チャットモンチー
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
「チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017」
ツアー2本目の金沢公演からちょうど1週間後、今ツアー3本目の長崎公演。今ツアー共通のオープニング用のSEから、ライブが始まる。チャットモンチーの2人は、ギターとベースではなく、2人ともステージ上に向かい合うように設置された2台のシンセサイザーの前にそれぞれ着席。オーディエンス側から見て、橋本さんが右側、福岡さんが左側に座る。
1曲目は「レディナビゲーション」。アルバム「YOU MORE」収録の音源では、ギターもベースも歪んだハードな音色だが、今回のツアーではそれぞれシンセサイザーに置き換えられている。歌い出しから、先の2公演よりも橋本さんのボーカルに少しディレイかリバーブのようなエフェクトがかかっているように聞こえたが、これは会場の音響のせいかもしれない。
2曲目「隣の女」、3曲目「恋の煙」も、音源化されているアレンジとは違い、ドラムは打ち込み、ギターとベースはそれぞれシンセサイザーに置き換えられ、耳触りがだいぶ異なっている。ここまでの3曲とも、シンセサイザー特有の柔らかく広がりのある音色を選択しているため、原曲との差が際立つ。オーディエンスにも、やや困惑した空気が感じられる。3曲目「恋の煙」後には、少し長めのMC。
橋本「なんと、チャットモンチーが長崎でライブするの…6、7年ぶり!」
福岡「ちなみに7年ぶりです、って人いますか?」
(オーディエンスから手が上がる)
橋本・福岡「おおおぉぉーーーーー!!!」
福岡「じゃあ、お互い7歳、年とったんですね。」
橋本・福岡「キャーーーーー!!!」
橋本「すごーい、7歳ってすごいよ!」
福岡「13歳が20歳になってますから。」
橋本「ほんまや、すごい思春期やな。」
福岡「思春期よ、ドンズバよ。」
橋本「13歳から20歳って、一番ヤバイな。」
福岡「えっ、その話、広げる?(笑) じゃあ、7年分の誕生日を祝えなかったというわけで、今から誕生日の曲やるんで、7年分の思いをサビのところで拍手してください。」
以上のMCから4曲目に演奏されたのは「バースデーケーキの上を歩いて帰った」。打ち込みによるトロピカルな印象のドラムが流れ始め、この曲でもチャットモンチーの2人は元々はギターとベースで演奏されていた部分を、シンセサイザーで演奏。「バースデーケーキの上を歩いて帰った」後には、またMC。
橋本(シンセで嵐のような風の音を鳴らす)
福岡「こんな風、強かったっけ? えっちゃん、風を操ってます?笑」
橋本(雨と雷の音を鳴らす)
福岡「えっ、嵐!? さっき、眼鏡橋行ったとき晴れてたよ。」
橋本(電話の呼び出し音を鳴らす)
福岡「もしもし。」
橋本「もしもし、あっこちゃん?今、なにしてる?」
福岡「長崎のDRUM Be-7ってところで、500人といろいろ悪いことしてます(笑)」
橋本「私はめっちゃ風が強いグラバー園にいるんやけど…」
福岡「えっ、そんな局地的にグラバー園、風吹いてんの?」
橋本「局地的な強風らしくて、すごい風なんで、そっち行ってもいいかな?」
福岡「どうぞどうぞ!」
橋本(シンセで車のエンジン音と急ブレーキの音を鳴らし、福岡さんの隣へ移動)
福岡「ごつい車で来たな(笑) ハマーや、ハマーで来たな! グラバー園、楽しかった?」
橋本「楽しかった。1人で弾き語りしてたんや。」
福岡「それ、誰にも気づかれんやつでしょ(笑) 昔、サラリーマン1人に向かってサムライソウル歌ったっていう。」
橋本「それも最後までは聴かれんかった(笑)」
橋本さんが福岡さんの隣に移動して演奏された5曲目は「ぜんぶカン」。この曲では、橋本さんがシンセサイザー、福岡さんがドラム。「ぜんぶカン」の後には長めのMC。福岡さんが「今度はそっち行きます」と言って、今度は2人とも橋本さんが元々いたステージの右側へ移動。
