったら運命やなぁって思って(笑) でも、すごいな友達同士で、こうやって。」
福岡「私は病院まで行くえっちゃんの感性がすごいなと思った(笑)」

 MCの後の4曲目に演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。3曲目までと変わらず、打ち込みのドラムに2人のシンセサイザーという体制。ドラムのリズムが流れ始めると、福岡さんが「この陽気なリズムに合わせてやろうと思います!」と言い、2人がシンセを弾き始める。福岡さんの言葉通り、トロピカルな印象の陽気なリズムパターン。また、シンセの音色も3曲目までと比べると温かみの感じられるものになっており、だいぶ印象が変わる。

 「バースデーケーキの上を歩いて帰った」の後にも長めのMC。

橋本(シンセで黒電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「あ、電話! もしもーし!」
橋本「…もしもし、あっこちゃん? 今、何してる?」
福岡「今ねぇ、500人と会食してるよ。」
橋本「そっか、えっちゃんは今、暇してるんだ。なんで、なので、そっちに遊びに行ってもいい?」
福岡「じゃあ、おいで!」
橋本(シンセで車のエンジン音を流す)
福岡「だいぶ、いかつい車、乗ってるなぁ(笑)」
橋本(シンセで急ブレーキの音を流す)
福岡「出ましたー、4速でそのまま止まるやつ!」
(橋本さんが福岡さんの隣に移動する)
橋本「来たよ。」
福岡「お茶でも出そうかと思ったんやけど、今ちょうどお茶切らしてて、ドンペリしかないけどいい?」
橋本「うん、いいよ別に。ドンペリで。」
福岡「飲めへんやん(笑)」
橋本「じゃあ、ちょっとラップしますね。」

 上記のMCに続いて、5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラム。アレンジは、ここまでの曲に比べると、シンセの音色も含めて、アルバム「共鳴」に収録の音源に比較的近い。演奏後には、またMC。

福岡「じゃあ、私もえっちゃん家、遊びに行こうかな。」
橋本「いいよ。」
福岡「私も愛車で行くわ。」
(シンセで馬が走る音を流す)
橋本「馬なん!? 愛車、馬なん!?」
(2人とも、橋本さんが元々いたステージの右側に移動)
橋本「むっちゃ狭いやろ?」
福岡「むっちゃ狭い(笑) でも、なんか、いいですよ、えっちゃんぽい。犬の毛、いっぱい落ちてるし(笑) ビギンのね。あの物販のビギンノートってやつ、えっちゃん家の犬ですからね。あんな顔してるんですよ、でもなんか、えっちゃんに似てるよね!」
橋本「ほんと?」
福岡「嘘ついて、どうするん(笑)」

 ここから、6曲目「余談」、7曲目「CAT WALK」は、ここまでのライブとは打って変わってアコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は、橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースで、打ち込みは使用せず。「CAT WALK」は、橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんが元々の位置に戻りシンセサイザー。打ち込みによるSE的なイントロが足されており、2人の演奏が加わっても、引き続き打ち込みの音源との同期による演奏だった。

 「CAT WALK」の後にも長めのMC。ツアー初日ということもあってか、この日はMCで色々な話を聞くことができた。

福岡「次の曲はですね、5年前にやった曲で、次のシングルにも入る曲です。えっちゃんがほとんどチョコレートのケーキが好きって曲ですね。」
橋本「そうなの。でも決してそれだけの曲ではないよ。そんなの、メロディーに乗せんでもって思うやん。」
福岡「私もほとんどチョコレートのケーキは好き。ケーキそんなに食べへんやん? でも、ほとんどチョコレートのケーキは、食べようって気になるんよ。なぜなら…ワインに合うから。」
橋本「大人ぁ。すごーい。」

 8曲目は「ほとんどチョコレート」。上記のMCで福岡さんが紹介しているとおり、2011年のCOUNTDOWN JAPAN、2012年4月のキューン20周年イベントなど、数回ライブで披露されたのみで音源化されていなかった楽曲。橋本さんがギターをエレキに持ち替え、福岡さんはシンセサイザーを担当。加えて、この曲でもリズム楽器などが打ち込みにより同期されている。