福岡「昨日、中華街に行ったんよ。お腹すき過ぎて、どこ入る?って感じになって、いろんな看板見て、いっぱい並んでるお店ありますよね? 並んではいないけど、お客さんいっぱい入ってるところに決めて、めっちゃお腹いっぱいになって、出てきたら、行きにも絶対通ったはずなのに、帰りにいきなり現れた謎の甲羅屋さんがあったの! 甲羅って、べっこうのこと。で、そこに”最大運”って書いてあったんよ。最大運が手に入る、しかも半額で! 2000円の最大運が、1000円になってたの(笑) これにしようと思って、パッと横見たら3000円の絶大運が1500円になってたの(笑) 3000円の絶大運が1500円やって!って、えっちゃん見たら、今つけてるバレッタ2000円で買ってました! えっちゃんが一番、運すごいやつや。」
橋本「べっこうって凄い運がいいって、日本一を謳ってるお店だったの。(オーディエンスに問いかける感じで)知ってる? 知ってる人もいる…」
福岡「見えないんじゃない普通の人には(笑) だって行きは全然気づかんかったよな?」
橋本「看板が反対向いとったんちゃう?」
福岡「それはえっちゃん独特の発想やわ(笑) 多分、お腹が空きすぎて、食べ物の看板しか見てなかったってことに落ち着いたよな。なんでバレッタ買おうと思ったの?」
橋本「なんか最近、バレッタがアツいんかなと思って…」
(オーディエンスと福岡さん爆笑)
福岡「なに情報!?笑」
橋本「なんも情報得てないけど(笑) なんか、そういうのが降りてきて…」
福岡「どうですか今日、上がってる?」
橋本「めっちゃ上がってるよ! めっちゃ、バレッタ来てると思う。」
福岡「やっぱバレッタ来てるんやな(笑) じゃあ、そういうタイトルの曲やりますか。」
橋本「あっ、そうですね、そういうなんでもない話を書いた”余談”って曲を聴いてください。」
6曲目「余談」と7曲目「CAT WALK」は、アコースティックなアレンジでの演奏。「余談」は橋本さんがアコースティック・ギター、福岡さんがベースを担当。「CAT WALK」では、橋本さんは変わらずアコースティック・ギター、福岡さんは元々いたステージ左側に戻ってシンセサイザーを担当。リズムは打ち込みの音源を使用しているが、生演奏らしいドラムの音ではなく、深くリバーブのかかった鼓動のような音だ。「CAT WALK」後のMC。
福岡「いつも余談って曲の前は、しっとりした感じで行こうって話してるのに、面白い感じになってしまうな。”グッとくる曲やるんで、聴いてください”とか言ってみたいけどな(笑) “次のナンバー聴いてください!”とかやりたいけど。」
橋本「ナンバーって言う?(笑) ラジオだったら、お気に入りのナンバーとか言うけどな。」
福岡「じゃあ、最初から声、入れとく!? クリス・ペプラーさんとか小籔さんに入れてもらう?」
橋本「でも、それも照れ隠しやもん。」
福岡「そうか。なんか照れることできないんですよね。」
福岡「次の曲は、5年前にライブで1回だけやった曲で、そのライブだけで終わらせるつもりだったんですけど、うちのディレクターのきくりんが覚えてくれていて、ぜひ音源化したいと言ってくれて、今回リアレンジしました。」
橋本「…ナンバーって言わないよ。」
(オーディエンスから笑い)
福岡「じゃあ、そのナンバーを…」
橋本「言うんかい(笑)」
福岡「それでは、”ほとんどチョコレート”という曲を聴いてください。」
8曲目は「ほとんどチョコレート」。この曲では、橋本さんがエレキ・ギター(黒のシンライン)、福岡さんがシンセサイザー。前述のとおり、この曲は2011年のCOUNTDOWN JAPANでも演奏されているが、アレンジが大幅に異なっている。当時も2人体制だったが、今ツアーとは違いPCとシンセサイザーによる打ち込みや同期を導入していなかったため、ギターとドラムによるソリッドな演奏だった。そして、僕の記憶が確かならば、イントロと間奏では橋本さんがハーモニカを吹いていたはず。