 8曲目「ほとんどチョコレート」の後にもMC。

福岡「今日、初日でセット初めて組んだんですけど、めっちゃかわいくないですか?」
(オーディエンスから「かわいいー!」の声)
福岡「すごい、ガレージ感というか。なんか、えっちゃんの方にもメーターついてますしね。」
橋本「そうなの、これ体重計。この青いのやつ。青いのやつ(笑)」
(ステージ上の橋本さん側に青い体重計のようなオブジェがある)
橋本「これ、なんキロぐらいあると思う?」
(オーディエンスから「5kg!」「30kg!」などの声があがる)
福岡「えー、58kg!」
橋本「たぶん、5グラムぐらい!」
福岡「どういうこと? めっちゃ軽いん?」
(橋本さんが片手で軽々とオブジェを持ち上げる)
福岡「まぁ、5グラムは嘘やけど(笑)、50グラムぐらいかな。そんな軽いんじゃ!」
橋本「そうだよ。知らんかったやろ、あっこちゃん。」

福岡「今日のお客さん、いいっぽい顔してくれたから良かった。もう、何回変身すんねんってすごいつっこまれて。一昨日、4月に出るシングルの取材があったんですけど、何回変身するんですかぁ、ってめっちゃ言われて。数え方によっては5期って言われたよな。」
橋本「でもねぇ、ちゃんと数えたら7期ぐらいあったわ。どこまで遡るかって話にもなるんですけど。」
福岡「だから、ここにいるお客さんはすごいよ!」
橋本「ほんとですね。なんか、変身するたびに、ふるいにかけられてる気がして。」
福岡「ああ、どんどん脱落して落ちていくっていう(笑)」
橋本「そう! でも、ふるいにかけた分、安心感があるんよ。この人たちの前だったら、何しても行ける気がするって思えるんです。10周年越えたあたりから、そんな気がしてる。」
福岡「だから今日、家感があるのかな。本当に、ありがとうとしか言えないです。」
橋本「そうですね、ありがとうございます。」

福岡「ちょっと機械の説明もしたいんやけど、なんて説明したらいいか分からんなぁ。」
橋本「基本的にパソコンと繋がってて、そのパソコンから出てる音は全部あっこちゃんが作ってて、ギリギリまで音の大きさとか調節して、皆さんに届いています。2人で、生でできることって限度があるんですね。なので、積み重ねて作ってきたものを、一緒に鳴らすことで、ライブできてます。えっと、そんな感じかな?」
福岡「うん、ちょっと感動したわ。そういう説明を求めてなかったんやけど(笑)」

 9曲目「変身 (GLIDER MIX)」は、group_inouによるGLIDER MIX に基本的には忠実なアレンジ。10曲目「8cmのピンヒール」では、橋本さんはエレキギター、福岡さんがドラムを担当し、徐々に打ち込みとシンセサイザーを多用したメカットモンチーから、生楽器主体のアレンジにシフトチェンジしていく。

 11曲目「消えない星」では、引き続き橋本さんギター、福岡さんドラム、ベースなどは打ち込んだものを同期しているようだった。同期がうまくいかなかったのか、一度演奏をスタートしてから、福岡さんが「ごめんごめん、もう一回やっていい?」と言って、セッティングを確認してから再びスタート。この曲は音源に忠実なアレンジだった。演奏後には、福岡さんが曲のスタートがうまくいかなかった理由を説明。曲によって音色を変えていて、パソコンとシンセサイザーの音を混ぜて出しているが、パソコンから送られてくる信号が「8cmのピンヒール」のままの設定で出力してしまった、とのことだった。

 12曲目は「majority blues」。「消えない星」同様、現在の2人体制になってから音源がリリースされている楽曲なので、こちらも音源に忠実なアレンジで演奏された。

 ライブで初めて演奏すること、チャットモンチーは詞から先に作るが、この曲は曲から先に作ったことを紹介し、演奏されたのは「Magical Fiction」。この曲では橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラムを担当。ベースなどは打ち込み。

 14曲目は「こころとあたま」と「湯気」を、メドレーのように2曲をシームレスに繋いで演奏された。この2曲では、福岡さんは引き続きドラム、橋本さんは「こころとあたま」ではシンセサイザーを担当、間奏でシンラインに持ち替え「湯気」のイントロを弾き始める。アルバム「変身」時の演奏のような、ライブ感の溢れる演奏。

 本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。アルバム「変身」収録の音源に近いアレンジだが、イントロのギターソロをもう1回繰り返していた。間奏のギターソロも、途中から音源とは違い上昇するなど、ところどころ違うところがある。個人的には橋本さんのギターの音、フレージが大好きなので、こういう変化は嬉しい。

 アンコールでは、まず客電が点灯し、打ち込まれた音源が流れ始める。しばらくして、2人がステージに登場。2人とも背の高い帽子と、白い手袋を着用し、手品をやる体で、帽子からTシャツやタオルなどのグッズを出していく。確かに、流れている音源は手品を連想させるような音だった。福岡さんによると物販の紹介が苦手なので、このような紹介方法になったとのこと。

橋本「アンコールでは、カバーをしようと思って…GO!GO!7188の、いつかやりたいなと思ってて、今日やろうかなと。」
福岡「19歳ぐらいの時に、香川のMONSTER BASHっていうフェスにえっちゃんと一緒に行ったんですよ。その当時も2人だけで、ドラムが決まらなくて、全然バンドうまくいかんなぁって時に、そのフェス見に行ったら、先輩なんですけど、同世代のGO!GO!7188さんがバリバリやってて、2人でうわぁーって泣いたなぁ。なんでこんな風にできんのやろーって。」
橋本「うん、めっちゃ泣いたなぁ。青春ですよね、10代でフェス行って、やるぞーってなるって。その時にこの曲もやったのよ、瑠璃色って曲なんですけど。すっごい、いい曲やなぁ、って思ったんです。あと、もうひとつ言っていい? 初めてGO!GO!7188のカバーやったんですけど、ユウさんめっちゃ声高いんよ。なので、1音キーを下げてます。」

 アンコール1曲目は、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。橋本さんはギター、福岡さんはシンセサイザーで、ドラムは打ち込み。橋本さんは、今回のツアーから導入されたのか、青っぽい色のテレキャスター・デラックスと思われるギターを使用。福岡さんのシンセサイザーの音色は、一般的なピアノの音に設定されていた。GO!GO!7188のオリジナル・バージョンは、サビでテンポで上がるが、今回のカバーは1曲を通してミドルテンポのまま、原曲の良さと雰囲気を残しつつ、メロディーとアンサンブルが際立つアレンジだった。

 アンコール2曲目、この日のライブ最後の曲は「シャングリラ」。橋本さんはギターをサンバーストのテレキャスターに持ち替え、福岡さんはこの日2回目となるベースを担当。打ち込みによる、耳慣れたバスドラのリズムが流れ、福岡さんの「やっとベース持ちました! ニューバージョンのシャングリラだからね!」、橋本さんの「今日は本当にありがとう!」という言葉に続き、福岡さんがカウント後にベースを弾き始める。音源にわりと忠実なアレンジながら、打ち込みによって、本来のバージョンには無い電子音などが足されている。バンドの代表曲であるので、さすがの盛り上がりとなって、ライブは終了。

 最後にライブ全体の感想を簡単に書かせていただきます。前述した通り、あまり演奏に関する事前情報のなかった今回のツアー初日。遠征してきたコアなファンが多かったのか、音に対するオーディエンスの集中力の高さを感じると同時に、アットホームな雰囲気にも溢れたライブでした。演奏に関しては、今までのチャットモンチーと比べると耳障りが大きく異なるので、馴染めないという意見があるのも理解できますが、僕個人としては2人の音楽に対する情熱と志の高さが感じられ、音やアレンジの節々にもさすが!と思わせる部分があり、とても感動しました。

 音楽を形作る、リズム、メロディー、ハーモニーという楽譜に記載できる情報と、音色という楽譜には書き表せない情報。曲によって、例えばギターの音が目立つ楽曲を、ギターをシンセに置き換えることで、曲の別の部分を引き立たせるなど、曲を解体し、再構築する技術とセンスには、本当にワクワクしました。一言で言うと、曲じゃなくて、演奏にフォーカスされたライブ。音楽の消費が即物的になっていく時代に、こういう行動に向かうことが、とてもチャットモンチーらしいと思います。


チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月9日
新潟 LOTS
セットリスト

01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ




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