9曲目「変身」、10曲目「8cmのピンヒール」、11曲目「消えない星」と続く。この3曲では、橋本さんは引き続きエレキ・ギター、福岡さんは「変身」では足でバスドラを踏みつつシンセサイザー、「8cmのピンヒール」と「消えない星」ではシンセサイザーを担当している。序盤のシンセサイザー2台体制のアレンジから、ギターが入ることで、徐々に以前のチャットモンチーに近い音になってくる。「消えない星」後のMC。
橋本「なんかすごい、満遍なく顔が見えます。なんていうのか、盛大に微笑んでくれると、こっちもニコニコしてしまって…本当にありがとうございます。」
福岡「確かに笑顔率が高い。ライブしながら、嬉しくなっちゃった。」
橋本「笑顔率すごいよな! すごいニコニコしてくれてて。」
上記のような内容のこと(僕の記憶によるものなので、細かい言い回しなどは実際と違う部分もあろうかと思います)を話していたが、確かにこの日のオーディエンスからは、序盤は困惑が感じられる雰囲気だったが、途中から「音楽って楽しい」「チャットモンチーって楽しい」という空気が溢れ出ていた。
12曲目は「majority blues」。現在の2人体制になってからリリースされた曲なので、音源化されているアレンジとほぼ変わらない演奏。橋本さんはエレキ・ギター、福岡さんはシンセサイザー、それに加えてベースなどがPCで同期されているようだ。「majority blues」後にもMC。
橋本「今回はセットがすごいの。タイトルが、チャットモンチーの秘密基地ツアー2017だから…」
福岡「なんか抜けてない?笑」
橋本「あっ、”機械仕掛け”が抜けてる(笑) 機械仕掛けの秘密基地ツアーだから、秘密基地感を出したいっていう2人の要望に応えてくれて。」
福岡「今、マイクの位置を直してくれたハギさんがこのセットを作ってくれました。」
(オーディエンスから拍手)
福岡「いつもは優しいけど、怒ったらめっちゃ恐いよ! 怒ったら、どちゃくそ恐いですよ。どちゃくそって意味わかります? 私もよく分からないんですけど、”すごい”っていう感じの意味だって徳島で聞いたんで、みんな使ってくださいね。どちゃくそええライブだったって、呟いてください。なんかモッシュとか起こってそう、どちゃくそなライブって(笑)」
橋本「確かに(笑)」
福岡「(ステージ中央後ろの「CM」という電飾を指しながら)この電飾もハギさんが作ってくれたんですよ。」
(オーディエンスから拍手と「へぇーー」という声)
橋本「(2人の頭上あたりにそれぞれ上から垂れ下がる大きめの電球を指しながら)あと、このイカ釣りの電球も。」
福岡「そう、イカ釣り漁船の電球らしいよ。」
(オーディエンスから再び拍手と「へぇーー」という声)
13曲目は「Magical Fiction」。橋本さんはこの曲ではシンセサイザー、福岡さんはドラム。ベースは、おそらくPCを使っての同期。14曲目は、「こころとあたま」と「湯気」をメドレーのように繋げて演奏。橋本さんは「こころとあたま」ではシンセサイザー、「湯気」から黒のシンラインに楽器を替える。橋本さんがギターを持ってからの「湯気」は、今までのチャットモンチーが得意としていた無駄を削ぎ落としたハードでソリッドな演奏で、非常に盛り上がった。
本編ラストの15曲目は「満月に吠えろ」。アルバム「変身」に収録の音源に近いアレンジだが、ベースを同期で流したり、イントロのギターソロを2回繰り返すなど、いくつか変更が加えられている。
本編終了後、オーディエンスから沸き起こるのはアンコールではなく、「もってこーい」コール。以前、チャットモンチーが長崎市民会館でライブをしたときも同様のコールだったが、長崎特有のコールらしい。こういった各地の文化に触れられるのも、遠征および地方公演の楽しみだ。
アンコールでは、手品風のBGMに乗せて、帽子と白い手袋を着用したチャットモンチーの2人がステージへ。それぞれ帽子から、手品をやっている風に、次々と今回のツアーグッズを出していく。
橋本「皆さん、もってこいコールありがとうございます。」
福岡「めっちゃ地元ならではのコールしてもらってるのに、こんなエセ手品を見せていいのか、ちょっとためらいました(笑) 言葉を発さずに物販の紹介する方法を考えたらこうなりました。」
橋本「アンコールでは、カバーを1曲やりたいと思います。九州出身のアーティストの方っていろいろいると思うんですけど、GO!GO!7188さんの曲をやります。」
福岡「私とえっちゃんが18ぐらいからバンドやり始めて、19の夏に四国のMONSTER baSHっていうフェスに一緒に行ったんですよ。当時もドラムが抜けて、2人だったんですよ。ドラムが決まらなくて、ドラム貧乏だったんです。そんな時に、GO!GO!7188さんを見て、めちゃくちゃカッコよくて、”なんでこんなに私たちはうまくいかないんだろう”って2人で泣きました。オーディション受けても”お前らみたいなのは、ごまんとおる”って言われて、当時は意味を取り違えて”ああ、5万もおるんや”って思ってたんですけど(笑) そんなGO!GO!先輩の曲を九州でやる日が来るなんて!」
アンコール1曲目は、GO!GO!7188のカバーで「瑠璃色」。福岡さんがシンセサイザー、橋本さんがエレキ・ギター、ドラムは打ち込みのようだ。福岡さんのシンセはピアノの音色に設定されている。GO!GO!7188のオリジナルの音源では、サビからテンポが速くなるが、今回のチャットモンチーのアレンジは、イントロのミドルテンポのまま最後まで進行していく。
アンコール2曲目、この日のラストは「シャングリラ」。橋本さんはサンバーストのテレキャス、福岡さんはベース、ドラムは打ち込んだ音源を同期している。耳慣れたバスドラのリズムが流れ始め、オーディエンスから歓声と手拍子が起こる。ベースが入るまでのイントロ部分で、福岡さんが「今日はほんまにありがとうございました。皆さんの笑顔で、明日からも頑張れそうです。みんなもまた会う日まで元気でな、ありがとう!」と挨拶してから、ベースを弾き始める。ドラムは打ち込みで、CD音源には入っていない音も足されているものの、各楽器とも基本的には音源に忠実なアレンジ。暖かい雰囲気のまま、ライブは終わった。
MCでチャットモンチーの2人も言っていたとおり、笑顔に溢れ、非常に暖かい雰囲気のライブでした。どこまでニュアンスが伝わるか分かりませんが、シャングリラのイントロでの福岡さんの言葉からも誠実さがにじんでいて、グッときました。チャットモンチーが長崎でライブをやるのは、2011年のYOU MORE 前線以来6年ぶりのようですが、6年前にライブに来ていた人が、変わらずにチャットモンチーが好きで6年後に6年ぶりにライブに来るというのは、シンプルだけど感動的な状況だなと思います。僕は好きなバンドやグループのためなら、積極的に遠征もしますが、ライブに行った回数が多いからライブに1回しか行ったことがない人よりそのバンドが好きか、というと必ずしもそうではありません。6年間変わらずにチャットモンチーが好きで、地元に来たときにまたライブに行く、その人の心情と感動を想像すると、それも本当に素晴らしい体験なんだろうなと思います。
チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017
2017年3月17日
長崎DRUM Be-7
セットリスト
01. レディナビゲーション
02. 隣の女
03. 恋の煙
04. バースデーケーキの上を歩いて帰った
05. ぜんぶカン
06. 余談
07. CAT WALK
08. ほとんどチョコレート
09. 変身 (GLIDER MIX)
10. 8cmのピンヒール
11. 消えない星
12. majority blues
13. Magical Fiction
14. こころとあたま~湯気
15. 満月に吠えろ
アンコール
EN1. 瑠璃色 (GO!GO!7188カバー)
EN2. シャングリラ